BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説23-20「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-12-24 22:26:44 | ★ディスティニー第23章

「俺がこんな騒ぎを起こしたのに…」

慌てて諒は、

「いやそれは、その…麻也さんが入院したってことは問題にならないんだ。気にしないで」

「いやそんなこと…」

「いや本当にそれは大丈夫なの。

ただ時間があまりになさすぎるから今から俺達メンバーも動かなきゃいけないって言われたんだ」

「で、ライブはいつ?」

「来年のバレンタインデー」

「はあ?」

そこで諒はいいことを思いついて、含み笑いをしてしまった。

「うふ、俺は発想の転換って感じ。麻也さんのこの部屋から仕事に通…いや麻也さんがやるって言わなければドームの話はなくなるよ」

 急だし、夢みたいで…

 諒も混乱しているが、麻也はそれ以上に混乱しているようだった。

「何でまた急にドームなの?」

「棚ぼたなの…」

 諒はちょっとかわいこぶって言ってみた。

「たなぼた?」

少し麻也の様子が柔らかくなった。

 諒は少しほっとして、

「最初はね、ある外タレバンドがやるはずだったんだって。でもできなくなって、西園寺さんに話がきたんだ」

 ところが、西園寺ほどの大御所になるとスケジュールもセットも何もかも間に合わず…

「…周囲の人と話し合って、若手に譲ろうってことになって、それで俺たちを指名してくれたの」

 麻也は口をあんぐりと開けたままだ。

「なぜ…?」

「俺たちをかってくれたんじゃない? 直人は、すごく気に入られてるって話だし」

そして麻也の反論を閉じ込めるように、

「西園寺さんは、何を言われても、実力あるんだから気にするな、って言われたんだって」

「…実力か…」

麻也の繰り返したその言葉の重さが心配になって諒は、

「みんなが心配しているのは、やっぱり麻也さんの体だけだから。もちろん気持ちと言うか、心の健康状態も。ただドームは…」

そこで諒は泣けてきた。

「…でも麻也さんが連れてきてくれたドームなんだから、俺が最初に報告できて良かったとは思う…」

 そう言いながらも、どう言うのが正解なのか、どう決定するのが正解なのか諒にはわからなくなっていた。

 本当は麻也をドームに立たせたいが…

 するとようやく麻也が、

「諒が手伝ってくれるなら」

 かすかな笑みを浮かべ諒を見てくれた。その表情は諒が愛らしいと思えるものだった。

 しかし、麻也はすぐに困ったように目を伏せた。

 諒は驚きとまどって、でも嬉しくなって思わず麻也の腕を掴んでしまった。

「俺が手伝えるようなこと?嬉しいな」