にゅう(2,352m)
北八ヶ岳の麦草峠は標高が2,127mもあり、国道を通ってたどり着ける場所の中では渋峠(2,172m:群馬・長野の県境)に次いで日本で2位の高さです。そこから白駒池を通って頂上まで約2時間半のコースは、険しい場所などなく、のんびり歩けます。
白駒池のまわりを歩いて「にゅう」への分岐を曲がると、樹林帯に苔の緑色、そして突如として現れる明るい白駒湿原。短い距離の中に北八ヶ岳らしい魅力がつまっています。山口耀久氏が「北八ツでは、何時までにあの峠に着いて、何時にあの頂を出発しなければならないというような、時間にしばられた歩き方はしない。」 (『北八ツ彷徨』(平凡社ライブラリー)2008年)と書いた、北八ヶ岳のイメージが一番ぴったりくるルートです。
にゅうは何でもない小さな岩峰です。今日は頂上に登ることが目的ではありません。山頂から眺める山の中では、天狗岳が一番大きく見えます。それよりもずっと印象に残るのが北側の大きな森です。深緑色の原生林がびっしりしています。山と森をはっきり区別できるかどうか分かりませんが、もしどちらかに決めるなら、ここは山ではなく森です。
それにしても、このとても変わった名前の山は、ひらがなで書かれることもあるしカタカナで書かれることもあります。現地には「乳」という標識もありました。
「切り立った線はそのてっぺんに登ってやろうという人間の本能を挑発するが、なだらかな面はそういう情熱を刺激しない。だから北八ツの山歩きには、かならずしも頂上を必要としないのである。」(山口耀久『北八ツ彷徨』(平凡社ライブラリー)2008年)
麦草峠を出発するとまず辿り着くのが”白駒の奥庭”。
樹林越しに眺める白駒池
白駒池は、標高2,000m以上の場所にある池(湖)の中では日本一の広さを誇ります。
樹林帯の中、突如現れる白駒湿原。前後が鬱蒼としているだけに明るさが際立ちます。
(登頂:2013年8月中旬)