飯豊山(2,105m) (つづき)
切合小屋に着いたのは午後4時過ぎでした。もし泊まるのが自分しかいないと心細いなと思いながら歩いていましたが、そういうことはありませんでした。
三国小屋と同じく、冬に2階の窓から入るための梯子がかかっています。入口の扉を開くと、奥にもう1枚扉があります。両方の扉を閉めて間に入ると、外の光は全く入らず、真っ暗になります。
2階建ての小屋で一夜を過ごす人は9人でした。夏休みの時期はずっと多いようです。
入口には、「飯豊連峰切合避難小屋」と書かれた大きな看板が出ています。小屋の見取り図はほとんど「板の間」ばかりでしたが、1階の右上に「調理室」があります。夕食の名物はカレーだそうです。「料金表」もあり、料金は1泊2食8,000円、「米三合と寝袋持参」の場合は7,000円とのことでした。
ハイシーズンには管理人さんが入る切合小屋も、今日は文字通りの避難小屋です。夕暮れと共に真っ暗になりました。(懐中電灯があるとはいえ、)陽が落ちると同時に暗くなる生活は全然していないと思いました。キャンプ場でも、夜、電気の付いている部屋がどこかにあったと思います。
それにしても、小屋が寒くて全く寝られません。暑くて寝られないことはよくあっても、逆は初めてです。寝ようとしても、ガチガチと歯の震える音で目が覚めてしまいます。
とても心細くて外に出てみると、夜景の見える一角があります。米沢市の方角のようです。光の細い帯が浮かび上がっています。
真っ暗なはずなのに、飯豊山の大きなシルエットが浮かび上がっています。しかし、月を探してみましたが、出ていません。月齢を調べると、ほぼ下弦の月にあたる日でした。下弦の月は、24時をまわるまで夜空に現れません。
遠くの夜景が山を照らしているのか、星の明るさで見えているのか、不思議でした。
夜明けを待ちわびて、朝5時に外に出ると、空が林檎かサクランボのような赤色に染まっていました。
さらに明るくなると、山頂が平たくて大きな山脈が見えてきました。吾妻山です。
磐梯山も見えます。櫛ヶ峰(左側)と磐梯山(右側)、どちらも鋭い双耳峰です。左右均等の双耳峰ではなく、右側の方がずっと大きいです。
今日は再び切合小屋に戻ってくるので、アタックザックに必要なものだけを入れ、飯豊山を目指しました。
ダウンジャケットを着ていると、10分ほどで汗ばんできました。昨晩凍えるほど寒かったのが嘘のようです。
山頂が近づいても、まだ大きなアップダウンがあります。一筋縄ではいかない山だと思いました。
標高の高い場所でも、飯豊山では沢の存在感があります。絶えず流れ続ける水の音が、稜線の上まで聞こえてきます。地図を見ると、細かい沢の1つ1つに、丹念に名前が付けられていました。
(登頂:2019年10月下旬) (つづく)