肉を持つ存在の訪れを拒み、精神体の訪れのみが許される場所。
マグマ層とつながる地中深くに存在する4次元空間タンタロス。
そこに冥主プルートゥが支配する王宮があった。
大広間には大魔王サタン率いる魔界の6軍団、その下の66大隊、そのまた下の各々6666の悪魔を擁する666小隊が、冥界の親衛隊長ドラクールとサラマンダーの女王ローラ率いる冥界親衛隊と争う場面が描かれている。
半透明の槍を操り輝く青い羽を拡げた軍師アルトロラーベと、一振りで千匹の魔物の首をはねる鎌を持つ黒い羽を拡げた大将軍スカルラーベ兄弟の姿も描かれている。
冥界中に、プルートゥの思念が響き渡った。
(我が足下にひざまずくがよい。これより魔性との討議の報告の儀を執り行う)
最高神と魔王たちの相談ごとが終わって、つかの間の休息を取ることもなくプルートゥと冥界の指導者たちの話し合いが始まっていた。
今宵、呼びつけられて右側に居並ぶのは「吸い取るもの」“ドラクール”こと、かつての大将軍ヴラド・ツェペシュ、妻で「燃やし尽くすもの」サラマンダーの女王ローラ。いつも通りヴラド・ツェペシュと並ぶときは、美しい人間の女性の姿を取る。
左に居並ぶは、彼らの長男で親衛隊の軍師「あやつるもの」アストロラーベ、次男で「荒ぶるもの」大将軍スカルラーベ。冥界の貴公子の呼び名があるアストロラーベは、あざやかな漆黒のマントと軍服に身を包む。ドクロで作られた鎧に身を包んだスカルラーベは、かつては不気味な髑髏の顔であったが四人の魔女たちとの闘いを経て、りりしい美丈夫に生まれ変わっている。
中央にいるのが、マクミラの後を継ぎ冥界最高位の神官となった双子の妹、白銀のマントに身をつつむ「鍵を守るもの」ミスティラであった。心やさしい性格が好かれて、吸血コウモリや黒猫、ジャッカル、八咫烏(やたがらす)などの使い魔(ファミリア)たちに囲まれている。
(アストロラーベ、本来なら今宵はお主の裁きが行われていた。あるいは、お主とタナトスの二人の裁きが行われていたと言うべきか?)
(なにも申し上げることは、ございませぬ)いつも通りのクールさだが、固い決意が伝わって来る。(いかなる処罰もあまんじて受ける所存にございます)
(よいのだ)
(は?)
(すべてはアポロノミカンに予言されていた通り。「新たなる終わりが始まりを告げて、すべての神々のゲームのルールが変わる」。最終的ゲームが始まる)
けっして興奮しないはずのプルートゥが、なぜか熱くなっていた。
(魔性たちとの闘いは、この宇宙の理を変える。だが、これは絶対悪との闘いでもある。真に恐ろしきは、絶対悪。ドラクール、お主はかつて「人間界で通じるのは『力』のみということ。善とは自分にとって都合がよいもの、悪とは自分にはむかうものに与えるべき名」と伝えた。絶対悪の存在を信じるか? もしも信じるなら、絶対悪とは何じゃ)プルートゥの矛先がドラクールに向いた。
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