心が満ちる山歩き

美しい自然と、山に登れる健康な身体に感謝。2019年に日本百名山を完登しました。登山・街歩き・温泉・クラシック音楽‥‥

南アルプス 光岳(1)

2019年10月28日 | 中央アルプス・南アルプス


光岳(2,592m)

 2019年も9月に入り、日本百名山が残り三座になりました。ある時新潟から、出張帰りの二階建て新幹線の中で、97の登った山を順番にノートに書き出してみたら、66番目の雨飾山の名前が出て来ず、鳳凰山(52番目)や羊蹄山(74番目)の漢字が思い浮かびませんでした。「瑞牆山」(みずがきやま)は難しすぎて書けませんが、他にも書けない漢字があるなと思いました。羊蹄山の場合、ひつじの印象だけがあって、「蹄」(ひづめ)の字は忘れていました。
 目指すのは、日本アルプス最後の一座、光岳です。光岳は、登ったことがないだけでなく、見たこともありません。同じ南アルプスの聖岳に登ったとき、南の方角に見えたはずですが、雲が多く、よく分かりませんでした。
 自分にとって、全く知らない光岳のイメージは、
 「~ 光と書いて、テカリと読ませるところに味がある。 ~」(深田久弥『日本百名山』(新潮社版))
 という一文に集約されています。 
 皇海山(すかいさん)並みに読み方の難しい山であることは間違いありません。
 『三省堂国語辞典(第七版)』を引くと、「てかる」という動詞は出てきましたが、そこには「てかてか光る」という説明書きがありました。「光る」を「てかる」と読ませることは想定していないようでした。


 南アルプス・聖岳からの眺望


 まずは登山口を目指し、JR飯田線の平岡駅まで行きます。
 東京→(中央本線)→岡谷→辰野→(飯田線)→平岡→豊橋→(東海道本線)→東京 という、ちょうど一周する切符を買いました。
 初めと終わりが同じという切符は、なかなか買うことがないものだと思います。
 特急「あずさ」を茅野で降り、普通電車を乗り継ぎ、辰野から飯田線の旅が始まります。去年塩見岳に登った時も、やはり飯田線に乗りました。
 小さな町から町へとつなぐ飯田線の風景は、大自然の中を走る鉄道の旅とはまた違う魅力があります。
 南アルプスの眺望も抜群でした。仙丈ヶ岳は、反対側を走っている中央線の車窓からは見えません。
 地形に忠実に、線路が抵抗の「Ω」の形に進んでいるところも面白いです。
 また、JRで最も急な勾配は、意外にも飯田線にあります。40‰の急坂は、田園地帯に何の前触れもなく現れます。


 飯田駅は、屋根の赤色がピカピカで、ステンドグラスもあって興味深い駅舎です。
 「栗まん十」の看板の和菓子店があります。
 飯田には登山ではない旅行でゆっくり訪れてみたいと思います。
 豊橋行きの普通列車でさらに南下し、天竜峡駅を過ぎると車窓の雰囲気は一変します。人家はほとんどなくなり、進行方向の右側に天竜川が悠然と流れ、時おり大きな発電所やダム、川の両岸をつなぐ吊り橋が現れます。
 JR東海が飯田線に、その名も「秘境駅号」という臨時急行列車を走らせ、一度乗ったことがあります。飯田線の山深い駅に、次々と停車していくのですが、一番驚いたのは乗客の数でした。「秘境駅」に電車が停車するたびに、狭いホームはものすごい数の人でごった返すのです。その繰り返しに最後の方はやや疲れたものの、日本のローカル線もなかなかすごいなと思ったものです。


 飯田線・為栗(してぐり)駅(2018年4月)

 (登頂:2019年9月中旬) (つづく)



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