伊豆ヶ岳(851m)・古御岳(820m)
「~ 伊豆ヶ岳の山名由来についてはいくつかの説がある。
①山頂から快晴の日には伊豆の山々が遠望できる。
②昔、山頂に柚子の大木があって、柚子ヶ岳→伊豆ヶ岳
③西麓の湯ノ沢(湯川とも)に湯ノ元という池があり冷泉が湧いていた。昔これが温泉だったことから湯津ヶ岳
④伊豆ヶ岳の山容がアイヌ語の「イズ」<突峰>にあたる(神山弘『ものがたり奥武蔵』による)。
もっとも神山氏は、これらの名因説には何ら科学的根拠はなく素朴な俚譚のひとつとして見てもらいたい旨を書き添えておられる。ちなみに①について、二十万図で伊豆ヶ岳山頂から伊豆の山に直線を引いてみたところ、丹沢の檜洞丸付近が途中でひっかかり、丹沢山塊が四、五百メートルの山でなければ伊豆の山々は見えないことがわかった。 ~」
(浅野孝一・打田鍈一・楠目高明・横山厚夫著『関東百山』(実業之日本社))
アイヌ語の地名は、北海道だけでなく本州でも聞くことができますが、埼玉県にあるというのは面白いです。
『日本山名事典』(三省堂)をひくと、「伊豆ヶ岳」は2座ありました。
もう一つの伊豆ヶ岳は3,740mで、地形図には出てきませんが、富士山の火口を取り囲むお鉢にあるピークの一つです。山名事典には「山梨県富士吉田市と静岡県駿東郡小山町の境」とありますが、付近の県境線は大きく途切れています。富士山頂と同じように、どちらの県か(またはその境目か)は、まだ決まっていないように見えます。
「伊豆ヶ岳」は、両方とも伊豆の山ではありませんでした。
4つの由来では、やはり①がしっくりきますが、「伊豆ヶ岳山頂から伊豆の山に直線を引いてみたところ、丹沢の檜洞丸付近が途中でひっかかり、」というのは細かい分析だと思います。地図上で伊豆ヶ岳から伊豆半島の最高峰・天城山へ直線を引いてみると、確かに檜洞丸の西側を通過していました。
伊豆ヶ岳へは、西武秩父線の正丸駅から直接歩き始めることができます。改札口から右方向に向かい、急な階段を下りて線路の下をくぐります。最初は舗装道ですが、とても寒くてところどころ凍り付いていました。「スリップ防止用砂」も置いてありました。
途中に、安産地蔵尊が建っています。
「金の胎内仏を持っているとして、古くから霊験あらたかな仏として信仰を集めていました。」「古来から大蔵山地区にはお産で命を落とした婦人はいないと伝えられているのも霊験の一端をあらわすものといえます。」
金の胎内仏はすごい力を持っているのに違いありません。
正丸峠への道と分かれて、山道に入ります。その後も1カ所分岐があり、伊豆ヶ岳へは左側の方が近そうですが、よく分からないまま登り続け、気付いた時には右側を歩いていたと分かりました。
真っすぐに伸びる杉林の中に、「ふたご岩」と「かめ岩」がありました。ふたご岩は、確かに巨岩が2つありましたが、形は双子のようには似ていないと思いました。かめ岩の方は、かめよりも大きく、恐竜が横たわっているようでした。
陽が射すと、少し暖かくなりました。山では、平地よりも気温の変化は大きいと思います。笹の中に続く木段を登って稜線に出ると大蔵山、次いで五輪山です。どちらも地図には名前が出てきません。
伊豆ヶ岳の山頂直下には男坂という岩場・鎖場があります。立入禁止ではないですが、「非常に危険」や「自己責任」という物々しいことが書いてある看板が立っています。鎖場はパスして右に曲がりました。もう一つの女坂も、崩落で通行止めだったため、迂回路を登って山頂に着きました。
山名の由来が4つ全部紹介されていました。順番は④→①→②→③でした。
(登頂:2013年1月中旬) (つづく)