光岳(2,592m) (つづき)
「~ 面平から易老岳まで地図では点線の道がついているが、実際は案内人さえ間誤つくほどの深い密林で、わずかに鉈目をたよりにして、踏跡らしいものを辿るといった風だ。しかも算を乱して倒れている唐桧・白桧の大木を、潜ったり跨いだりしての登りだから、相当疲れる。 ~」
(深田久弥『山岳展望』(朝日新聞社))
昭和10年代の当時、易老岳への道はこのような状況だったようです。
面平は、「白薙から登ってきた道とここで出会うのだ。」と書かれています。この時は、面平まで二通りの登り道があったのです。
現在は、易老岳への道はしっかりしており、大木を跨ぐところはあっても、潜るところはなかったと思います。
相変わらず急な坂です。急斜面に展開しているのはまさに「密林」ですが、背の高い木の間から太陽がさし込み、苔むした地面を穏やかに照らしていました。
ところどころ遠くの山が見えるのは、聖岳のようです。雲がかかってはいますが、間近で見るのは久しぶりです。南アルプスの南部に、3年ぶりに帰ってきたという感じがします。
易老岳は標高2,354mですが、「易老岳」という名前の三角点(三等三角点)は手前の2,254m地点にあります。ここから易老岳へは水平距離で1kmあり、間にはちょっとした岩場もあります。
ここまで来るとシラビソの森が広がっています。標高が高くなり、自然環境が厳しくなってきたのか、立ち枯れも見られます。
仙丈ヶ岳の、登山口から少し登った場所に雰囲気が似ています。仙丈ヶ岳はいきなりシラビソから始まるのに、光岳はそこまで歩いて6時間もかかります。
その間、森林の様相は何回も変化しています。たったの6時間で目まぐるしく変わっているとも言えます。
(登頂:2019年9月中旬) (つづく)