日記も気ままに

JULIEというフィクション、澤田研二というノンフィクション。
フィクションには裏打ちされたノンフィクションがある。

西加奈子 「通天閣」

2022-03-08 | 【な】行
2009年12月10日 第一刷発行

カバーデザイン:多田進
カバー画:著者

筑摩書房


          

大阪へ行く前から、6日発送の父への絵はがきは通天閣。って決めてまして。3枚目にして完成。
描いてるときに、通天閣ってそれ自体に意志があるのかもな、、と思いました。
で、なんとなく通天閣をネットで調べてたら、出てきたのが、この本。

通天閣の下あたりに住んでいる人の話。
男は、百円ショップやコンビニで売っている、大小ふたつで一組の懐中電灯などを組み立てる工場で働く40代(だったと思う)のひとり者。
女は、恋人にふられたばかりで、いろいろ訳ありなホステスさんやオーナーがいるお店で、チーフという位置で働く20代。
ふたり別々の場面で出てきたので、いつか接点ができるのよね、、と読み進める。

おお、、これは、テレビドラマにはできないよね、、って言葉が出てくるし、おやおややっかいやん。ってことがいっぱいあり。
ぷふっっと笑ってしまうこともあり。

事件が起きた時、クライマックスの場面をもって、きわどいところまで二人は接近するんだけど、お互いが出会うことは最後までない。
ここらへんも、なかなか良くて。

自分自身を肯定したり否定したりと、もがきながら生きてる市井の人たちのことが、やさしく微細に書かれていて。
で、それぞれが、それぞれの方法で、ちゃんと希望を見出そうとしている。

映像描写も心理描写も、やさしさを含めてとてもうまい! と思いました。
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名取佐和子「金曜日の本屋さん」3

2021-03-09 | 【な】行
2017年8月18日第一刷発行
ハルキ文庫
表紙イラスト:門坂 流
装画:丹地陽子
装幀:五十嵐 徹


          



小さな駅中の本屋「金曜堂」 シリーズもの。これはシリーズ3。
店長の南さん・オーナーのヤスさん・喫茶の栖川さん・アルバイトの倉井さんたちが、お客さんたちと綴る四つの短編物語。
物語を進めているのは、ほんのりと南さんに恋心を抱いている倉井さん。

「読みたい本が見つかる」というのが、コンセプトの本屋さんのようで、
見かけ小さい本屋さんなのだけど、じつわ凄いたくさんの蔵書数。
それは、いったいどこに? っていうのも、なるほどぉ~

で、出てくる本のタイトルもいっぱい。
読んだことのある作家さん、興味があるけどまだ未読の作家さん、
すっかり内容は忘れたけど、読んだことのある本。

例のごとく印象に残ったというか、メモしたページ。
P56…どんなものでも、一面ではわからないってことかな、、、

P90…そうそう。町の小さな子どもの為の本屋さんに勤めていた知人(今はお引越ししてていない)
にそういう人がいた。
それと図書館員さん。

P184…キッチンとお手伝い券、親子関係とは、そも難しいものなんだねえ、、
ここでは、良い人同士と言うか、、、なんだけど、、
そして、P190で泣くわぁ、、、のP242…未都ちゃん親子もねぇ。

今は使われていない地下のプラットフォームと線路は、
近い、あるいは、遠い、どこかへ続いているってことかな、、、


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野見山響子 「イナバさん」

2020-01-27 | 【な】行
2019年12月 第一刷
理論社
表紙の絵は、イラストレーターさんなので作者ご本人かな。

本友さんから、
前にお教えいただいた、ぶたぶたさんもよいですが、イナバさん、お試しいただけたら幸いです。
と、お送りいただいた本です。



ぶたぶたさんは、人間がぶたぶたさんを受け入れる、、、からはじまるけれど、イナバさんは受け入れられてる。
と言うより、挿絵などを見ていると他にも動物がいるね。
これは、どういうことだろう、、、って思いながら読み進めてました。

そうそう。「ぶたぶたさん」では、主人公は登場人物で、ぶたぶたさんではないですね。
「イナバさん」ではイナバさんが主人公だけど。

で、イナバさんは、いろいなところへワープするんだ。
あぁ、、絵画を見るのに、ああいう見方もおもしろい。

で、最後に来て納得。
マキネさんのいる世界には私が住んでて、イナバさんの住んでる世界があちらの世界なのか、、
私が住んでるこちらの世界に「まぎれて暮らしている」何か、、、と、ココロが通うときがある。
花も猫も蚊もそうかも、、特に私は無機質なものに、それを感じるなぁ、、


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中山七里「秋山善吉工務店」

2017-11-09 | 【な】行
2017年3月20日 初版
装画:藤原徹司
㈱光文社



夫が原因不明の火事で焼死。
残された妻の景子・中学生の雅彦・小学生の太一が、夫の実家・善吉と春江のところに身を寄せる。
頑固者の善吉への印象が悪い景子と雅彦の気持ちは重いが、
善吉についての記憶がほとんどない太一は、素直に善吉と春江に馴染んでいる。

引っ越しがあったので、当然、兄弟は転校を余儀なくされ、
景子は、夫の実家を少しでも早く出て3人で生活するためにと新しく仕事を始める。

そこで3人はそれぞれに様々な人間関係とトラブルに巻き込まれるが、
さらに火事の原因が家人の付け火ではないかと疑っている刑事が現れ3人を追い詰める。

頑固者の善吉と春江に対する感情や誤解を持ちながら緊張の毎日を過ごしているが、
トラブルが一つ一つ解決されていく内に、
善吉や春江のピシッと一本筋の通った頑固さの中には、
とても柔らかい気遣いのあることも少しずつ分かり始めて、
景子と雅彦の気持ちが徐々にほどけていく。

読んでいくうちになんとなく出火原因が誰にあるのか、、
というのがわかってしまうのだけど、
さて、さてそのことを、どんなふうに解決させるのかと、読んでいて楽しみでもあった。

ちゃんと自分と向き合うことは、とても難しい、、。

それにしても善吉さん、ヤクザも舌をまくほどの力があり、エピソードがいちいち痛快!
悲しいのだけれど、後へ残るものに力を与えた結末に好感が持てた。

この物語で、善吉と春江を昭和の生まれの昔気質と出てくるのだけど、
きっと、昭和の初期の人のことだよね、って思う。
だって、昭和生まれの私なんぞへなちょこやもん。
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似鳥 鶏 「美しき余命」

2017-04-02 | 【な】行
ランティエ・2017年4月号に掲載
イラスト:森泉岳士
発行:角川春樹事務所


          


家族旅行の帰りにセンターラインを越えて来た飲酒運転の車との正面衝突で、父母弟を一度に亡くしてしまった少年。
重傷を負い入院をした時に難病が見つかり、余命幾ばくもないとわかる。
少年は、親戚の秋庭さんのところに引き取られた。

物語は、太字で秋庭のおばさんの言葉から始まり、それから、少年の一人称で物語が進んでいく。

読みながら気になるフレーズに線を引きました。

途中、太字で秋庭のおじさんの言葉が書かれています。

不幸な少年と優しく接する秋庭さん家族という話は、どんどん進んでいきますが、
ある日、少年に奇跡が起こる!!

いや、!!ではなくて、!!!!・・かもしれない。

そこからの展開がね、、凄いの。

もしかして、喜劇へ持って行こうっての、、、?
それとも、超シビアに展開するの、、?
と、一瞬、二つの展開を想像しちゃいました。

今度は、秋庭さんの娘さんの言葉が、太字で少し長く書かれています。

ほほーーっと、、、

「美談」を「賛美する」ことの軽薄さと残酷さかぁ、、、
さて、、私やったらあの修羅場でどう行動したやろ、、、
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