近所の古本屋で松本清張「点と線」を買った。
さすがと思わせるような文体だったのでスラスラと
あっという間に読んでしまった。読み切りたいため
新宿駅の特急待合室にしばらく篭ってました。
4つの決して崩せないアリバイを崩していくのだが
時代を感じさせる部分もあった。
例えば「電報」。鉄壁のアリバイの道具として出てくるのだが
物語の筋とは別にどうやって電報って打ったのだろうと気になった。
今だったら携帯で直電するか、メールを残すだろう。
GPSを使えば居場所だってわかってしまうこと。
この背景の時代は昭和30年代初頭くらいで、戦争からの復興も一段落し、
所得倍増となり 旅行に出るという贅沢も現実味を帯びてきた頃である。
日本全国 津々浦々鉄道網が敷かれ、動くホテルと言われたあさかぜをはじめと
するブルートレインが走りはじめ、
東京 大阪間には日帰りを可能にした153系こだま号も
登場したりと明るいニュースが続いた。まだまだ旅の基本は鉄道であり、
チケットを取ることも現在より各段に困難だったらしい。
鉄道ファンの目から読んでみると、寝台特急あさかぜの旅っていうのが
羨ましい。東京博多17時間もかけての旅。
発売された時代では20系が出る前の10系だったのかもしれないが
乗って見たかった。
もっとも特ロや2等だったら快適なのかもしれないけど これが3等だったなら硬い
ボックス席で20時間も過ごすことになるわけで これは嫌だな。
考えてみれば一部の特急を除いて この頃は冷房なんてないんだった。
鉄道博物館に行けば、20系の実車がある。外から中を覗くだけだけど
3段寝台は狭そう。横になれるだけでも豪華だった時代なのか。
現在のカシオペアなどと比べると設備は見劣りするが 当時の最先端だったと
考えるとパイオニア車と言えるのかもしれない。
犯人のトリックを暴こうとする刑事は犯人は飛行機で移動したのではないかと
考え、JALの福岡→羽田、羽田→千歳のフライトスケジュールを見て
移動可能なことを突き止めるが
読んで真っ先に「飛行機で移動したのでは?」と考えた。
この作品が発表されたころ読者の多くは飛行機移動なんてなじみがなかったから
こんなトリックが斬新に思えたのだろう。
これって時代背景がかなり関わっているのではないか。
きっと当時は飛行機は存在していたがそれ程大衆化していなかった。
話の中では2、3日前までに予約が必要で当日ではまず搭乗できないだろう
と言っている。ってことは庶民の足は鉄道(3等車)だったのだろう。
意外性と当時の社会背景がわかる点もよかった。
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