筋書きのないドラマ、筋書きのあるドラマ

ロッテ戦を中心に、野球を好き勝手な視点から見るブログ

ステキな「五線譜のラブレター」(BS放送)

2009-01-16 18:51:28 | 映画ア~サ行

NHK-BSでの映画放送はあなどれません。字幕だしカットないしエンドロールもしっかり最後まで流れます。

コール・ポーターという実在の作曲家が、彼の半生をミュージカルにのせようとして振り返るという構成の映画。主に彼を支え続けた妻、リンダとの愛が描かれる。2004年のアメリカ・イギリス製作映画

有名な方なのでしょうが、私はこのコール・ポーターという人を知らなかった。でも当然劇中で流れるのは彼の曲で、それらはとても綺麗な曲ばかり 聴いていて心洗われる感じ。

コールはいつでもどこでも楽しそうに音楽を奏でている。そんな彼の才能に惹かれ、強力なバックとなるのが後の妻となるリンダ。彼女は、彼の男色とかハメを外す行動などにとても寛容。この辺り、男性に取ってまことに都合がいいのが何とも言えないけど

でも、コール役はケビン・クライン。この人が演じると、ちょっとお茶目でかわいげがあって何でも笑って許せそうなキャラに納得。「デーヴ」も大好きでしたが、とても好きな俳優さんです

リンダのアシュレイ・ジャッドも、毅然とした美しく理解ある妻がとても似合ってました。彼女も「ダブル・ジョパディ」などがとてもよかったし、好きな女優さん

全体的に、花と歌に囲まれて、街頭や庭にさりげなくマッチしているピアノで作曲するようなところが何度も出てきて、とてもおしゃれ。外国ならでは、ですね。

特によかったのは、年老いた二人がピアノの前で見つめ合いながら、コールがリンダのために作った曲を弾き歌うシーン。どうしてこんなに絵になるんだろう、ってくらいステキでした


東野圭吾「殺人の門」

2009-01-15 18:18:28 | 小説

東野作品は大好きで、何度も読み返すのだけれどこれはまだだった。友達との話に出たので、年末年始にかけて読み返してみた。

私」がささやかながらも幸せを手にできそうになると、どこからか現れて不幸を運んでくる小学生からのつきあいの倉持。子供の頃から「殺人」という行為に興味のあった「私」は、彼への殺意がそれに至るためのあと一歩を模索する……

**以下、ネタバレあり**

財産家の家族、初恋の相手、堅実な仕事、ささやかだが幸せな結婚生活 そういったものを、倉持が全部壊していく、あるいは最初から不幸になるように仕組んでくる。

今や社会問題化している悪徳商法をメインに人を騙す倉持の巧みさがとても恐ろしくて、でもスリリングで面白くて一気に読み進めてしまう。

人はどれだけの憎しみがたまれば殺人ができるのか。それがテーマのようだが、むしろその要因となる、「私」が倉持にどうやって嵌められどんな不幸に陥っていくか、という過程の方が見せ場だったように思えた。

その先の、一線を越えて殺人をするのかしないのか、の迷いの辺りはさらっと終わっているように感じたので、「殺人の門」というには少し違和感が残ってしまった

むしろ、この倉持という男の素顔を見つける旅、と言った方がしっくりくるような気がする。倉持が一体どうして自分にそういうことをするのか。そういうことを仕掛けてきながらも本当に親友と思ってくれているような節。倉持の歪んだ思い

読後に爽やかさが残る、とはとても言えないけど、面白くて止まらなくなるのは間違いない。結果を知っていても、後半などはすごい加速度で読み終わりました(^_^;)


救いのない「私は貝になりたい」

2009-01-14 20:41:14 | 映画マ~ワ行

戦争中、敵国捕虜を殺したかどで、清水豊松は戦犯として逮捕される。上官の命令で無理矢理だった上、豊松が致命傷を与えたのではないと訴えるが、下された判決は絞首刑だった…

戦争で取り上げられるのは命だけじゃない。人としての尊厳。周りの人達の温かい協力や必死の努力。苦労の末にやっと得た小さな幸せ。全てが呆れるほど理不尽に踏みにじられてしまう。そしてそれらを最も被るのが一般市民。

そういう、戦争が引き起こすめちゃくちゃな非道理を訴える映画に、アイドルのトップに立ち続けているSMAPの中居くん起用は正解だと思う。日本中の若い人達が観るだろうから。

ダイエットの話、丸坊主の話などで、バラエティでは笑いを取っていた中居くんだが、映画では悲劇の小市民を演じ切った。特に最期のモノローグの絶望的な悲しさ…。

アメリカ兵だって鬼ではない。看守は一緒に子供をあやしてくれたり、豊松の刑の執行時に切ない表情を見せたりする。彼らも下っ端はどうすることもできないのは同じなのだと思わせられた。

妙に家族愛とかに重点がおかれすぎず、救いの全くない結末が、ぬるいドラマにならずに淡々と訴えてくると感じた。

この映画をただの泣ける映画ととらえずに、戦争は絶対に絶対に起こしてはならないのだと肝に命じなくては…と、一人でも多くの人が思ってくれることを切に願います。

 

おまけ

映画を観るたびいつも思うのだけれど、主題歌はどうして最後の最後に1回しか流れないんだろ? もっとTVドラマみたいにここぞというとこでガンガンかけて欲しいと思うのだが…何か制約でもあるんでしょうかね…??


「どろろ」で妻夫木くんづくし

2009-01-13 16:34:58 | 映画タ~ハ行

大河ドラマ、新作映画の宣伝、ガスパッチョのCM。最近、毎日のように妻夫木くんを見る。その上日曜に、主演映画「どろろ」テレビ放送までも観たので、夢にも出てきてくれそうなほど

戦国の世。父の天下取りの野望と引き替えに、赤ん坊の時に体の48箇所を魔物に差し出された百鬼丸。魔物を倒すたびに一つずつ体を取り戻していくが、その旅でどろろと知り合い、道連れとなる

手塚治虫原作の、CGを駆使した実写版。

妻夫木くん、ワイヤーアクションも立ち回りも頑張ってました。いつのまにやらこういうクールな役が似合うようになったんだなぁ。情けない役を振ったらNO.1と言われていた「WB」や「BJによろしく」の頃のことを感慨深く思い出したりして……しみじみ。

柴咲コウちゃんも、「悲惨な子供時代を生き抜き、今や逞しい泥棒のどろろ」というどちらかと言えば汚れ役が浮くこともなく、いい味を出していた

ストーリーの、一つずつ体を取り戻していく、という設定の面白さはさすが手塚治虫原作(漫画連載当時は不遇で打ち切りになったとか)。体が作り物のツギハギ……というとどうしても「ピノコ」を思い出してしまうけど。

原作を読んでいないのでどこまでが忠実なのかわからないが、映画では体を取り戻すたびに心も取り戻していく、、、ようにしたかったように見えた。……でも今ひとつそう見えなかったのは少しもったいなかったような

出てくる魔物達は、ウルトラマンに出てくる怪獣のようで怖いより笑えてしまうので、グロいシーンが苦手な私でも終始正視していられた(^^;)

ただ、父親(中井貴一)がよくわからなかった。野心のために長男の百鬼丸を平気で魔物に差し出し捨てておいて、次男の命は自分の命を犠牲にしても助ける……?? 年月の流れが彼を丸くしたと解釈するにしても、妻のことは何の躊躇いもなくバッサリと斬り捨てて……。ちょっと破綻していたのでは。

手塚治虫ものでは夏に「MW(ムウ)」が公開予定とか。ファンとしてはそれも必見です


「プロ野球戦力外通告 クビを宣告された男達」を見た

2009-01-09 15:55:18 | 野球

年末の深夜に、TBSでやっていたドキュメンタリー番組。プロ野球選手という花形職業の、シビアな現実を扱っていた(その昔「巨人の星」でも去っていく選手のくだりがあったが、妙に覚えている……(>_<))。

プロ野球選手とは、なれるのはほんの一握り、なれても活躍が続かず契約外となってしまう選手もいる(というか、きっとたくさん)。契約金が1億だった選手も、甲子園優勝して新人王を取った選手でさえも。

ケガをしているわけでもなく、年齢的にも最も脂の乗っている時期に、野球を出来る場がなくなるというのはどれだけのことなんだろう。それを思うだけでも胸が痛くなる。

その中で印象に残ったのが、結婚式直前にクビになった選手に、未来の奥さんが言った言葉。「家族に苦労させるって悪い事じゃない」。そして迷う彼に「一緒に頑張る立場として、意志の強さを感じないと納得できない」と苦言を呈し、自信を持って道を選んで欲しいと訴える。彼はそれで道を決めるのだ。

明日をもしれない野球選手の奥さんとは、このくらいしっかりしていないとダメなんだろうな、と感心した。私だったら、何をどう言ってあげたらいいのか、到底見当もつかない……。

トライアウトという、クビになった人達の最後のアピールの場がある。バッターは5回の打席、ピッチャーは4人の打者のチャンスをもらうというのを初めて知った。
そこで活躍できるだろうか、その後1週間という期限の間にどこからか契約したいと声がかかるだろうか。そんな風にして待っている不安な姿をカメラに映され続けて、彼らはよく怒り出さないなと、余計なことだが心配になったりした。

その後は、引退して就職活動したり社会人野球だったり台湾リーグだったり様々。でも、それぞれの方の今後が、今までの野球人生で得た物を生かした充実したものでありますように。

番組は最後に、楽天野村監督の言葉で締められていた。「お前、クビになって悔しかったら見返してやれよ。心が変われば人生変わるぞ」と。これはきっと、大なり小なり何か挫折したことのある人になら、誰にでも響く言葉ではないでしょうか。