日記も気ままに

JULIEというフィクション、澤田研二というノンフィクション。
フィクションには裏打ちされたノンフィクションがある。

増山 実 「ジュリーの世界」

2022-05-28 | 【ま】行
2021年4月12日 第一刷り発行

装画:中村一般
装丁:岡本歌織

ポプラ社

J友さんに教えてもらって。
以前どなたかのブログか何かで表紙だけは見たような気がする。

          

作者は、人通りのまばらな朝、
商店街のアーケードの下の柵にもたれて東の空を見上げている河原町のジュリーに出会う。
河原町のジュリーは、なぜそうしていたのか、、、
それを書くことが人生の宿題のような気がした。
と、あとがきにありました。


「戦友」などと、戦争を知らない私などが、失礼な書きようかもしれないけれど、、、

空想の中の京都の街を、恩人である背中の戦友とともにジャングルを歩いた。
その歩調は、平和になった京都の街を、戦友とともに歩くときと、きっと同じなのかもなぁ、、、

木戸さんの言葉、先輩山崎さんの言葉、柚木さんの言葉、心に入ってきます。

「ジュリーのいた世界」ではないんだ、、と思って読み進めるうちに、
色のある世界と色のない世界
「ジュリーの世界」というタイトルの正しさがなんとなくわかる。

そして、2月5日は、『僕のマリー』の日です。

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水上勉 「ブンナよ、木からおりてこい」

2021-12-28 | 【ま】行
昭和55年2月10日発行
昭和56年10月20日第14刷
装幀・挿絵:山高登
発行所:三蛙房
「土を喰らう十二カ月」が来年秋の公開。


ライブ続行中の公開なのか、一段落しての公開なのか。 どちらにしても、楽しみ~

水上勉さんというワードで、最初に思い出したのは「ブンナ」と「竹紙」でした。
「竹紙」は幼なじみの画家が、「竹紙」などの自然素材に影響を受けています。
「ブンナ」は、もう、25年以上前かな、、内容はほとんど憶えていないけど、お芝居でした。
どちらの劇団だったのか忘却です。数年前に「青年座」さんが公演されていたようですが。
あっ、「青年座」さんと言えば、マキノさんの作品もありますね。
で、本は読んでないし内容もあやふやなので、読んでみることに。


          
          
「空を飛べたら広い世界が見える」と、鳥に憧れるトノサマガエルのブンナ。
跳躍は、沼に住んでいる土ガエル達には負けないし、木登りが好きで、高いところから仲間に危険を知らせることもできる。
そんなときには、自分が少し偉くなったような気がする。

そんなブンナが、仲間の土ガエルたちの心配をよそに、高い椎の木のてっぺんへ冒険に行くことに。
てっぺんは広場のようになっていて、もぐり込める土もあり、
一夜だけ過ごして素晴らしい眺めをみんなに自慢するつもりだったのが。
目を覚ますと獰猛な鳶が!

ここからが大変!! 
鳶も長い冬を越すために十分な餌が必要です。
ここは、鳶が冬を越すために捕まえた獲物を一時保管するところで、
雀、百舌鳥、鼠、へび、牛がえる、つぐみが、次々と連れてこられては、鳶のねぐらへ連れていかれる。
ブンナにとっては、捕まったもの達も危険ないきもの。
捕まったいきもの同士の会話。
なかなかに、ハラハラします。

そして、とうとう、土の中から出られずに冬眠。
やがて春が来て、無事に仲間のところへ帰ることができるのだけど、
そのシーンが、とても活き活きしていました。
そして、どうして、ブンナが長い冬を越すことができたのか…… ここですねえ。

生きるもの達の物語でした。

          
          
久々の児童文学。
一気読みでした。
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村田沙耶香 「コンビニ人間」

2021-02-23 | 【ま】行
「文学界」初出2016年6月号 
2016年7月30日第一刷発行

作品:金氏徹平『溶け出す都市、空白の森』より
装幀:関口聖司

文藝春秋

      

タイトルだけ見て、少々お笑いの要素でもあるのか、、と思っていたら、
いやいや、少々世に問題を問いかけているやん。「普通とはなにか?!」って。
主人公を通して見える、自分は普通だと思っている人たちの不気味な普通じゃなさ、違和感が、なかなか面白かった。

あらすじ:
子どもの頃からちょっと普通じゃないと言われ続けて、今、36歳の恵子。
大学を卒業してからずっと、マニュアルどおりに物事がこなせるコンビニでアルバイトをしている。

子どもの頃からそれが必要なんだ、そうしていると安心なんだ、それで、親や姉妹も安心する。
と周りの普通に合わせるように生きてきた。
コンビニでは、完全なマニュアルがあるおかげで、年齢や国籍に関係なく、その力が発揮できている。のか、、、
うーーん、コンビニ、マニュアルだけじゃこなせない気もするけど。

生きずらさを感じながら過ごすことは、大なり小なり、あるわけだよね。で、無理に世間に合わせることも。
でも、これでいいやん!!と思えたんだ。ちょっとうらやましくもある。
では、果たして、私はどうなん。
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群 ようこ 「れんげ荘」

2021-02-11 | 【ま】行
2011年5月18日第一刷発行
2011年11月28日第十刷発行

表紙:門坂流

㈱角川春樹事務所




アラフィフのキョウコ。
有名広告代理店でバリバリ働いていたそのキャリアを捨て、
小うるさい母親との距離を置くために家を出た。

れんげなど咲かない名ばかりの「れんげ荘」。
共同トイレ共同シャワーで、
なおかつ、夏は蚊が飛び交い梅雨にはカビに悩まされ、
冬には雪が入ってくる築50年近いアパートに住むことに。

さて、激務だった仕事や職場での嫉妬嫉みから解放されてのんびりしようと思っていたが、
それまでの習慣や考え方がなかなか頭から離れない。
一夜にして生活を変えるのはなかなか難しい。
何もしない生活のままで良いのか……何もしないことを望んだのに、何かしらの不安。

そんな中、お隣の部屋のクマガイさんとの交流や友人の言葉、
兄夫婦の優しさ、れんげ荘へ遊びに来た姪っ子の感想などが、とても良い。

母親との確執はあるものの、事件はなにも起こらず。 
いや、、、彼女の中では十分起こっているのだけど、、
物語の中で、ただただ、等身大の自分を生きていこうとしている主人公が、
めげずにいることがほほえましい。

共感するなぁ、、仕事いかなくなってもう、、7年くらいになるけど、
今でも、こんなんで良いの?と思うことあるもん。

続編を是非読んでみたい。




れんげじゃなくて

菜の花


胡麻和えにしたんだけど、いつものように少し残して
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森山 京「きいろいばけつ」

2018-01-19 | 【ま】行
1985年4月 初版 あかね書房
つちだ よしはる 絵

私が読んだのは、1997年6月 第82刷の本。
きつねのこシリーズの1作目で、私の大好きな物語です。

先日の新聞に、作者の森山京さんが亡くなったとありました。



        



げつようび

きつねのこが、きいろいばけつをみつけました。
中にほんの少し入っている水に自分の顔をうつします。
あかんべをしたり、べろをちょろりとだしたり、にこっと笑ったり。
それから、外側を見て。
名前は書いてありません。
そのばけつは、きつねのこが持つのにちょうど良い大きさでした。

きつねのこは、うさぎの子とくまの子にばけつのことを話しました。
三匹はばけつをかこんで、「だれのだろう」と考えましたがわかりません。

「1週間たって誰も取りに来なければきつね君のにすれば」
と、くまのこが言いました。

きつねのこは、もとあったところにばけつを置いて、
かようび・すいようび・もくようび・・・
と、毎日ばけつのそばへ来ては、一緒に過ごします。

1週間がたちました。
日曜日までそこにあったばけつですが、
はたして……


      


やさしい、なんでもない言葉で書かれた文章ですが、
どきどきしながら読みました。
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