甲斐駒ヶ岳(2,967m) ((4)のつづき)
山頂に着いたのは朝の8時40分頃でした。やっと登れた!という喜びが大きいです。
駒ヶ岳神社の小さな祠が建ち、奉納された4足のわらじがぶらさがっていました。
眺望は素晴らしく、何といっても2年前に登った仙丈ヶ岳が大きく見えているのが嬉しいです。
仙丈の姿は、北アルプスの薬師岳から眺めた黒部五郎岳の姿に似ていました。黒部五郎岳にも仙丈ヶ岳にも、氷河によってつくられた圏谷があります。
ここ甲斐駒から稜線の続く鋸岳は、頂上だけが小さく飛び出ていました。とても登れそうにない、気難しい姿の山だと思いました。「鋸岳(要注意) 5時間40分」という標識も出ています。
もう10月なのに頂上はとても暖かく、風もありませんでした。遠くの空は霞んでいました。富士山の写真を1枚も撮っていないので、見えていなかっただろうと思います。
しかし、今立っているこの場所には一点の曇りもありません。北沢峠から、花崗岩の上を歩いて山頂に登ろうとする人たちが、豆粒のように小さく見えていました。
「~ 頂上からの展望はたいへん広大で美しい。明るい甲府盆地のはるかかなたには、富士の紫色の山容が太平洋岸からそびえている。樹木が鬱蒼と茂った眼前の鞍部から鳳凰山のオベリスクがそそり立ち、それより高く、白根山の鋸歯状の尾根がそびえ、さらに、その北には巨大なヴォリュームを誇る仙丈ヶ岳がどっしりと座り、北西には北アルプスの山々が雪縞模様の峰を連ねている。 ~」
(『日本アルプス再訪』ウォルター・ウェストン著・水野勉訳(平凡社ライブラリー))
紫峰というと、筑波山が思い浮かびますが、この日の富士山も紫色に見えたようです。ウェストンが甲斐駒に登ったのは、100年以上も前のことでした。100年前も今も、この眺望は変わっていないに違いありません。
(登頂:2013年10月中旬) (つづく)