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空木岳(2,864m)
「~ 中央アルプスの北半分に主峰駒ヶ岳があって、多くの登山者で賑わうが、南半分を訪れる人はぐっと少なくなる。その南半分の最高が空木岳である。登山者というロマンティストは美しい山の名に惹かれる。心の中に、まだ訪れたことのない、しかしその美しい名前だけは深く刻み込まれている、幾つかの山を持っているものだ。
私にとって、空木岳はその一つであった。空木、空木、何というひびきのよい優しい名前だろう。 ~」(深田久弥『日本百名山』(新潮文庫))
登山を初めてほぼ1年経つ頃のある週末に、有給休暇は取れませんが、土日で登れる山を探していました。
南アルプス、北アルプスの山には登り、八ヶ岳にも登ったので、未登の中央アルプスに一度登ってみたいと思いました。
「ヤマケイアルペンガイド11 中央アルプス 御嶽山・白山」(津野祐次・島田靖・栂典雅著 山と渓谷社)を読むと、空木岳のサブコースとして池山尾根の登りコースが紹介されています。地図上のタイムは、駒ヶ池バス停から空木岳までが6時間半。途中の「池山林道終点」まではタクシーで入れるとのことで、少し短くなりそうです。
これなら日帰りができるかもと思うと、会社帰りの電車の中でわくわくしました。
この頃は、通勤バッグの中に山のガイドブックを3冊か4冊は入れて、毎日持ち歩いていたものです。
早朝、登山口までタクシーで送ってもらいましたが、池山林道は工事中で終点まで入れませんでした。歩き始めたのは標高1,200mくらいの地点だったと思います。
最初から飛ばし気味に歩きました。1時間半登ると、水場がありました。大きな木がくりぬかれたところに、湧き出た水が流れ続けています。近くには三角形の屋根をした池山小屋が建っていましたが、人の気配はありませんでした。
森のとても美しいコースでした。途中の「マセナギ」では、星屑が流れて来るように木漏れ日が注いでいました。シラカバの幹が、陽光に照らされて白さをさらに増しています。
眺望のきく場所が、少しずつ出てきました。
地図上には、「大地獄」「小地獄」というおどろおどろしい名前のポイントもありましたが、注意して歩けばさほど危険ではない印象でした。
何時間もかけて樹林帯を登り続けると、頂上がいきなり目に飛び込んできました。何の前触れもなくぱっと世界が変わるのでびっくりします。
登山道に序盤・中盤・終盤があるとすれば、空木岳では序盤がとても長く、中盤はほとんどなく、いきなり終盤に至るのです。
(登頂:2012年8月下旬) (つづく)