羅臼岳(1,661m) (つづき)
およそ5時間登って羅臼平に着きました。標高およそ1,350mの場所です。
大きく広がるハイマツの向こうに羅臼岳のピークが見える、という構図を期待していましたが、何も見えません。
チングルマの果穂の群落があります。風のせいか、みな同じ方向を向いて、小さな稲穂のようになっています。
羅臼平には、金属製のフードロッカーがあります。これは、熊に食べ物の匂いを気付かれないようにするためのものです。
地形図に「岩清水」と書かれた場所を過ぎ、最後の岩場を登ります。
急に眩しくなったと思うと、空がみるみる晴れていきます。たった10分で青空になりました。振り返ると小さな虹まで見えています。
木下小屋の管理人さんに教えてもらった天気は本当でした。
まるで、眼の前に奇跡が形になって現われたようです。
しかも、昨日の斜里岳も同じだったので、二日連続です。羅臼の方は斜里以上に鮮やかな展開でした。
山頂からはどこまでも雲海が広がっています。北の方角に、羅臼岳より100mくらい低いサシルイ岳(1,564m)が、なんとかギリギリ顔を出しています。
雲海の景色は、青空と雲と山の3つが組み合わさったものですが、ここでは山がほとんどなく、青空と雲の2つしかありません。こんな雲海は本当にどこからも見たことがありません。
標高1,661mの山の景色とは思えない光景です。空の色はジェット機から見る空に似ていました。羅臼岳から眺める空は、高度一万メートルから眺めるのにも匹敵する青空でした。
麓はとても晴れそうにない曇りでしたが、幾重にも重なった分厚い雲が、この景色を創り出しているのでしょう。
木製の小さな標識が立っています。ゴツゴツした岩の重なったピークは、とても風が強くて8月なのに寒く、じっと立っているのが難しいほどです。
羅臼岳の頂上は、劇的な凄まじさの中に歓喜のあふれる頂上でした。
(登頂:2017年8月上旬) (つづく)