岩木山(1,625m)
「~ けれども、津軽出身の小説の名手、葛西善蔵氏は、郷土の後輩にこう言って教えている。「自惚れちゃいけないぜ。岩木山が素晴らしく見えるのは、岩木山の周囲に高い山が無いからだ。他の国に行ってみろ。あれぐらいの山は、ざらにあら。周囲に高い山がないから、あんなに有難く見えるんだ。自惚れちゃいけないぜ」 ~」
(『津軽』太宰治(新潮文庫))
『津軽』は「序編」の前に、想像力をかき立てるこのページから始まります。
何種類の雪を見たことがあるかなと思いました。
「~ 津軽の雪
こな雪
つぶ雪
わた雪
みず雪
かた雪
ざらめ雪
こおり雪
(東奥年鑑より) ~」
津軽平野で、「周囲に高い山がないから、あんなに有難く見える」岩木山は、そびえている位置が絶妙です。津軽平野にとっても、岩木山は有難い山だと思います。筑波山に似ている気がしますが、標高は倍近くもあり、大きさはそのさらに倍はあるだろうと思います。「津軽富士」らしい、裾野の長さも伝わってきます。津軽平野のみならず、青森県で一番高い山です。
嶽コースの登山口から、赤い鳥居をくぐって歩き始めました。ブナの新緑が素晴らしいですが、猛烈な暑さです。風通しが全くなく、参ってしまいました。東北の山でこんなに暑かったのは記憶にありません。そのうえ地面は粘土質で、大雨が降ったばかりのような滑りやすさでした。
岩木山には八合目まで有料道路の津軽岩木スカイラインが、さらに九合目までリフトが通じています。八合目までは自分の足で歩きましたが、九合目まではリフトに乗って楽をしました。
リフトを降りると溶岩ドームです。斜面は真下に向かって切れ落ち、緑色の部分も多いです。最後に噴火してから長く経っているようですが、1回の噴火ではこんなに複雑な地形にならないだろうとも思います。気温に似合わず、巨大な残雪もあります。
「夢のカプセル」という標識が立っています。平成元年にタイムカプセルを埋めたそうです。
頂上には大きな四角錘の石碑がありました。雲が多くて遠くの山は見えませんでしたが、下の暑さを思えば、岩だらけの頂上で過ごしていると、ただただ安心するばかりでした。
帰りは八合目から路線バスで下山し、ヒバ造りの飛び切り熱い硫黄の嶽温泉につかりました。
(登頂:2014年7月上旬) (冬の写真は2019年12月)