まささん。
私の祖母。
小さな長屋に祖父と暮らしていた。
祖父が亡き後も
一人で暮らしていた。
まささん、亡くなった。
夫と、長屋に最後に行った帰り際、
玄関脇の道に咲いていた花を
思い立ったように、持ち帰った。
名も知らない花が、
私を呼んでくれていた。
土を掘り起こし、
家の植木鉢に植えかえた。
あれから20年以上、
毎年ピンクの花を咲かせてくれている。
花も草も枯れはて、
もうダメかな?と思っていても
春先に
芽を出してくれ、
元気な葉が育ち
そして、ピンクの花を咲かせてくれる。
今年も昨日咲いてくれた。
病院から帰る私を待ってくれていた。
毎年、夫と伝えあう。
「まささんの花、芽を出したよ」
そして
「まささんの花、咲いたよ!」
私、少し泣いた。
あんなにも大事に育ててもらったのに、
私は何もしてあげられなかったよな。
私が泣くと、
ワンコ、とんでくる。
「かまへんえ。
それより、体気をつけなあかんえ。」
そんなまささんの声が聞こえてきた。
しばらく我家の玄関で
まささんの花が
元気に咲いてくれる。