花街遊びを始める前の教養講座（２）

＊お茶屋遊びと「一見（いちげん）さんお断り」

最近は、高級旅館やホテルなどからの紹介で、
一見さんでも気軽に入ることができるお茶屋が増えてきたようだが、
ちょっと格式の高いお茶屋になると
まずほとんどの店が「一見さんお断り！」としている。

どんなに金持ちでも、地位がある者でも
紹介者がいない限り、中へは入れてくれない。
客がまったくいないときでも
「一見さんは、おことわりしてます」
「あいにく、お座敷はいっぱいで空いておりません」などといわれ
断られてしまう。

そんな目に遭うと
「気取りやがって」
「おいッ！この店は客選ぶのかヨ！」と（特に江戸っ子には）
捨てぜりふのひとつや京都の敷居の高さに嫌気を指す人も出るだろう。

そんなお茶屋だが　「なぜそのような対応をするのか？」
その理由はお茶屋と客との深い信頼関係にある。

花街のそれ相応の店では、客が当日に代金を支払うことはない。
お茶屋遊びの当日は、料理代や花代（舞妓や芸妓に支払う代金）など
すべてを女将が立て替える、いわゆる「ツケ払い」を原則としている。
したがって身元・素性のはっきりしない一見客はお断りということだ。

また、お客を大切に扱う「もてなしの心」がもう一つの理由。

初めての客の好みが分からない場合、
せっかく足を運んでくれた客に、満足のいくもてなし（サービス）ができない
というケースも出てくる。
常連客の紹介者から初めてのお客の好み ほかの情報が得られれば
より満足してもらえるもてなし（サービス）もできるというもの。

行き届いたもてなしを受けたときほど
客にとって　ありがたい、うれしい、快いものはない。
（金では計れない満足感・幸せ感がある）
また、足を運ぼう、ひいきにしようという心根も生まれてくるものだ。

年をとってはじめて
花街のこれらのしきたりの良さ、すばらしさを知るのである。