アプリコット プリンセス

チューリップ城には
とてもチャーミングなアプリコット姫がおりました

赤穂事件 馬のもの言い事件 様子見

2022-04-02 10:29:40 | 漫画

            赤穂事件 馬のもの言い事件



佐々 宗淳(さっさ むねきよ) 寛永17年5月5日(1640年6月24日) - 元禄11年6月3日(1698年7月10日))江戸時代前期の僧、儒学者。水戸藩主徳川光圀に仕えた。史館総裁
物語『水戸黄門』に登場する佐々木助三郎のモデルとされている。

安積 澹泊(あさか たんぱく) 明暦2年11月13日(1656年12月28日) - 元文2年12月10日(1738年1月29日)江戸時代中期の儒学者。水戸藩主徳川光圀に仕えた。史館総裁
物語『水戸黄門』に登場する渥美格之進のモデルとされている。

佐々 宗淳
「なァ 格さん」
「そろそろ、儂も隠居しようと思ってのだが
史館総裁を辞任しようかなァ?」

安積 澹泊
「如何したんだい助さん」
「御老公様が隠居したからと言って
真似はないぞ!」

佐々 宗淳
「いやいや」
「実は、もう儂は長くないのだよ」

安積 澹泊
「ええェ」
「何だってんだい?」

佐々 宗淳
「酒の飲み過ぎかなァ」

安積 澹泊
「大日本史の編纂は御老公の勧め」
「逃げ出されてはこまるなァ」
「あっははは」

佐々 宗淳
「なァ 格さん」
「大日本史の編纂で死亡理由が欠如しておるが
理由は重要ではないのか?」

安積 澹泊
「んんゥ」
「分かってはおるが
大変な作業になるぞ」
「兎に角、大量の資料を仕分けして
分析する必要があるからな・・」

「ところで、江戸ではそろりころりが流行り
死人が山のように積み上げられておるそうな」
「悪い病だよ」

佐々 宗淳
「いやいや」
「それは、町民が腐った魚を食べた為の腹痛が原因じゃぞ」
「なにせ、江戸では新鮮な魚は販売出来ん」

安積 澹泊
「あのな、助さん」
「それは御老公には内緒にしてくれんか・・」
「江戸は今、狂っておる・・」

佐々 宗淳
「格さん」
「御老公は全て知っておるぞ」
「隠しても駄目じゃ」

安積 澹泊
「将軍綱吉様は御老公を如何するつもりかなァ」

佐々 宗淳
「如何するって?」

安積 澹泊
「んんゥ」
「御老公は将軍に呼ばれているのだが
江戸に行こうとしないのじゃぞ」
「隠居が認められたら赴くと申された
「隠居が許された後も
まだ、静養地におられる」
「西山荘で大日本史の完成させる為に
邁進しております」

佐々 宗淳
「あっははは」
「儂も、同様」
「儂も、先が無い」
「やりたいことをやる事ですよ」
「やり残せば、後悔する」

安積 澹泊
「何だい!助さん」
「お主、長生きするぞ!」


           赤穂事件 馬のもの言い事件 狙われる者




土屋政直 (老中)
「儂以外にも狙われたものがおるのか・・」

浅野 長矩 (浅野内匠頭)
「はい」
「増山兵部殿が犬に襲われ
其の犬を切り殺しました」
「家来が身代わりとなり、その犬を切り殺した罪で切腹」
「更には、土井信濃守が
犬をたたいて撃退しました」
「あろうことか、その事を密告する者が現れ
やもなく、土井信濃守中間を身代わりとして
中間は犬をたたいた罪で扶持を奪われました」

土屋政直
「その者たちを襲った者が
儂を襲ったのか?」

浅野 長矩
「恐らく・・左様に御座いましょう」

土屋政直
「目星は?」

浅野 長矩
「指南役で御座います」

土屋政直
「指南役?」
「誰か?」

浅野 長矩
「まだ、確証は御座いません」
「ただ、指南役は名ばかり
今は、犬の調教を熱心にしておるようで
上様の信認を得ております」

土屋政直
「面倒な奴じゃな・・」
「ところで、其方は魚を食べておるのか?」

浅野 長矩
「いいえ」
「魚は口にしておりません」
「魚も、鳥も、貝も、売り物は
皆、変な匂いがしております」

土屋政直
「気を付けた方が良いぞ」
「腹痛で死人も出ておる」

浅野 長矩
「それから、市中町民に不穏な動きが御座います」

土屋政直
「おおォ」
「それは、無理もない」
「しかし」
「収めねばならんな・・」

浅野 長矩
「多々越甚大夫(旗本・秋田采女季品の家臣)が、徳川家綱の命日である6月8日に、吹矢で燕を撃ち、5歳児の病気養生に食わせたため死罪。これに参加した同僚の山本兵衛は八丈島へ流罪」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
この様な事が御座いました」
「市中町民は憤りを隠せません」

土屋政直
「町民の不満が溜まり
爆発するかもしれんな」

浅野 長矩
「左様」
「火事も頻発しております」

土屋政直
「ああァ」
「それと」
「噺に
気掛かりが御座る」
「少し、調べて見なければならん」

浅野 長矩
「堺で流行っている歌舞伎で御座いますな」
「江戸に伝わり、落語として噺が広まっております」




  
           赤穂事件 馬のもの言い事件 座敷仕方咄





鹿野 武左衛門 (落語家)
「今日は、火消し名人の赤穂守様に招かれし落語家の武左衛門」
「どうぞよしなに、御贔屓下さいませ」

浅野内匠頭 (播磨赤穂藩の第3代藩主)
「おおォ」
「其方の落語は人気と聞く」
「なんでも、上方の歌舞伎を題材にしているそうな」

鹿野 武左衛門
「落語家の噺は歌舞伎のように大人数は必要御座いません」
「一人で全ての役目を、
このように扇子やらの小道具を使って面白可笑しく演じて
多くのお客様に親しまれております」

浅野内匠頭
「上方では、馬がものを言うそうじゃな」

鹿野 武左衛門
「それは、切狂言の余興で御座いましょう」
「馬役は新人の端くれで御座いますが
芝居の最後に自己紹介をするために
馬から顔を出して嘶くので御座います」

浅野内匠頭
「あっははは」
「いゝん と嘶くのか?」

鹿野 武左衛門
「ひいーん と嘶く者もおります」

浅野内匠頭
「しかし、嘶くだけでは
馬がものを言う事にはならんぞ」

鹿野 武左衛門
「さあ?」
「何か台詞がありましたか?」
「落語家には斯様な事は存じ上げません」

浅野内匠頭
「例えば、上様の御触れを読み上げたりはしないのか?」

鹿野 武左衛門
「斯様な事で御座いますか」
「それは、偉いお武家様の指示があれば
斯様な事も余興に追加されるかもしれませんが
落語家に上方の事は、知る由も御座いません」

浅野内匠頭
「では、其方の落語でも馬がものを言うのか?」

鹿野 武左衛門
「落語家の噺は、
面白おかしく聞かせる事に主眼を置いておりますから
馬も人も御座いません」
「馬にひひーんと嘶かせることも出来ますし
馬にひいーんと嘶かせる事もあります」

浅野内匠頭
「いやいや」
「馬に言葉をいわせる事も有るのかと聞いておるのだ」

鹿野 武左衛門
「それは、余興で御座います」
「余興では馬役が挨拶をするので御座います」

浅野内匠頭
「いやいや」
「其方が恐れているのは分かった」
「儂は、其方が心配だから申しておるのじゃ」
「馬にせよ何にせよ
生類憐みの令を批判するような事をいわせては為らんぞ」

鹿野 武左衛門
「おおおォォ」
「滅相も御座いません」
「決して、口に出してはなりません」

浅野内匠頭
「よし」
「儂は、火消しと兼ねて斯様な事もしておるのだ」
「今回は、厳重注意に 留め置く事とするが
決して、幕府を批判するような事の無いように」
「申し付けたぞ!」

鹿野 武左衛門
ーー畏まるーー

浅野内匠頭
「其方の芸は、大衆に受けが良い」
「大衆に大きな影響を与えるのじゃぞ」
「馬に変な事を言わさぬ様に以後
気を付けるのじゃ」

鹿野 武左衛門
「はい」
「肝に銘じております」



          赤穂事件 馬のもの言い事件 吉良は良い人



吉良上野介(高家肝煎)
「水戸の黄門様は隠居が許され
貴方は、引き続き水戸の3代藩主・綱條様に仕え
大老になるという」
「良き事で御座る」

藤井紋太夫(水戸家老)
「ほォー」
「よくご存じで・・」
「御老公は大日本史編纂に心頭滅却で御座る」
「水戸守の事は我ら家老に全て託された」

吉良上野介
「目出度き事じゃな」
「そうそう」
「今回は、其方を茶会に招待したい」
「こう見えても、儂は文化人なのじゃ」
「和歌やら禅も嗜んでおるぞ」

藤井紋太夫
「いやいや」
「某は、左様なことには馴染まぬ無骨者で御座る」
「茶よりも、酒が良い」
「和歌や禅よりも、芝居や祭りが良い」

吉良上野介
「おおォ」
「そうじゃ」
「一度、落語を鑑賞したいと思っておった」
「面白おかしく噺を聞かせるそうじゃぞ」

藤井紋太夫
「おおォ」
「落語家を呼んで
座敷で酒盛りも良いな」

吉良上野介
「いやいや」
「これは、大変な事になったわい」
「あっははは」

藤井紋太夫
「これはこれは」
「では、楽しみにしておりますぞ」

吉良上野介
「して」
「少しばかり気掛かりが御座る」

藤井紋太夫
「ほォ」
「何で御座る?」

吉良上野介
「御犬の躾じゃ」

藤井紋太夫
「指南役は犬の調教もされているとか?」

吉良上野介
「んんゥ」
「その事、誰に聞いた!」

藤井紋太夫
「いやいや」
「犬の躾と申されたので
てっきり、調教もなさっておるかと・・」

吉良上野介
「躾をするのは、赤穂守じゃ」

藤井紋太夫
「ほォ」
「赤穂守は御犬で御座るか?」

吉良上野介
「左様」
「赤穂守は子犬であったが
躾が遅れて成犬となった」
「何故、遅れたか知っておるな!」

藤井紋太夫
「あれあれ」
「某が、その訳を知っていると・・・?」

吉良上野介
「水戸黄門様が偽の遺言を盾にして
妨害しておるのじゃぞ」

藤井紋太夫
「しかし」
「御老公は西山荘に籠り、
江戸に赴く事は御座いませんぞ」

吉良上野介
「貴方が偽の遺言を保持しておるのか?」

藤井紋太夫
「あっははは」
「何を申すかと思えば」
「偽の遺言など陰謀で御座る!」
「変な噂を信じてはなりません」

吉良上野介
「上様は、お怒りに御座る」
「西山様が早く江戸に参る事をお勧め致しますぞ」



         赤穂事件 馬のもの言い事件 吉良の権力



柳沢吉保
「水戸の隠居は、上様の命令を無視しておる」
「如何したものか?」

吉良上野介
「はい」
「手は打っておのますぞ」

柳沢吉保
「早くおびき寄せて、誅殺するのだ」

吉良上野介
「左様な、野蛮な事は
目付にさせるとして」
「朝廷行事が滞っておりますぞ」
「行事指南は儂の役目
側用人は、上様に働き掛けて
行事を遂行する様に頼んでみては如何じゃね」

柳沢吉保
「んんゥ」

「上様は、多忙ゆえ
今は、左様な行事式典は為さらぬ」
「待て暫し」

吉良上野介
「おやおや」
「上様は余興を楽しみにしておりましたぞ」
「多忙とはいえ、お楽しみを破棄なされますか?」

柳沢吉保
「左様か?」
「如何様な、お楽しみの余興がな?」

吉良上野介
「上様は、長らく我慢をして、毎日忍耐を持って耐えて御座った」
「全て、あの光圀が悪いのだ」
「光圀の妨害で、上様は長らく苦しみ怯えておった」
「上様の望みを叶える事は
何よりの忠義で御座いますぞ!」

柳沢吉保
「おおおォ」
「左様」
「上様の望みは何じゃ?」

吉良上野介
「あっははは」
「其方は、側用人であろう」
「上様の望みも知らんと言い」
「上様の御楽しみも知らんのか!」
「だっはははは」

柳沢吉保
「おおおォ」
「左様」
「左様な意地悪を言うな」
「なっ」
「教えてくれ」

吉良上野介
「よしよし」
「では、教えて遣わす」
「上様の望みは
赤穂の犬千代を躾て、御犬とする事じゃ」
「そして、お楽しみの余興は
その御犬のお披露目式じゃぞ」
「がっはははは」

柳沢吉保
「何だ・・」
「左様な事か・・」

吉良上野介
「おおォ」
「教えて使わせたのに
何だとは何だ」

柳沢吉保
「いやいや」
「上様の望みが斯様な事は承知しておる」
「別に、特別な話ではなかったから
がっかりして腑抜けてしもうたぞ」

吉良上野介
「左様か・・」
「つまらん事を申したな・・」

柳沢吉保
「兎に角、光圀を誘き出すのじゃ」
「上様は、お怒りぞ!」

吉良上野介
「はいはい」
「誘き出す手筈は御座いますぞ」

柳沢吉保
「おおおォ」
「如何する?」
「また、がっかりさせるなよ」

吉良上野介
「あのな」
「馬のもの言いじゃぞ」


           赤穂事件 馬のもの言い事件 吉良の御犬事件



吉良上野介
「上様から授かった大切な御犬がおらんようになってから
もう、数年となるな」
「其方は、責任を感じていないのか!」

浅野内匠頭
「また、其の事で御座いますか・・」
「家老・大石良重が申していたのは
其方が犬を捨てに来たとの事で御座る!」
「勝手に、我らが屋敷に犬を捨てに来て
居なくなったと申し
しつこく付き纏うのはお止め頂きたい」

吉良上野介
「あの御犬は、上様が大切に為されていた
特別な御犬じゃぞ」
「居なくなったでは済まん!」

浅野内匠頭
「もう、天和三年の事、十年近くたっている」
「家老・大石良重は其方の菓子を食って死んだのだぞ!」

吉良上野介
「おおおォ」
「儂が殺したと申したな!」
「左様な事、無礼極まりなき事」
「何をもって、儂を疑う!」
「儂の権力を侮るなよ!」

浅野内匠頭
「国許の大石良雄は、其方を太き棒で打ち据えてやると
息巻いておった」
「お主、毒入りの菓子を使い
家老・大石良重を殺したのであろう!」

吉良上野介
「アーぁ」
「如何でもよいわ」
「兎に角、其方は、犬となるのじゃ」
「上様の忠実な犬となれ!」

浅野内匠頭
「拙者は武士で御座る」
「拙者は、上様の忠実なる家来で御座る」
「犬に為れとは、如何なる意味で御座る」

吉良上野介
「儂はな、高家肝煎の指南役じゃぞ」
「上様がお認めに為った地位じゃ」
「上様の御命令で、其方を犬として躾ける事が決定しておる」
「さァ、犬と為れ!」

浅野内匠頭
「んんゥ」
「・・・・・」
「如何したら良いので・・」

吉良上野介
「先ずは、光圀を江戸におびき寄せる事に
協力する事じゃ」

浅野内匠頭
「誘き出す?」

吉良上野介
「何も怖がることは無い」
「これも又、上様の御命令じゃ」

浅野内匠頭
「・・・・・」

吉良上野介
「上様の御命令に逆らうつものか!」
「ほれ、犬!」
「儂に跪け!」
「こら、頭を垂れ
平伏しろ!」

浅野内匠頭
ーーー平伏すーーーー

吉良上野介
「がっはははは」
「おい!犬」
「犬のように鳴け」
「ワンワンと申せ」
「キャンキャンと泣け」
「そうじゃ」
「犬と為れ」

「おい」
「犬!」
「光圀を江戸に誘い込む為に
落語家の 鹿野 武左衛門を利用するぞ」
「其方は、落語家に入れ知恵をして
光圀を煽るのじゃ」
「光圀が江戸に来るように
如何しても来なければ為らぬように嗾けるのじゃ!」

浅野内匠頭
「上様の御命令で西山様に江戸に参るように
申し付ける事が一番良い方法で御座る」

吉良上野介
「馬鹿者が!」
「上様は、もう十年近く待ち続けておられるのじゃぞ」
「光圀は、上様に逆らい
生類憐みの令に逆らい
上様に犬の死骸を送り付けたのじゃぞ」
「上様は怒り心頭に御座る!」

浅野内匠頭
「その役目は
某には重すぎます・・」

吉良上野介
「何を犬のくせに」
「犬としての自覚が無いのじゃな」
「上様に逆らうのじゃな!」

浅野内匠頭
「左様に犬犬と申されるな」
「拙者には武士としての誇りと意地が御座る」
「其方は、間違っておる」

吉良上野介
「んんゥ」
「まだまだ、躾が足りんようじゃな」
「これからは、犬としての躾を強化する」
「犬!」

浅野内匠頭
「無礼者!」

   赤穂事件 馬のもの言い事件 吉良の嫌がらせ




藤井紋太夫 (水戸大老)
「其方は、火消し名人として留守居番を拝命され
大いに期待されておる」
「儂の力など必用なかろうに・・?」

浅野内匠頭 (赤穂藩主)
「ただ今、留守居番役が空いております故
斯様に為っておりますが
左様な役職に任命されてはおりません」
「高家肝煎指南役が立ちはだかって嫌がらせを受けております」

藤井紋太夫
「今は、誰も彼も、ありとあらゆる人々が苦難を強いられておる」
「難儀であろうが、耐える事も必要じゃぞ」

「嫌がらせは酷いのか?」

浅野内匠頭
「是非、水戸の御老公様のお力を賜りたく参上致しました」

「今、某に指南役がしつこく纏わり付いております」
「我らの屋敷に犬を捨てに来るので御座る」

藤井紋太夫
「んんゥ」
「犬を捨てに来る?」
「放っておけばよいではないか!」

浅野内匠頭
「はい」
「拙者も、左様に思い
放っておいたので御座いますが
直ぐにお咎めが参りました」
「屋敷の前に御触れ書きが貼られ
犬を放置した者は名乗り出よとの事」
「上様を唆し、
御触れを出して罪を作り上げております」

留守居番与力山田伊右衛門、門外に子犬が捨ててあったのを養わず追放
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

藤井紋太夫
「んんゥ」
「儂が対処しよう」
「心配はいらんぞ」

浅野内匠頭
「実は、今一つお願いが御座います」
「・・・・・」
「昔の事で御座いますが、
指南役と饗応役を任命されたおりの事
我が屋敷に吉良が参りまして
犬を置いていったので御座る」
「その後、その犬が居なくなったと騒ぎ出し
大切な御犬を粗末に扱ったと騒いでおるのです」

藤井紋太夫
「はァー」
「左様な昔の話など放っておけばよい」

浅野内匠頭
「しかし、また、新たな御触れが追加されたので御座います」
「以前のことも罪に問われる事となりました」

生類憐みの令以前のことが罪に問われる。貞享3年(1686年)9月から同4年(1687年)2月まで持弓頭(城警備担当)の中根主税に捕えられ、牢舎入り。中根交代で身柄が後任に引き渡され、以下全員死罪となる。清兵衛・五郎左衛門・鮒屋市郎兵衛・善兵衛・勘兵衛、お堀で鯉鮒獲り、牢屋死罪。八兵衛、お堀の鯉鮒買い取り、牢屋死罪。安左衛門・仁左衛門・久兵衛、お堀で鯉鮒獲り、牢屋死罪後、獄門
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

藤井紋太夫
「心配はいらんぞ」
「儂に任せておけ」

浅野内匠頭
「それから、今一つお願いが御座います」

藤井紋太夫
「はァァーーァ」
「はァ」
「何じゃ・・」

浅野内匠頭
「水戸の黄門様に江戸に来て頂きたいので御座います」

藤井紋太夫
「御隠居は大日本史の編纂に身命を賭けておられる」

浅野内匠頭
「では」
「江戸には来て頂けないので御座いますか?」

藤井紋太夫
「いいや」
「必ず、江戸に来る」
「今の、江戸や諸藩の混乱の実情を知れば
庶民の苦しみを知れば
御隠居は助けに来る」
「必ず助けに来るから、待つのじゃ!」

浅野内匠頭
「では」
「水戸の大老様にお任せしても宜しいので御座いますか?」

藤井紋太夫
「何を?」

浅野内匠頭
「水戸黄門様を江戸に呼ぶ事に御座います」

藤井紋太夫
「ああァ」
「任せておけ」
「御老公は庶民の味方じゃ!」

浅野内匠頭
「肩の荷が下りました」
「有り難う御座います」
「この恩は、一生忘れません」

藤井紋太夫
「大袈裟な奴じゃ」
「あっはははは」

浅野内匠頭
「はは・・」


     赤穂事件 馬のもの言い事件 何を言わせる?




鹿野 武左衛門 (落語家)
「先だっては播磨の赤穂様がお越しなされ
今日は、水戸の大老様とは
これはこれは、斯様な落語家に
如何な御用が御座いますか?」

藤井紋太夫 (水戸大老)
「いやな」
「其方の噺を聞きに来た」
「落語をきかせてくれ」

鹿野 武左衛門
「左様に御座いますか」
「では、武助馬をおひとつ」

武助はうだつが上がらない大根役者
それを気にかけた旦那が声をかけた。


旦那
「武助よ何か役は貰ったのかい」

武助
「いゃーァ」
「嬉しいったらありゃしない」
「歌舞伎の演目で一谷嫩軍記でさァ」
 
旦那
「ほーォ」
「さりャァーてえェーしたもんじゃ」
「ところで何の役をする?」

武助
「馬での取っ組み合いの場面に
手前も出る事になりあした」
 
旦那
「しかし、その場面には役者はあまり必要ないぞ」

武助
「へェ」
「手前は、馬の後ろ脚を演じるで是非ご覧あれ」
「大将乗っけて走り回りますんで
皆さんとご一緒に応援に来てくださいませ」

旦那
「おめェーの晴れ舞台じゃ
大勢引き連れて声援するぞ」


芝居当日となりました。

馬の前足は芸歴十三年の老練者の熊さん

熊さん、余裕で酒を飲みふらふらになって演じている。
馬の前足の熊さんは良い気持ちに為って
馬の中でおならをこいた。
後ろ足の武助は臭くてたまらない。
一生懸命大将を担ぎ、演技していると
今度は、旦那とその店の者が応援する声が聞こえて来た。
「馬の後ろ足はいいねぇ」
「馬の後ろ足はうまいよ」
「いゃーァ、最高の演技だ!後ろ足」
武助は嬉しくなって飛び回る
終いにはヒヒィーンと嘶いて、芝居はもう滅茶苦茶になったんだ。

大将役の親方
「おい、今日の演技は何じゃ!」
「ひでェー演技しゃーがってこの後ろ足!」

武助
「いやァーあ」
「ついつい、声援が嬉しくて跳ね回ってしまいました」
「振り落とされたら大変ですね」

親方
「そうじゃねェー」
「おめェー
後ろ足のくせに鳴きやがったな!」

武助
「でも親方」
「熊さんは、前足のくせに
おならしましたよ」

「お粗末で御座いました。これが武助馬で御座います」

藤井紋太夫
「ほォー」
「左様な噺か」
「斯様な噺は初めてじゃ」
「大衆受けする筈じゃな」
「落語は今後流行るであろう」

鹿野 武左衛門
「有り難うございます」
「水戸の大老様のお墨付きに御座います」

藤井紋太夫
「ところで、其方に頼みがある」
「御触れが事細かく出されておる」

生類憐みの令
「捨て子は届けなくてよい。望むものにあげてよい。金銭は不要」「鳥類、畜類を人が傷つけたら届けなさい。とも食い、自ら痛みわずらう時は届けなくてよい」「主なき犬、居つかないように食べ物をやらないのは不届き。左様にしてはならない」「飼い置いた犬が死んでも別条なければ届けなくてよい」「犬に限らず、生類、人々、慈悲の心を元としてあわれむことが肝要である」出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

「儂は、大衆から苦情を受けておるが
その真意は不確実でな」
「大衆の真意を知りたいのじゃ」
「協力して貰えんか?」

鹿野 武左衛門
「落語家は、何も出来ません」
「決められた噺を面白可笑しくするだけで御座います」

藤井紋太夫
「噺のなかに
大衆の真意を問いかける内容を入れて欲しいのじゃ」

鹿野 武左衛門
「残念ですが
左様な事は承諾できません」
「噺はあらかじめ決められております」

藤井紋太夫
「其方に迷惑は掛けん」
「儂が全ての責任を負うぞ」
「頼む!」
「民は西山様に縋っておるのじゃ」

鹿野 武左衛門
「水戸の黄門様の話を入れて欲しいと申されますか?」

藤井紋太夫
「左様」

鹿野 武左衛門
「如何様な事で御座いますか」

藤井紋太夫
「生類憐みの令は庶民を苦しめておる
此の実情をしれば
水戸の御老公は立ち上がる筈」
「御老公は将軍綱吉様の生類憐みの令を批判なされた」
「御老公は将軍綱吉様に犬の毛皮を送り付けたのじゃ」

鹿野 武左衛門
「・・・・」
「本当に、某に罪を被せないと約束して貰えますか?」

藤井紋太夫
「もちろん」
「武士の威信にかけて
某の命と引き換えにしても
庶民の困窮を救いたいのじゃ!」
「庶民の真意を知らしめ
天下の悪法を取り除く事ができれば
我が命、惜しくは有りませんぞ!」

鹿野 武左衛門
「おおおォ」
「何と恐れ多い」
「この落語家には大変に荷が重き事」
「お許しください」

藤井紋太夫
「いいや」
「為らん!」
「もしも、断ると申せば
其方を切らねば為らん」
「此の事を知られたからには
断る事は出来ん」

鹿野 武左衛門
「落語家を切ると・・」

藤井紋太夫
「如何じゃ!」
「すればよし、
断れば切る!」

鹿野 武左衛門
「あああァ」
「しっこが」「あァ ちびった」

藤井紋太夫
「ちびっても駄目じゃぞ!」

鹿野 武左衛門
「うううゥ」
「どうしても駄目なの?」

藤井紋太夫
「諦めろ!」



          赤穂事件 馬のもの言い事件 隆光への帰依



木下順庵
「上様」
「順庵が参りました」

将軍綱吉
「順庵」
「近う寄れ」

「其方の仁の教えを徹底して
儂は、不思議と怯えが収まった」
「しかし、又、ぶり返す予感がするのじゃ」

木下順庵
「隆光へ帰依為されましたか」

将軍綱吉
「其方は、呪術を知らん」
「隆光は、儂の助けになる」

木下順庵
「では、学問は如何に致しますか?」
「学問は終了致しますか?」

将軍綱吉
「いや」
「そうではない」
「儂は、又、怯えがぶり返すのではないかと
心配しているのじゃ」

木下順庵
「上様の、不安を払拭する必要が御座います」

将軍綱吉
「其方に、左様な事が出来るのか?」
「隆光は呪術を使い
儂の不安を取り除く事に成功したぞ」

木下順庵
「しかし、まだ、
上様はぶり返しを心配為されております」

将軍綱吉
「左様」
「だから、其方に教えを乞うておるのじゃ」

木下順庵
「上様の不安を掻き立てている根本原因を
排除する事以外には
上様に安らぎは御座いません」

将軍綱吉
「だから」
「お前の言う通り
仁を大衆に広めておるのじゃろーが!」
「何で心の平安が無いのじゃ!」

木下順庵
「上様を苦しめているのは
上様の命令を無視している者がいるからで御座います」

将軍綱吉
「ガるるゥ」
「光圀か!」
「おのれェー」
「光圀!」

木下順庵
「光圀が健在であるかぎり
上様に平安は御座いません」

将軍綱吉
「しかし」
「光圀は、隠居して西山荘に籠り
再三の申し付けを無視して
江戸に来ることを拒否しておる」
「無理に誅殺する事も出来ん」
「如何すればよい!」
「答えろ!」

木下順庵
「少々、手荒な事を考えねばなりません」
「先ずは、光圀を江戸に呼びつける方法ですが
封印されております兵法三十六計
瞞天過海でおびき寄せるの御座います」

将軍綱吉
「んんゥ」
「どうやって、光圀を安心させるのじゃ!」

木下順庵
「はい」
「今、巷で流行っております落語を大いに利用致します」
「最近、落語で光圀の話題が取り上げられており
密かに庶民に浸透しております」
「上様は、この事に気が付かぬ振りをするのです」
「そうすれば、庶民は安心して
光圀の話題をする事になりましょう」
「庶民が安心して会話を広めている状況で
光圀が西山荘に引き籠っておるようでは
情けない奴じゃと申せば良し」
「もし、江戸にのこのことやって来るようならば
誅殺する機会は幾らでも御座います」

将軍綱吉
「兵法三十六計瞞天過海か!」
「其方は兵法も学んでおるのか?」

木下順庵
「いいえ」
「これは、基礎で御座います」
「あくまでも、上様の心の平安を達成するための
道具に過ぎません」
「多用は厳禁に御座います」
「多用すれば、諸刃の剣となりましょう!」

将軍綱吉
「よし」
「帥に任せる」
「しかし、失敗すれば
其方の首は飛ぶぞ!」
「絶対に失敗は許さん!」

木下順庵
「はい」
「お任せ下さい」

将軍綱吉
「んんゥ」
「おい」
「大村加トは如何した?」

木下順庵
「はい」
「上様を不安にする証人となる者ですな・・」
「その者も、光圀が現れれば
きっと、姿を見せるでしょう」

将軍綱吉
「絶対に、やれ!」


     赤穂事件 馬のもの言い事件 楽あり苦あり



徳川光圀
「江戸に赴くから供をいたせ」

佐々 宗淳 (介三郎)
「はい」
「準備致します」

安積 澹泊 (覚)
「承知致しました」

「中納言様」
「お出かけは、お急ぎで御座いますか?」

徳川光圀
「江戸が俄かに騒がしくなってきたから
落ち着いて、大日本史編纂などてしはおれん」
「江戸に行って、問題を片付けて来ねば為らん」

佐々 宗淳 
「では」「今暫くお待ち下さい」
「江戸の問題を明らかにして
問題解決の指針を明らかにせねば
闇雲の行動と為りましょう」

安積 澹泊 
「御老公は、西山荘に留まり
我らが偵察に行くのが先決では
御座いませんか?」

徳川光圀
「江戸には既に水戸の大老が潜入しておる」
「江戸の様子は事細かに連絡を受けておる」
「もう、偵察など意味は無い」

佐々 宗淳 
「恐れながら申し上げます」
「御老公は将軍の命令で江戸に来るように申し付けられていましたが
多忙を理由に拒否しております」
「これは、将軍の罠ではないかと思われます」
「迂闊に、江戸に行けば
御老公に危険が及びます」

安積 澹泊
「某も、同じ意見で御座います」
「御老公に何かあれば
幕府は転覆するかもしれません」

徳川光圀
「儂が一人死んだとしても
幕府が転覆する事など無いぞ」
「儂の命と、この国の多くの庶民の命
天秤にかけてはならん!」

佐々 宗淳 
「では」
「問題を共有する必要が御座います」

安積 澹泊
「そうですとも」
「御老公を危険に晒すことは出来ません」
 
徳川光圀
「そのように、大騒ぎをするな!」
「大袈裟すぎるぞ!」

佐々 宗淳 
「しかし」
「もしも、将軍綱吉様が牙を向いてきたら
如何致すので御座いますか?」

安積 澹泊
「そうですとも」
「もう、ワインもチーズも飲み食いできませんよ」
「御老公は江戸に行っても
肉を食べる御積りですか?」

徳川光圀
「馬鹿を言え!」
「儂が肉を食ったとして
あの者が儂を咎めることが出来ようか!」

佐々 宗淳 
「今、江戸には腐った肉しか手に入りませんよ」
「お腹を壊したら大変で御座います」

安積 澹泊 
「魚も貝も、何もかも
腐っております」
「そして、辺りは野良犬がのさばっております」
「もしも、野良犬に襲われたら如何するので御座いますか?」

徳川光圀
「あれは」
「儂を野良犬の餌食にする覚悟があるのかのォ」

佐々 宗淳
「しかし、もしも江戸に行って
綱吉様を愚弄すれば
御隠居とてただでは済まぬと・・」
「我らは、大変心配しております」

安積 澹泊
「左様」
「やはり、おとなしく
西山荘で静かにお暮し下さい」
「我らが、御隠居の身代わりとなります」

徳川光圀
「儂は、もう年じゃ」
「もう、心配は要らん」
「あの者の戒めは必要じゃぞ」
「ことごとく、大老なり老中が粛清され
残ったのは儂一人となった」
「儂が最後の砦となった」

佐々 宗淳 
「いっそ」
「御老公が天下を治めては」

安積 澹泊 
「我らも、民衆も
御老公に期待しております」

徳川光圀
「二度と、左様な事を申すな!」
「天下を脅かす賊になっては為らん」

佐々 宗淳 
「ご無礼、お許し下さい」
「以後、左様な事を申す事は御座いません」

安積 澹泊
「お言葉を、強く受け止めました」



          赤穂事件 馬のもの言い事件 落語解禁




鹿野武左衛門
「全て、馬の戯言でありまして」
「馬のもの言いで御座る」
「次々と、生類憐みの令が発令されておりますなァ」
「これは、公方様の優しい心根の表れ」
「皆で、労わりの心を持ち
公方様は
弱きを助け強きを挫くけと申された」

芝居小屋の客
「おいおい!」
「馬は何を言いたいんだ!」
「もっと、もの言いがあるだろーが!」


「そうだ、そうだ」

鹿野武左衛門
「あれあれ」
「何かご不満でも」
「落語家は何も話してはおりません」
「これは、全て馬の戯言で御座い」


「おい 馬!」
「馬は、もの言い無罪じゃぞ!」

鹿野武左衛門
「馬がもの言い」

馬の後ろ足
「公方様は 仁を貴び
生類を憐れめと申され
馬や牛が病気になっても捨てては為らぬとの御触れ
病気の生類は手厚く介助しなさいと申された」
「公方様は、お優しい偉い御方」

馬の前足
「真に、そうじゃ」
「人子にも手厚い!」

ある客
「嘘、嘘」


「誰だい、嘘なんて言ってんのは」

他の客
「あっははは」「野次がいいねェー」

鹿野武左衛門
「公方様は綺麗好き」

馬の後ろ足
「公方様は優しい御方
鳥も労わります」
「ですから、鳥を傷つければお咎めです」
「ましては、食べたりなどすれば
獄門となりますよ」

馬の前足
「そうそう」
「公方様は優しい御方
そしてね綺麗好き
だからさァ
公方様に糞を落としたカラスを島送りにした」

ある客
「おおおォ」
「いいぞ」
「その調子!」


「あっははは」
「カラスを島送り!」

「公方様に糞を落しカラス八丈島に島流し」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


「おーい」
「落語家!」
「あんまし、調子こいてたら
おめーも島流しになんぞ」

他の客
「きゃははは」
「落語家が島流し!」

鹿野 武左衛門
「はいな」
「落語家が島流しになっても笑い種」
「でもね」
「天下の副将軍
中納言水戸黄門様が落語家を庇っておりますので」
「斯様な落語家如きを
かの水戸の大老紋太夫様が御贔屓とある」
「更には、水戸黄門様は
静養地の西山荘を御出になり
江戸に向かっておるのです!」

前席の客
「おおおォ」
「そいつッァー凄い」
「天下の副将軍のお出まし」
「世紀の対決とあらァ~」

中席の客
「煽るな、煽るな!」

満場の客
「がはははー」
「すげェー」
「こいつは、面白い!」


     赤穂事件 馬のもの言い事件 隆光と順庵




木下順庵
「光圀が江戸に向かっております」
「兵法三十六計 瞞天過海で光圀は油断しております」

将軍綱吉
「んんゥ」
「隆光は呪術でおびき寄せたと申しておるぞ」
「何方が正しいのかのォ」

木下順庵
「某の策に嵌ったのだと思います」
「ところで、隆光殿は光圀誅殺の秘策は御座いますか」

将軍綱吉
「隆光は、呪術で呪い殺すと申しておる」

木下順庵
「光圀は呪術では倒せません!」
「現に、光圀は生きております」
「呪術が効いておれば
少しは弱っておってもよいもので御座います」

将軍綱吉
「隆光がな
遠く離れた相手には
効き目が弱いのだと申しておる」
「だからな
江戸に来れば呪術が効いて
ころりと死んでしまう筈」

木下順庵
「いいえ」
「兵法三十六計 調虎離山が効果的に御座います」
「光圀が江戸屋敷に入れば
守りが固まります」
「江戸に入る前に、誅殺するのです」
「我らにとって都合のよい絶好の機会が訪れたのです」
「守りの堅い西山荘から、無防備な状況に
なった時が狙い目であり
難なく、光圀を誅殺することが出来る筈」
「ご決断下さい」

将軍綱吉
「んんゥ」
「しかしなァ」
「光圀を安心させたのは良いが
光圀の力が増大しておるぞ
其方は、光圀の力を侮っておるのではないのか?」

木下順庵
「いいえ」
「光圀が江戸に入り
そのまま何もせず機会を待っておれば
我らにとっては、不利な状況になります」
「出来るだけ早く、行動を起こす事が肝要と」

将軍綱吉
「呪術で始末する方がよいと思うが・・」

木下順庵
「呪術が勝つか、我が兵法が優れておるのか
選ぶのは、上様で御座います」

将軍綱吉
「んんゥ」
「儂は、隆光の呪術を試したい」
「無防備な光圀を襲うのは気が進まんなァ」

木下順庵
「もしも、光圀が謀反を起こし
上様を始末しようと考えていたら
如何致しますか?」

将軍綱吉
「あああああァ」
「それを申すな!」
「怯えがぶり返すではないか・・・」
「おおおェ」

木下順庵
「上様を救えるのは
この順庵だけで御座います」
「隆光は無力で御座います」

将軍綱吉
「んんゥ」
「しかしなァ」
「儂の怯えを取り除いたのは
隆光の除霊によるもの
隆光は呪術を使えるのじゃぞ」

木下順庵
「上様の怯えを葬ったのは
朱子学の仁による効果で御座います」
「除霊では御座いません」

将軍綱吉
「んんゥ」
「でもな」
「やはり、無防備とはいえ光圀の事
それなりの防御はしておる筈
儂が手を下した事が露見しては
困るぞ」

木下順庵
「いえいえ」
「上様に迷惑が掛かる事など決して御座いません」
「念の為、光圀を始末した者も
生きて返すこともは御座いません」
「全ては、闇の中でひっそりと行われます」

将軍綱吉
「やはり、それは止めておく」
「光圀は江戸に来るのだから
少しは、あの者の話を聞いてみるのも悪くない」
「最悪、光圀が帰る時を襲っても遅くないぞ」

木下順庵
「左様に御座いますか」
「残念ですが、隆光殿の呪術にお任せいたします」

将軍綱吉
「左様」
「強行は気が進まん」
「気が滅入る・・」





       赤穂事件 馬のもの言い事件 八百屋の財力



筑紫園右衛門 (浪人)
「魚を採って来たんぞ!」
「買ってくれ」

八百屋の惣右衛門
「何時も済まんな」
「もう、新鮮な魚は手に入らん」

筑紫園右衛門
「腐った魚など食べておったら
腹痛になって、そろりとコロリとなるでな」
「病気で死んだ魚など食べてはならん」

八百屋の惣右衛門
「気お付けておくれよ
魚を採っているところを見つかれば
打ち首、獄門じゃ
売っている八百屋も只では済まんでな」

筑紫園右衛門
「八百屋で、魚を売るとはな」
「はっははは」

八百屋の惣右衛門
「いやいや」
「魚屋は廃業になっている
腐った魚を売って
食べた客がころころと死んでおる
毒の魚など売れん」

筑紫園右衛門
「全くじゃ」
「新鮮な魚が食べれんのじゃったら
庶民は皆、病気になる」
「そろりころりと死んでいく」

八百屋の惣右衛門
「なァ」
「ところで、惣右衛門殿」
「落語を知ってるかい」
「落語家の鹿野武左衛門てェ者がやってんだけど
えれェー人気じゃぞ」
「何でも、水戸の大老がお墨付きを与えたそうじゃ」

筑紫園右衛門
「知らねェー」
「儂は、大衆娯楽なんざ興味はねェーいな」
「今は、密かに魚を採ることが
一番面白れェーいや」

八百屋の惣右衛門
「なァ」
「どっち道、危うい事をするんじゃったら」
「もっと儲かる事をしねェーか?」

筑紫園右衛門
「馬鹿を言え」
「これ以上危うい事は、御免被る」

八百屋の惣右衛門
「貴方も浪人は辛かろう」
「水戸家老に仕えてみては如何じゃ」

筑紫園右衛門
「誰に?」

八百屋の惣右衛門
「水戸の大老藤井紋太夫様じゃ!」

筑紫園右衛門
「がっははは」
「何を申すか!」
「名も無い、浪人が仕官できる相手では無いわ」

八百屋の惣右衛門
「いやいや」
「そうでもないぞ」
「落語家でも贔屓にされておる」

筑紫園右衛門
「何で?」

八百屋の惣右衛門
「水戸黄門様が世直しなされるからじゃ」

筑紫園右衛門
「ぎゃははは」
「馬鹿を申すな」
「水戸黄門が世直しなどするものか」
「天下の副将軍が儂などに目を掛ける訳がない」

八百屋の惣右衛門
「水戸黄門様が江戸に来るそうじゃぞ」

筑紫園右衛門
「左様か?」

八百屋の惣右衛門
「なァ」
「一発、勝負しねェーか!」
「派手に儲けよう」

筑紫園右衛門
「如何やって?」

八百屋の惣右衛門
「水戸黄門様が生類憐みの令を破棄するために
将軍綱吉様と対決する」

筑紫園右衛門
「はァ?」

八百屋の惣右衛門
「変な顔して、恍けなさんな」

筑紫園右衛門
「如何やって、
儲けるんだよ」

八百屋の惣右衛門
「私の言うようにすればいいよ」
「これから梅を大量に仕入れて
高値で売ってみせる」
「大儲け間違いない」





     赤穂事件 馬のもの言い事件 様子見



徳川光圀
「様子見じゃな」

佐々 宗淳 (介三郎)
「では、我らに任せて頂けるので御座いますか?」

安積 澹泊 (覚)
「ああァ」
「少し、安心致しました」
「一時は、如何なるものかと・・」

徳川光圀
「何を言っておる」
「江戸に赴くことを遅らせるだけじゃ」
「今は、様子見じゃ」
「急いでは為らん」
「貞享元年 水谷 勝宗(みずのや かつむね)備中国松山藩2代藩主が
外様大名から譜代大名に列せられたが
それは、大老堀田正俊に命じ
儂の意向で決定してのじゃ」
「そして、大老は粛清され
儂も狙われておる」
「今、備中国松山藩の状況は厳しいのじゃぞ」
「お主らに、分かるか!」

佐々 宗淳 (介三郎)
「では、備中国松山藩は御取り潰しに」

安積 澹泊 (覚)
「まさか!」
「父の勝晴どのが元禄6年10月6日に亡くなり
跡継ぎの水谷勝晴は同年11月27日に亡くなった」
「計画的なのですか?」

徳川光圀
「今、岡山藩は窮地にある
儂が江戸に赴けば
我らも巻き添えになるのじゃぞ」

佐々 宗淳 (介三郎)
「備中国松山藩は大老堀田正俊と
御老公の後ろ盾があるとの理由で
改易される危険があり」
「岡山藩と鳥取藩の池田は大老酒井忠清との
密接な関係を疎まられている」

安積 澹泊 (覚)
「確かに、我らが江戸屋敷に入れば
巻き添えになりますな」
「江戸への道中も危険で御座います」
「柳沢の手の者が
密かに監視しているとの報告が御座います」

徳川光圀
「やはり、ほとぼりが冷めてから行動する方がよい」
「暫く、静観する事じゃぞ」

佐々 宗淳 (介三郎)
「はい」
「それが、宜しゅう御座います」

安積 澹泊 (覚)
「はい」
「西山荘で、大日本史の編纂に勤しむ事が
宜しいかと・・」

徳川光圀
「なにやら、両名は嬉しそうじゃな」

佐々 宗淳 (介三郎)
「いえいえ」
「水戸は、特別で御座います」
「今、諸藩、江戸市中は大変な惨状で
疫病が蔓延し
米も不作となっており、
小作人が減少しております」
「諸藩では、疱瘡が猛威を振るっておりまして
大変に危険で御座います」

安積 澹泊 (覚)
「そうですとも」
「今、急いで江戸に行き
わざわざ、災厄に巻き込まれる必要は御座いません」

徳川光圀
「んんゥ」
「儂の動向を監視している柳沢の手の者が
如何するか見ておく事も必要じゃぞ」

佐々 宗淳 (介三郎)
「はい」
「承知しております」

安積 澹泊 (覚)
「御老公には危害は及びません」
「我らが、厳重に警護致します」

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