田代岳(1,178m) ((1)のつづき)
「~ 半夏生とは農事暦のひとつで、ハンゲショウの葉が半分白くなるころを指すが、現在は毎年7月2日ごろにあたる。 ~」「~ この日には、田代岳山頂で、白髭直日神を祀る田代山神社の例祭が行なわれ、120あまりの大小の池塘が散在する九合目の湿原では、池塘に生育するミツガシワによって稲作の豊凶占いがされるという。 ~」
(『東北百名山地図帳』東北山岳写真家集団(山と渓谷社))
途中からモノレールが現れました。そのレールは山頂まで通じていました。田代山神社の祠を新築中で、その資材を運ぶためのものでした。
原生林の登山道は8合目を越えても続きます。そして、ぱっと視界が広がり、1本の木道が現れ、湿原が広がるその瞬間こそ最高です。
雰囲気は、秋田では虎毛山に似ていますが、湿原のサイズは尾瀬の小淵沢田代に近い気がします。湿原と池塘の向こうに、小高い丘のような頂上があるのは、岩手の焼石岳をずっと小さくした感じです。「120あまりの大小の池塘」は全部違う形をしていて、同じく秋田県の烏帽子岳に登った時に立ち寄った、千沼ヶ原の池塘を思い出します。
山頂には、工事中の神社の祠と、鳥居がありました。一等三角点もあります。
昭和38年の一等三角点の記には、「途中の造林小屋まで軌道あり便乗可。」と書かれているのが面白いです(国土交通省ホームページ・基準点成果等閲覧サービス)。今もその軌道があるかどうか、見に行きたいものです。
地元秋田県の人に、茨城から来ましたと話すと、どうしてここを選んだんですか?とたずねられました。
他の東北の色々な山に似ている田代岳は、全国区の山ではありませんが、他の山々に勝るとも劣らない個性があります。そして、田代岳ならではの魅力は青森県の山の眺めです。中でも、湿原越しにそびえる岩木山が素晴らしいです。平野から見上げる”津軽富士”岩木山とは違い、始まったばかりの温かい紅葉が演出する、名峰のまったく別の姿が見られます。
「池塘に生育するミツガシワによって稲作の豊凶占いがされる」という湿原では、「神の田(中稲種)」と書かれた標識もありました。
帰りは同じコースを下りましたが、天気は午前より午後の方が良かったので、二通りの原生林を味わうことができました。
全国区になってほしくはないと思いつつも、こんなにいい山があるんですよと、みんなに言いたくなる山でした。
タクシーで奥羽本線の早口駅へ送ってもらい、八郎潟まで電車に乗って、干拓地の大潟村で泊まりました。「ホテルサンルーラル大潟」は、珍しいモール温泉につかれる宿でした。
(登頂:2018年9月中旬)