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拉致の解決を願って
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参議院拉致特資料(17.6.10)

2005-06-11 | 記録
参議院拉致特資料(17.6.10)
                特定失踪者問題調査会代表
                拓殖大学海外事情研究所教授
                           荒木和博
1、 拉致問題の全体像について

 拉致被害者の総数は、北朝鮮の体制が崩壊し、自由に国内での移動及び日本への出国ができるようにならない限り分からない。

 現在特定失踪者問題調査会にある特定失踪者(拉致の可能性のある失踪者)のリストは約440人である。この中に拉致被害者がどれだけいるのかは不明だが、身寄りのない人を拉致したケースが相当数あると思われ、また、拉致と思われるケースでも家族が名乗り出ていない場合もあるという。その場合は例外を除き調査会のリストにも、警察のリストにも載ることはない。

 いうまでもなく、日本政府が救出・保護する責任を負っているのはこれらの人々すべてである。しかし、現状では政府認定者以外は北朝鮮に問い合わせすらしておらず、しかも認定者は平成14年9月の小泉総理訪朝で曽我ひとみさん・ミヨシさん母子と石岡亨さん、松木薫さんを追加認定してから2年半たってやっと16人目の田中実さんを認定したに過ぎない。この状況が続けば拉致被害者はその大部分が北朝鮮でその生命を終えることになる。

2、 現在の拉致問題解決のシステムについて

 日本政府が現在行っている拉致問題への対応は、大筋で次のようなものである。

・警察による捜査→ ・内閣の認定→ ・外務省の交渉

 しかし、・について言えば、多くの事件が長い年月を経過しており、「法と証拠」が原則である警察の捜査では拉致であると確信を持てる事件は全体の一部に過ぎない(実際、曽我ひとみさんは北朝鮮が明らかにするまで警察は拉致でないと認識していた)

 ・は、現在の16人の大部分が報道機関の発表や工作員の逮捕によって明らかになったものであり、誰も知らなかったときに日本政府が明らかにしたケースはほぼゼロに等しいことからも、認定が恣意的であることは明らかである。現在特定失踪者の一人古川了子さん(昭和48年7月、千葉県市原市で失踪)のご家族が拉致認定を求めて行政訴訟を提訴しており、今月7日に第1回の口頭弁論が行われたが、国側の答弁書では事実関係の審理を避け、却下を求めている。これ自体認定が恣意的に行われていることの証拠である。

 上記古川訴訟において、国側の主張は「これまでも一所懸命やってきており、捜査して拉致と認められれば認定し対応している、したがって提訴の意味がない」というものである。しかし、未認定の拉致を疑われる国民で北朝鮮との交渉に持ち出された例はごくわずかであり、認定者と未認定者には明確な区別が行われている。しかも、政府認定者の中ですら帰国を果たしたのは5人に過ぎないのである。
多くの拉致被害者を北朝鮮に残したままで長い年月が経過し、しかも被害者の大部分についてはそれが誰であるかも明らかにできないというのは政府の不作為以外の何者でもない。曽我さんが拉致被害者であると分かっても、政府機関の誰一人として、24年間拉致と気づきすらしなかったことに謝罪もしなければ責任もとっていない。大部分の拉致被害者が帰国できない現状が続いても、誰一人として責任をとらないということは、この国には誰が拉致されたか調べることにも、拉致された国民を救出することにも責任を持っている人間が存在しないということである。「対話と圧力」とは言うが、少なくとも日本政府は正面からの圧力をかけていない。話し合いで拉致被害者を帰すような相手であれば、そもそも拉致などするはずがない。

 このような現状で「これまでもやってきた」というのであれば、日本政府は自らに国民を救う能力がないと明らかにし、無用な幻想を払拭すべきである。家族の多くは裏切られながらも政府を信じようとしてきたのだから。

3、 救出に向けて必要なこと

 ・警察による捜査→ ・内閣の認定→ ・外務省の交渉というシステムを機能させるためには認定の条件を大幅に緩和し、北朝鮮との交渉にあたっては経済制裁、特に船舶の入港禁止を実行することや、日本国内における北朝鮮関連の不法行為を徹底的にとりしまることが必要不可欠である。

 特に、捜査権を持つ警察は県警間の壁などの内部的問題もさることながら、法的な不備と世論の冷淡さなど、長期にわたって両手を縛られ、孤立無援に近い状態で活動を続けている。身を粉にして現場で闘っている担当者の労苦が実るように、政府機関、立法府のみならず、各方面のバックアップが必要である。

 しかしそれでも前期システムだけでは拉致の完全解決は不可能である。別のシステムを機能させなければならない。日本には公安調査庁、海上保安庁、内閣調査室、そして自衛隊など、情報機関としての機能を持つ政府機関がいくつも存在し、それぞれの要員は使命感に燃えて日夜活動を続けている。私たちはそれぞれの機関の担当者とも連携をとりながら活動をしているが、これらの機関の情報がある程度のレベルでも共有されれば現状でもかなりの成果が期待できる。それを早急に実現するとともに、中長期的にはCIAのような専門の情報機関を警察と別に設立し、外国からの諜報活動に対処すべきである。

 また、今後、北朝鮮の体制崩壊などに備え、直接救出の準備も進めるべきである。前述のように誰も気づいていない拉致被害者が相当数存在するのであり、これを救出するのは現地に入って行う以外にはない。それができるのは自衛隊のみであり、憲法第13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」から考えても躊躇は許されないと考える。

4、 終わりに

 政府は拉致を個別の事件として、可能な限り矮小化しようとしている。しかし、拉致は北朝鮮政府の対南赤化統一という建国以来の方針に基づく戦争行為である。覚悟をもってあたらなければこれから先にも拉致をはじめとする主権侵害行為は行われる。その犠牲になるのは今この国で暮らしている普通の国民である。拉致問題の解決は、私たち自身の安全を守るためのものであることを認識していただきたいと考える次第である

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