西岳(2,398m)・編笠山(2,524m)・権現岳(2,715m)
葛飾北斎の富嶽三十六景に、「信州諏訪湖」という絵があります。諏訪湖の向こうに富士山の遠景が描かれています。さらに、富士山の左には八ヶ岳が、主役の富士山より大きく描かれています。
富嶽三十六景の中で、長野県から眺めた富士は「信州諏訪湖」が唯一のものです。
また、日本アルプスの出てくる絵は一点もないことから、富嶽三十六景に描かれた富士山以外の山のうち、最も高い山は八ヶ岳ということになります。
富士山の稜線と交わっている八ヶ岳は、編笠山に違いありません。
編笠山は、山の中の山と言いたいほど、一番基本的な山の形をしています。遠くから見ると、裾野の広さが目を惹きます。八ヶ岳連峰の一番端にそびえているのが、編笠山でよかったと思います。
また、西岳は編笠山より高さは低いものの、同じくらい長い稜線を持っています。ただし、長いのは名前の通り、山の西側だけです。算式風にすると、西岳 = 編笠山 × 1/2 と言えます。
八ヶ岳の山々(小淵沢駅より:2018年4月)
中央本線の富士見駅からタクシーで20分ほどの富士見高原に、西岳への登山口があります。
富士見駅の標高は955m、中央本線では最も高い場所にあります。全国のJRでも10番目に高い駅ですが、1位の野辺山駅から9位の松原湖駅までは全部小海線なので、小海線以外では一番高いことになります。
東京から毎日、この高さまで登ったり下ったりを繰り返す特急あずさ号は大変です。
(ちなみに、ほとんどのあずさ号が始発駅とする新宿駅は標高38mで、山手線の中では一番高い駅です。)
登山道は、カラマツの森から始まりました。カラマツは全く紅葉していません。緑色の森の中で、ツタウルシだけが赤いです。
「立木伐採搬出中」という注意書きがあり、登山道には同じ長さに揃えられた丸太がありました。
自然の森を登るのは気持ちがいいです。ほとんど紅葉が進まないまま、森林限界に出て視界が広がりました。ここまで登れば山頂は近いです。
雲の向こうに富士山が小さく見えます。編笠山の大きな緑色の斜面には、ところどころに紅葉の花が咲いています。
西岳の頂上からは、権現岳の凝縮された姿が印象的でした。同じ山が、赤岳から眺めた時よりずっと小さく見えました。
(登頂:2012年10月中旬) (つづく)