死神タナトスが悪魔姫ドルガの首をはねようとして、一瞬の間躊躇した時、コンマ6秒の空白が生じた。その空白に乗じて反乱軍を率いた魔性たちが精神世界に逃げ出してしまった。
それ以来、どうしたわけか神界と魔界のバランスにゆがみが生じていた。
(姿なき魔王よ)プルートゥが思念を返す。(責任とは、いったい誰の責任を問うている? 魔性どもに反乱させたのは、そもそもお主たちの罪。魔性どもを取り押さえられなかったのも、またお主たちの罪。そして、精神世界に逃げ出した魔性どもを追いかけられぬのも、お主たちの罪ではないか)
ユピテルとネプチュヌスが、プルートゥに一目置く理由が彼の交渉力であった。子供っぽさの抜けない彼らは相談ごとが苦手であった。同時に、魔界からの干渉を受けやすい精神世界を管理するプルートゥはありとあらゆる手段を尽くしての情報収拾に余念が無かった。
(相談事は責任を押し付け合うためではなかろう)プルートゥが続ける。(精神世界に逃げ出した魔性どもの対応を協議するためではないか?)
(魔界は厄介払いをした立場。神界こそ対応を誤れば一大事になるのではないか? 協力を求めるなら見返りは?)名なき魔王が思念を伝える。
(見返り? あやつらの行いいかんでは、神界の理のすべてが流れさり魔界の闇のすべてが切り裂かれるかも知れぬぞ)
(まずは、情報共有が最優先か・・・・・・)
(その通り。さあ、逃げ出した魔性どもの名を教えてもらおう)
(「殲滅しつくすもの」ジェノサイダス、「誘いをかけるもの」“ジル”・シュリリス、「虚無をかかえるもの」ビザード)
(・・・・・・なんとも剣呑な魔性たちがそろったもの)プルートゥが苦々し気に思念をもらす。(魔性たちの望みは?)
(魔界と神界の約束事を破って、人間共の夢の完全支配。あやつらの夢をすべて悪夢に塗り替え、戦乱と混沌、狂気と憎悪、嫉妬と愛欲の世界にすること)
(人間の夢すべてが悪夢になれば、中立地帯の精神世界がどうなるかはわかっているだろうな?)
(魔界と天界はつながり、精神世界は戦闘地帯となり人間たちは破滅への道を歩む。かつて人間たちを絶滅の危機に陥らせた「ファシストと呼ばれたもの」の原動力も猜疑心と凶暴な破壊衝動じゃった。本来、そうなれば魔界の住人には居心地のよい世界のはずだが、それも程度問題か。人類絶滅にいたっては、いたぶる相手がいなくなってしまう)
(わかっておるなら、魔界が魔性討伐のじゃまをしないことを要求する)
(大魔王サタンの名にかけて、魔性討伐のじゃまはせぬと約束しよう。だが、じゃまをしないことの見返りをいただこう)
(見返り?)
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