「世紀の空売り」
マイケル・ルイス著、文春文庫、2013年3月
「マネーボール」の著者マイケル・ルイスがリーマンショックを描いたノンフィクション作品。
原題は「THE BIG SHORT」。
「マネー・ショート」のタイトルで映画化されています。
同じリーマンショックに関する書籍でも、
「マネー資本主義」(NHKスペシャル取材班)が時間・空間を幅広く取材したのに対し、
本書はソロモン・ブラザーズ勤務経験のある著者がウォール街中心に深く掘り下げて取材した印象です。
主に、多くの人が不動産価格は上がり続けると考えていたときに、下がると考えていた人たち、
サブタイトルにもあるとおり「世界経済の破綻に賭けた男たち」を追っています。
本作でも「CDO」と「CDS」が何度も出てきます。
CDO: Collateralized Debt obligation
CDS: Credit Default Swap
「マネー資本主義」では
「リスクをコントロールする根本思想が異なる」と表現していました。
本作では「CDOはCDSと同じく、社債と国債の債務不履行リスクを再分配するために発案されたもの」
としており、解釈が異なるように見えます。
さらに合成CDOと呼ばれるCDSだけで構成されたCDOまで登場し、ますます訳が分からなくなります。
簡単に言うと、不動産価格が上昇すればCDOが上昇し、不動産価格が下落すればCDSが上昇するようです。
つまり不動産価格が下がると予想した投資家がCDSを買います。
リーマンショック前、CDSの主な買い方はヘッジファンド3社。
一方CDSの売り方はAIG。
リーマンショックにより前者は大儲けし、後者は経営危機を迎えます。
また世界の金融機関もCDSを売買し、ドイツ銀行とモルガン・スタンレーの取引では、
ドイツ銀行が12億ドルの利益を計上し、逆にモルガン・スタンレーは同額の損失を計上したそうです。
ただ金融機関の損益は分かれても、両方の重要人物たちのほぼ全員が私腹を肥やすことができ、
それが一般市民の怒りを買ったようです。
本編を一通り読んだうえで藤沢数希氏の解説を読むと分かりやすかったです。
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