森吉山(1,454m) (つづき)
この後は気持ちのいい稜線歩きで、目指す森吉山の姿が少しずつ変わっていくのが見物でした。”単純だけれど奥は深い”という言葉が、これほど似合う山はありません。紅葉は始まったばかりで、昨日の三ツ石山とは全然違います。
苔が濃い黄色に色づいているのに目を見張りました。
山頂までに、避難小屋が2軒建っています。
森吉山では、今も営業している阿仁スキー場、閉鎖された森吉スキー場、2つのスキー場が造られました。両方のスキー場を山頂でつなぐ計画もあったそうですが、断念されたといいます。この稜線が開発されずに済んだのは幸いでした。
山頂は、一ノ腰から眺めたときに感じた安堵感そのままの場所で、土曜日でも人はあまり多くなく、好きな場所でゆっくりすることができます。木製の長い標識が1本だけ立ち、同じ東北の焼石岳を思い出しました。頂上の周辺の傾斜が総じて緩いのも似ています。
秋の焼石岳は鮮烈な紅葉の山で、森吉山は寛ぎの山でした。
「東北地方では、秋田駒ヶ岳と栗駒山を入れるべきであったかもしれない。森吉山、姫神山、船形山など、いい山ではあるが、少し背が足りない。」
(深田久弥『日本百名山』(新潮社版))
深田氏は百名山を選ぶにあたって、「大よそ千五百米以上という線を引いた」そうです。森吉山は1,454m、わずか46m足りません。しかし、森吉山を選ばないのは惜しいです。
それどころか、ここに出てきた秋田駒ヶ岳、栗駒山、姫神山(船形山は未踏ですが)、自分にとって全部、百名山に入れたい山ばかりです。
山頂から反対側に20分と少し下ると、”山人平”という湿原があります。時間があったので寄り道してみました。初夏にはチングルマやイワカガミなど高山植物が咲き誇るそうですが、今はその気配はありません。よかったのは、とても静かだったことです。誰もいない小さな湿原に立っているだけで、今日はここまで来てよかったと思いました。空は雲が増えてきましたが、寒くはなく、風も穏やかでした。森吉山は本当に穏やかな山でした。
(登頂:2016年10月初旬)