旧・鮎の塩焼キングのブログ

80年代を「あの頃」として懐かしむブログでしたが、子を亡くした悲しみから立ち直ろうとするおじさんのブログに変わりました。

冒険小説 ハテナの交竜奇譚 第2話その3 『ダンジョン・アタック前編』 〜《ウォーグ》の洞穴〜

2025-01-28 13:33:00 | 小説
亡き次男に捧げる冒険小説です。

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〇三

 おいおいと泣きじゃくるハーラ。話にならないのでテーリに話しかけた。

「置き去りにしたはずの愛馬レッドバロンが宿屋に繋がれていたんだとさ。奇跡だー!って号泣してるよ。」

やれやれというふうにテーリが首を振る。何をそんなに不機嫌なのかとナーレが問うと、テーリが口を開く前にハーラが口を挟んだ。

「違う!烈弩馬龍(れつどばろん)だっ!烈しい弩級の馬をも龍(ロン)をも超える存在なんだよ!もっと尊べよ!」

「なんか知らんけど、僕の発音や敬意のなさが気に入らないんだとさ。」

ナーレは心配して損したと、ぶつけた頭をさすりながら宿屋に戻った。

「貴族ってのはどうしてああも大袈裟で、芝居がかった物言いなんだろうね。人騒がせも甚だしい。」

 テーリやハーラと同じように、実はナーレも夢を見ていた。義兄弟なんて大仰な契約を結んだものだから、朝目覚めたら気恥ずかしさでモジモジしあう三人。よろしく頼むぜ兄貴、なんて軽口を叩きつつ照れ笑いをするナーレ。窓から差し込む旭を三人で眩しげに眺める。さあ冒険が始まるぞ、という高揚感に満たされた朝。そんな夢だった。

 現実は悪夢にうなされる次男分を慰め、長男分が取り乱して部屋を飛び出すのを追いかけるだけの格好のつかない朝だった。義兄弟の契りってどうやったら破棄できるのかな?などと不謹慎なことを考えながら、空いているテーブルについた。

「随分騒々しいお仲間さんだね。飯はどうする?」

《リザードフォーク》の男がぶっきらぼうに尋ねて来た。この宿屋の主人だ。煌びやかな鱗が眩しく傷一つない。危険な道を避けて真っ当に歩んできた証である。ああ、ここは東マータだったな、とナーレは改めて自分のいる地域を確かめていた。東マータには《リザードフォーク》や《トートル》のような《鎧う人》に属する人種が多かった。ナーレの故郷の南マータは交易に携わる《獣人》が多かった。地域差ってやつは面白いもんだ。ナーレはハーラのことを忘れて、宿屋の主人の顔をまじまじと見つめていた。

「やめろよ、坊主。まだお天道様が上ったばっかりだ。そんな目で見るない。」


見初められたと勘違いしたリザードフォークが顔を赤らめた。思わぬリアクションにナーレはげんなりとして、

「んなことはいいから、三人分、一番安い飯をちょうだいな。それと冷たいミルクを一つ。」

と朝飯を注文した。

「ミルク追加!」

「僕もだ…うぅ、奇跡に感謝…。」

タイミングよくテーリと引きずられたハーラが席に着いた。

「面倒臭い兄貴分だな。」

テーリがナーレに同意を求める。

「本当に。」

テー兄も義兄弟を嫌になってるんだろうなと自分と重ねながら、ナーレは深々と頷き無言で朝食が運ばれるのを待った。

 エントランスを兼ねる食堂、仕切りのない一階部分は相当な広さであった。机の間をのそのそと動き回る《トートル》の女給仕。急かしてもいいことはないな、とテーリは食堂を見渡した。奥に一組の老夫婦が座っている。朝食を摂りにきたのだろう。薄いパイ生地にジャムや練り物を塗って、黙々と食べていた。時折夫の口元を拭いている。甲斐甲斐しい奥さんだと感心しつつ、視線を隣のテーブルに移した。老夫婦と自分たち「義兄弟」以外の唯一の客。流し見るつもりが、視線が釘付けになった。ハーラとナーレも同じ相手を見て、あっと声を上げた。

「オデ(おれ)、お前たちの役に立ったな!」

《サンダー渓谷》の谷底で出会った《コボルド》がのほほんとした表情で、パイを頬張っていた。


【第2話 〇四に続く】

次回更新 令和7年1月30日木曜日


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妙に馴れ馴れしくて親切な《コボルド》。警戒する義兄弟がかまをかけると…。



冒険小説 ハテナの交竜奇譚 第2話その2 『ダンジョン・アタック前編』 〜《ウォーグ》の洞穴〜

2025-01-26 08:06:00 | 小説

亡き次男に捧げる冒険小説です。


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〇二

 ハーラは夢を見ていた。《年降る緑色竜》から逃げる為、馬で駆けていく夢だ。馬で…馬…。馬!《ゴール橋》の欄干に愛馬を繋いだままだったことを思い出す。すかさず飛び起き、ハーラは全力で叫ぶのだった。

「れつどばろーん!」

愛馬の名を叫ぶハーラ。事情を知る由もないテーリとナーレは目をパチクリさせている。

「レ、レツドバロン…とは?」

ナーレが恐る恐る尋ねると、ハーラはそれを無視してベッドから飛び出した。目にも止まらない速さで甲冑のアタッチメントを閉じていく。カチャカチャンと小気味良い金属音が響き、ハーラは武装をあっという間に終えた。


 ハーラは一言残して部屋を飛び出ていった。

「れつどばろんを迎えにいってくる。すぐ帰る。」

直後、稲妻が目の前に落ちたかのような轟音が響いた。ハーラが階段を転がり落ちた音だった。あ痛たたたたた、とハーラのか細い声が聞こえ、すぐにまたバタバタと走る音がした。

「ナーレ、ハー兄を追うぞ!」

慌ててテーリは革鎧に袖を通した。着古した馴染みの革鎧を手際よく締め上げると、テーリはハーラの後を追った。ナーレは装飾の多い派手な衣装を頭から被ったが慌てていた為、頭をどこから出していいかわからなくなり《僧兵》とは思えない無様な転け方をした。

 テーリから遅れること数分、やっとナーレは宿屋を出ることができた。今から追いつけるのかと不安げに遠くを見やる。遥か彼方には何も見えなかったが、視界の片隅にうごめくものがあった。視線を移すとすぐ目の前で白馬に抱きつくハーラと、うんざりした顔のテーリの姿があった。慌てることもなかったな、とナーレは頭を掻いた。


【第2話 〇三に続く】

次回更新 令和7年1月28日火曜日


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ハーラのから騒ぎに付き合わされたテーリとナーレ。宿屋に戻って朝食を摂ろうとした時、意外な人物と再会を果たす。



ダイキャスト キンケシ 王位争奪編コンプリートに王手?

2025-01-25 21:13:00 | キン肉マン

キラキラメタルスライムを見ている欲しくなるのが彼らです。



そう!キンケシのメタルな奴!



以前もちょろっと紹介したダイキャストキンケシです。プレミアムバンダイから飛翔チームと強力チームが発売されたため、並べてみようと思います!


まずは飛翔チーム!


大将をプレミアムバンダイ製ブロンズバージョンに変更すると!

こっちの方がプレミアム感があるねと長男が言うので、コレクションケースにはこの並びで行くことにしました。


さあ、続けてどんどん行きましょう!


強力チーム!


ブロンズバージョン!


知性チーム!


ブロンズバージョン!


最後は技巧チーム!


ブロンズバージョン!

あれれ?1人変なのが混ざってますね!これが今回のタイトルの「王手?」の意味でございます。


ダイキャストキンケシはモーターマンだけまだ発売されていないのです。彼は4月にガチャガチャで発売予定なので、それまで全員集合はお預けです。


「え?俺様は?」

運命の4王子が見つめるその先には「残虐チーム」大将のキン肉マン・ソルジャーの姿がありました。


可哀想なソルジャーはメンバーのうち2人、ザ・ヘビー・メタルとブルドーザーマンがリメイクされていないので、通常のキンケシですらチームが揃わない不遇の扱い。


通常販売の知性チームと技巧チーム。通常販売が難しくプレミアムバンダイ送りとなった強力チームと飛翔チーム。


そしてダイキャスト化されることがまずないであろう真・残虐チーム。これが「王手?」のもう一つの意味でした。


今日は新車の契約を済ませて、浮かれ気味な私。でも値下げの決済に4時間は待たせすぎでしょ、〇ヨタさん…。10時半入りで店を出たのが5時になったのにはビビりました、とさ。


冒険小説 ハテナの交竜奇譚 第2話その1 『ダンジョン・アタック前編』 〜《ウォーグ》の洞穴〜

2025-01-24 17:05:00 | 小説

亡き次男に捧げる冒険小説です。


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第2話 『ダンジョン・アタック前編』

     〜《ウォーグ》の洞穴〜


〇一

 ただただ白い。果てのない真っ白な空間。太陽も月も星もないのに明るいのはなぜなのだろうか。テーリは、一人佇み不思議に思った。ぐるりと辺りを見回す。どんなに目を凝らしても、何物も存在しないまばゆい世界。白一色の空間は天地の感覚を喪失させる。テーリは自分が立っているのか、逆さまになっているのかもわからなくなった。

 漂うような感覚は「あの川」の底に似ていた。テーリは不謹慎にも、あの甘美な「死」の香りを思い出し、ぼんやりと掌を見た。握ったり、開いたりを繰り返して自分の「生」を確かめる。自分は生きているし、「死」を望んでもいない。大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせる。

 俄かに笑い声が聞こえた。後ろを振り向くと、20メートルほど先で三人の男が談笑をしていた。顔は判然としないが、知らない三人組の男だった。三人は楽しげに会話をしているが、お互いの顔を見ていなかった。一人は片肘をつき頭を支え、身体を横にして正面の空間を見上げていた。その後ろの一人は椅子に座ったような姿勢で、手元を見つめて親指を細かく動かしていた。最後の一人は胡座をかいて座り、両手で握る何かに視線を落としていた。三人はその姿勢で暫く声を掛け合っていた。時には大声で笑ったり、突然拗ねたり、おちゃらけたりする三人の団欒をテーリは飽きることなく眺めていた。見ているうちに自分もそこに加わりたい、そう思うようになり団欒に近づいてみた。

 近づくにつれ、今まで気付かなかった小さな振動を感じるようになった。その三人組に近づくごとに、胸の鼓動のような振動が全身を襲う。この波動の出所はどこだろう、とキョロキョロしながらテーリはまた一歩、前に出た。

 ドンと、より強い衝撃を感じた。手元を見ていた一人の男から生じた波は、テーリを目掛けて送り出される音であり、光であった。彼が発した波動はテーリにあたると彼に跳ね返っていった。跳ね返る際、音や色が変わっていた。この音と光の波動は激しく変化しながら、彼とテーリの間を行ったり来たりした。それはまるで途切れることのない「谺」のようであった。「谺」には彼の意識が刻み込まれていた。明確な意識をテーリは読み取れなかった。しかしその波動を受けるたびに「谺」から朧げな不安を感じた。あんなにも楽しそうにしているのに、なんでこんなにも不安になっているのだろうか。彼の表情を確かめようと、テーリは更に三人に近付いて行った。

 徐ろに彼が立ち上がり、二人に背を向け歩き始めた。するとどうしたことだろう。自分の意思とは裏腹に、テーリは彼に引っ張られて行く。彼が十歩ほど歩いたところで、談笑していた二人が彼の異変に気付いた。その場に立ち尽くし、ワーワーと何やら呼びかけている。彼はそれを意に介さず、躊躇うことなくズンズン直進する。テーリはされるがままに彼に引っ張られて行く。もう着いて行きたくない、そこの二人助けてくれ!叫びたいが声が喉に詰まって呻くことさえできなかった。

 いつの間にか残された二人組のそばに人影が増えていた。寄り添うように成人した男と女が立っていた。立ち尽くす四人はなお一層声を立てる。もはやそれは悲痛な叫び声となっていた。テーリには怒号のようにも嗚咽のようにも聞こえた。いよいよ彼に引っ張られる恐怖が限界を超え、テーリは腹の底から悲鳴を上げた。


 「止めてくれー!」

テーリはガバリと起き上がった。汗がとめどもなく吹き出す。動悸が激しく、今いる場所が夢の中なのか、現実なのかの判断もつかない。肩で息をして震えていると、ナーレに肩を掴まれた。

「テー兄、大丈夫?怖い夢でも見たの?」

ボサボサの頭と寝よだれの跡から、テーリの叫び声に驚いて飛び起きたのだろう。ナーレは強くテーリを抱きしめた。何も怖くないよ、この部屋は安全だよ、そう何度も呼びかけた。テーリの意識が急速に覚醒していく。ああ、昨晩僕らは義兄弟になって、そのまま寝入ってしまったんだ。何も不安なことなんかないんだった。テーリの見た「怖い夢」は急激に萎んでいき、やがて消えてしまった。動悸の激しさだけが悪夢の余韻を残していた。

 「驚かさないでよ、テー兄。寝ぼけるにしても、限度があるよ。」

夢如きで大騒ぎしてと、テーリはひどく詰られた。テーリはなんだか悪いことをしたと思い、ベッドの上で正座をして手を合わせた。

「ごめん、ごめんよ。なんだかよく覚えてないんだけど怖い夢を見ちゃったんだよ。」

謝り倒していると、ムクリとハーラが起き上がった。

「しまったー!」

突然の叫びにテーリもナーレも言葉を失った。


【第2話 〇二に続く】

次回更新 令和7年1月26日日曜日


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ハーラの叫びに、度肝を抜かしたテーリとナーレ。

ハーラの口から飛び出た意外な言葉に、ナーレは更に言葉を失うのだった…。


用語解説

なし


辰の日企画 「ハテナの交竜奇譚」小説のタイトルについて

2025-01-23 15:15:00 | 小説

こんにちは、昨日は幸せなニュースに心躍った鮎の塩焼キングです。


ここ最近、冬季鬱というやつですか、気持ちが悶々として、暴飲暴食してしまう日々でした。子供のことで悩んでばかり。


そんな心の曇りを晴らしてくれる三男の快挙に、鬱も治った気がします!!


さて、今日は辰の日ということで、今回の企画は小説のタイトルについて、ご説明したいと思います。



ハテナの交竜奇譚


はっきり言ってさっぱり意味不明のタイトルでしたね。これを見ても内容が伝わらないため、読む気も起こらないかとは思います。


でもこのタイトルには私の想いが目一杯詰め込められてあるのです!


まず、「ハテナ」ですが、これは主人公テーリとその兄弟分ハーラとナーレからとられています。

義兄弟の長男分のハーラ、次男分のテーリ、三男分のナーレ。この3人の頭文字を繋げて「ハ・テ・ナ」となる訳です。つまり、ハテナとは主人公の義兄弟を表しているのです。


「スーパーマリオブラザーズ」の「マリオ」的な意味合いです。あ、「ハウルの動く城」の「ハウル」なんかも同じ位置付けですね。


そして「ハテナ」に続くのが「交竜奇譚」です。読み方は「こうりゅうきたん」です。これは完全な私の造語です。


「ハテナ義兄弟の冒険譚」を最初に思いついたのですが、あまりにありきたりでボツにしました。もともとたくさんの《竜》と絡んでいく物語を構想していたので、「竜」という字を入れたい。そんな時に閃いたのが「交竜」という造語でした。「交流」とのダブルミーニングで、「竜と交流していく」という意味合いがあります。


「奇譚」は辞書にもある言葉で、珍しくて不思議な物語という意味です。


彼らの言葉を繋いだタイトル「ハテナの交竜奇譚」とは、「ハテナ義兄弟が数多の竜と関わっていく不思議な物語」という意味なのでございます!


そもそもドラゴンが大好きで、小学生の頃からドラゴンが登場するゲーム用のシナリオを考えたりする変な子供でした。その時のドラゴン好きになったきっかけはドラクエとD&Dでした。80年代の少年は趣味が渋いですね!


3人の青年と《竜》が織りなす不思議な冒険譚は第2話に入ります。1話では《竜の力》しか出てきませんでしたが、第2話ではいよいよ…!?


というわけで、明日から「ハテナの交竜奇譚」の連載を再開します。


天国か、異国か、異世界か。どこかで次男が愛読していると信じて、のんびり楽しみながら執筆しています。