日記も気ままに

JULIEというフィクション、澤田研二というノンフィクション。
フィクションには裏打ちされたノンフィクションがある。

原田マハ 「リボルバー」

2022-04-22 | 【は】行
2021年5月25日 第一刷発行
カバーフォト:ゴッホ
表紙フォト:ゴーギャン
幻冬舎


          

リボルバーをオークションに。
ゴッホとゴーギャンにまつわるリボルバーを。

売るためには裏付けが必要なのに。
読み始めて、、なんか無理ないか、、とサラに疑問。
この時点で、私はもう、、マハさんの手の中に落ちていたのだねぇ。

裏付けの物語は祖母~母~サラ。
大切なことは、伝える相手は一人ってこと?
ならば、何故、それが冴だったのか?
何故、サラは冴のことを知っていたのか?
何故、リアム・ペーターズの夢をかなえたいって言ったのか?

で、マハさんは、ものがたりながら、私の疑問をひとつづ解決していった。
ほんまにようできたお話。

「ヴァエホの肖像」も「ゴーギャンのリボルバー」も
存在しているかと思ってしまうほどの物語だった。

          

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原田マハ 「異邦人(いりびと)」

2022-04-14 | 【は】行
2018年3月22日:第1版第1刷
装丁:重実生成
装画・写真提供:ALBUM/アフロ
PHP文芸文庫

これもJ友さんお薦めの本
図書館でやっとこさ回ってきた人気の本。
読みはじめてすぐに入り込んでしまった。
で、京都から帰って続きを読むのが楽しみでした。


          

菜穂は、震災と原発事故の影響を考えて、東京から京都へ一時避難するつもりだった。
けれど、結局、京都で永住することを決める。
その間のことが物語。
最初に菜穂のお嬢さん振りが書かれているけど、私は、菜穂が好きだな、、と思って読みました。

一輝は、菜穂が京都から受け入れられない異邦人だと思っていたけれど。
一輝自身が、父からも菜穂からも愛されていず。
もしかしたら、菜穂のことも本当には愛せてない、、
その人間関係の中では異邦人だったのかも。

菜穂は、東京育ちで京都では異邦人かと思われたけれど、
むしろ父母との家族関係の中で異邦人だったのかもしれない。
そして、本来いるべき場所、信頼のおける場所が京都であり、
樹と巡り合うことが運命づけられていた京都。

画の世界のことは、わからないけれど、
作者さんのキャリアをもって描かれた人間関係や取引の丁々発止が面白い!
絵の描写も見えるようでした。

ずいぶん前ですが、府外の友達が、
「京都は外の人を容易に受け入れないところがあると言われるけれど、
祇園祭の鉾には、ゴブラン織りなども使われていて、
決して京都の物だけ、日本の物だけという考えではないと思うよ」
というようなことを話していたのを思い出しました。

菜穂が滞在していた家の主の鷹野せんや祖父の思いを知ってくれていた画商や美術館館長(名前を忘れた)。
確かな人は確かなものをちゃんと受け入れることができる、ということなんだと思う。
これに関しては、京都人だけが、ということではないと思うけれど。

樹のお母さんが大切な事を樹に伝えていなかったら、、、
それでも二人はちゃんと出会えたかな、、、?

そして、果たして養父(名前忘れた)の死に樹が関わっていたのか否か、、
その疑問を残して終わっていることも良い余韻が残りました!


      

さて、葉書に取り掛からんと 
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藤沢 周 「世阿弥最後の花」

2022-01-31 | 【は】行
2017年11月8日 第一刷発行
ブックデザイン:鈴木成一デザイン室
装幀:しらこ
株式会社河出書房新社

J友さんのお薦め本。



          



物語の始まりは、世阿弥72歳が佐渡へ流されていく場面から。
元雅(世阿弥の子)、世阿弥、朔之進(後に了隠)の語りで話が進んで行く。
電子辞書が手放せないほど知らない言葉がいっぱい出てきて、そのたびごとに止まるのに、物語にどんどん引き込まれる。
わかることもわからないこともあるけれど、歌もたくさん出てきます。


凄いのが、能を舞う場面。

観阿弥の形見の鬼神面をかけ、日照りの続く佐渡の地での『雨乞』の舞。
了隠の打った面をかけ、鎌倉幕府打倒に加わったとして北条義時の鎌倉軍に負け佐渡へ流された順徳上皇の霊を鎮める『黒木』の舞。
子に厳しかった自分(世阿弥)と重なる西行。西行の住まいにある桜の老いた精霊となって西行を楽しませる『西行桜』の舞では、何もかけず。

実際に能を観ているような緊張感。うー--ん観たくなる。


元雅の導き
世阿弥と元雅の情の通い合い
佐渡に居る必然
舞うのではなくて、宇宙に存在するすべてのものが躍らせてくれているということ……
一刹那の中の壮大さ
省くことの難しさ
都での名声や昔の賞賛にしがみつかない
老いをきわめたそのままの姿で


足利義教が亡くなって後、罪は許されて都に帰れることにはなったそうですが、その後のことは不明のようです。
が、物語の最後では、元雅と抱き合うことができました。
ということは……

          

読み応えのある本
風姿花伝にもこの本にも、ジュリーがいるね
って、J友さんと話しました




余談ですが、30年くらい前に、佐渡で、安寿と厨子王・たぶん「さんしょう大夫」・前進座だったと思う、、を観ました。
細くて長い麦のような何かを持って静かにふりながら、「安寿恋しや ほーやれほい 厨子王恋しやほーやれほい」と歌っていたお母さん。
悪人の処刑の場面は鬼気迫るものがあり、なかなかの迫力。
わが子は、「お母さん、これってお芝居だよねぇ、、」って。
現か幻か状態でした。

そうそう。「鼓童」もありましたね。
それから、一夜干しの烏賊がめっちゃ美味しい~
お友達のご実家もあり。泊めてもらった。
佐渡、懐かしい~

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原田マハ 「キネマの神様ディレクターズカット」

2021-09-16 | 【は】行
2021年3月25日 第一刷り発行

文藝春秋


         

原作読んで映画を観てディレクターズカットを読んだ。
気付いたことをメモ

それぞれの役にそれぞれの役者の声や表情がぴったりはまり、私の脳内で映像化される。

オオモテであったであろうゴウチョクさん。ふむふむ。
「花の・・」なんでやねん!のツッコミ

そのまま若い時の場面に戻る。
その会話のいきいきしていること!

映画を観ているときに気になってたというか、気に入っていたというか。
「カメラ」じゃなくて「キャメラ」。
ゴウじいちゃんの声に変換されて今でも耳に残ってる

・・・たちまちスタッフがフレームアウトする・・・
ここ、やけに納得。
あんなにたくさんの方々が関わって創っているけれど、、
観客にはわからないことで、そんなことお構いなしに楽しめている、、なんよねえ。

最初のテラシンさんとゴウちゃんの会話のところで、園子さんの瞳に若ゴウちゃんが写っていたことと、
最後に園子さんが老いたゴウちゃんを見つめて迎えにきたことは、
ファンタジックにリンクしてるんだねぇ……

歩とゴウの親子間を描いた文章。
マハさんの豊かな子ども時代の実体験で、マハさんの生きる原動力なんですよね。

で、ゴウじいちゃんの白蛇さんの夢は、まんざら嘘でもなかったんや

          

気持ちがじんわりの映画でした。


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平岡陽明 「イシマル書房編集部」

2021-01-09 | 【は】行
2017年11月8日 第一刷発行
ハルキ文庫
フォーマット・デザイン:芦澤泰偉
表紙イラスト:門坂 流



「シネマスクエア」と「歌壇1」を買いに行って、いつものようにレジ側の無料になっている「ランティエ」をもらって帰ってきた。
さて、絵を描くのも少々の余裕が出てきたので、本を読む時間も作ろうと思い、何か面白そうなものはないかな、、と。
8・9ページの平岡陽明さんの4冊あらすじ。なかなか面白そう。
ということで、図書館で「ロス男」と「イシマル書房編集部」を借りてきた。
何より、本にまつわる話には惹かれる。


あらすじ:
IT企業に資金提供を受けて子会社化された『イシマル書房』は、今まさにパチンコメーカーに株を売られようとしているほど、切羽詰まっている。
それでもなんとか生き延びようと、シニア・インターンを募集する。
この生き延びようがやけにジーンとくる2021年の年明け。

面白い!引き込まれる。

三宅さんがいいんだ。ただ原稿を取りにくるというのじゃなくて、この作家が好きなのだ、がわかる。
島津さんと岩田さんとの再開は、その期が熟したということか。
☆作家の値打ち・・・うーーーんなるほど~。取材旅行で得たもの。
☆人間を書くこと・・・私にも、書くこと描くことやね。おこがましいが。

P129 P143 P144 P181 
P244では、じわりと泣いてしまった。
後はP279まで一気読み。
他にも、プロフェッショナルな登場人物達の言葉や仕草もとても気持が良い。

年明けに、良い物語に出会えました。

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