★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2017.06.22)北朝鮮は今どうなっているのか-東京連続集会報告1
■北朝鮮は今どうなっているのか
救う会では、平成29年6月21日、文京区民センターにおいて、第96回東
京連続集会を行った。今回のテーマは、「北朝鮮は今どうなっているのか」。
北朝鮮経済は好転し、制裁は効いてないという議論があるが、我々は、実は北
朝鮮経済には大きな矛盾があり、徐々に制裁は効いていると考えている。そこに
拉致被害者救出の道がある。
今回はゲストに、北朝鮮内部情報に詳しい久保田るり子国学院大学客員教授、
宋允復(ソン・ユンボク)NO FENCE副代表を招き、西岡力・救う会会長とともに
議論した。
■北朝鮮は今どうなっているのか-東京連続集会報告1
西岡 今回は拉致問題そのものというよりも、金正恩政権が今どのような状態に
あるのかをテーマに考えてみたいと思います。先月は惠谷治さんに来てもらって、
核・ミサイル問題を話しましたので、必然的に米朝関係が中心になりました。
今日は、北朝鮮そのもの、特に内政、特に経済と政治を中心に話をし、北朝鮮
が今そうなっているかを考えた上で、この状況を拉致被害者救出にどのように活
用できるかを最後に議論したいと思ってます。
ゲストの二人は私の古い友人で同志です。久保田さんは大学の肩書になってい
ますが、ジャーナリストでソウル特派員を長くやっていて、その後も東京で韓国
・北朝鮮のウォッチャーです。
久保田さんの著書で『金日成の秘密教示』という名著があります。工作員は皆
記憶力が高く、金日成がどこで何を話したかみな覚えています。工作員からそれ
を聞き出して、しかもその人が誰かはカモフラージュして解説をつけています。
この中に拉致に関するヒントがたくさんありました。
宋允復さんは北朝鮮人権問題の活動家です。ノーフェンスのフェンスというの
は、政治犯収容所の壁で、これをなくすことに執念を燃やしているNGOで、ま
た日本の北朝鮮人権NGOの老舗でもあります。家族会・救う会より5年くらい
早くから活動しています。
政治犯収容所の体験者である姜哲煥(カン・チョルファン)さんを呼んで、日
本で最初に東京で集会もしています。そういうことをやる中で、脱北者者のネッ
トワークがたくさんあり、有力な脱北者を何人も東京に呼んで研究会をやってい
ます。
特に最近の脱北者は古い友人がいて平壌とつながっています。電話で連絡がで
き、リアルタイムの平壌の情報が取れる。私もそういう人をたくさんもっていま
すが、宋さんの方が多いのではとも思っています。
人権問題を解決しなければならないという熱い心と、北朝鮮が今どうなってい
るかについては冷静に、様々なルートから情報を取って、ダブルチェックして検
証する活動もしています。
二人に登壇していただくのは初めてですが、満を持してお願いしました。
まず経済の話から。少しだけ私の問題意識をお話します。
時々講演などに行って聞かれるのは、「北朝鮮の経済はよくなっているんじゃ
ないか」、「経済制裁は効いてないのではないか」ということです。また、「日
本のテレビ局のクルーが平壌に入ると、きれいな都市建設が進んでいる」、「一
時期言われたような餓死者はいないのではないか」、「そういう状況と北朝鮮が
孤立している、経済制裁が効いているという西岡の説明は合わないのではないか」
と。
「経済制裁で追い込んで拉致被害者を助け出すという戦略はもう失敗している
のではないか」というような質問や意見を聞きます。私は、北朝鮮の経済は二重
構造だという答えをします。明るい平壌の姿と経済制裁の問題、あるいは一時期
よりも経済が持ち直しているということと、北朝鮮経済は今どういう状況で、経
済制裁は全く効いていないのかという問題意識を持っていただき、まず久保田さ
んからお願いします。
◆韓国親北政権が北朝鮮に資金援助すれば
韓国がどういう状況かによって北朝鮮の経済はかなり変わります。そういう意
味では、文在寅(ムン・ジェイン)政権が韓国にできたということは、大変大き
な要素になると考えています。
私は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の時に韓国に5年間駐在していました。金大
中・盧武鉉政権の10年間、親北政権が続きました。この間に韓国から北朝鮮に
流れた資金は、概算で70億ドル、7600~7700億円くらいだと言われま
す。
この内、政府が直接出したのはいくらか。秘密資金も含めてです。秘密資金と
いうのは、南北首脳会談の時に5億円出しています。本当の全額は把握できませ
んが、政府から行った資金が約30億ドル。残りの40億ドルは民間からです。
興業を生放送で中継する時の放映権とか、民間団体が物を持っていく時のお金
です。FAX1枚、電話線1本つないでも北朝鮮はお金を取りますので積み重な
ると莫大な額になります。
10年間で40億ドル、4400億円くらいのお金が入っていることを考える
と、文在寅政権ができたことで北朝鮮はほくそ笑んでいると思います。これから
少なくとも5年、もし文在寅政権が来年憲法を改正して大統領任期を2期8年ま
でとする体制を作ると、10年近くはこれでいけると思ってもおかしくないくら
いです。
金大中が南北首脳会談をやった時(2000年)、南北共同宣言が出ました。
多くの団体が北朝鮮に人道支援をすると訪朝許可を出し、次々に許可されました。
今日のニュースでは、平昌(ピョンチャン)オリンピック(2018年)を南北
で共催しようという案が韓国側から出ている。共催が実現すれば、南から北に多
額のお金が流れる。
なので、南北関係を見ないと北朝鮮経済が分からない。そういう過去の事例が
あります。
◆ハッキングで国家が金融犯罪
北朝鮮がどういう形で外貨を稼いでいるのかについては色々なことがあります。
労働者を外国に出すなどです。しかし、最近の事例は異なります。
「ボイス オブ アメリカ」が報道した件ですが、ビットコインという仮想通
貨は匿名性があり、世界中の市場で売り買いされます。しかし、誰が売って、誰
が買ったか分からない。
そこで北朝鮮がネットショッピングにアクセスして、会員の個人情報を盗んで、
それをばらすぞと脅かしてネットショッピングのオーナーから金を取っています。
西岡 それは恐喝犯罪ですね。
久保田 もちろんそうです。だから警察当局がコントロールしているという話で
す。アメリカのシンクタンクCSISが言っているのは、「このネットは小さな
銀行をターゲットにして、そこから金を取っている」と。
去年バングラデシュの中央銀行が、アメリカのセキュリテイ会社シマンテック
が調査しましたが、92億円詐取されたそうです。アメリカの捜査当局が捜査中
ですが、ネットを使った金融犯罪を国がらみでやっている。
亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元北朝鮮駐英公使は、伝統的に10数年やって
いるそうですが、ロンドンの国際保険市場に対し、橋が壊れたとかヘリコプター
が落ちたということを理由に、事故そのものはあったにしても捏造をして、数十
億単位のお金をふんだくっているということです。
もう一つは5月の中旬頃、150か国、30万台のコンピュータに「ランサム
ウェアー」という身代金要求ウイルスを送り込んで、コンピュータが停止してし
まう。解除するには3万円出せというのを発信した。これも北朝鮮の犯行ではな
いかと言われています。
西岡 ああそうですか。「ランサムウェアー」が問題になり、北朝鮮の名前が出
てきた。
久保田 というのは、バングラデシュの銀行に送ったやり方と、「ランサムウェ
アー」のやり方が似ているそうです。
西岡 突然自分のコンピュータがフリーズしてしまうんです。なおしてほしかっ
たらここにお金を振り込めというのが出てくる。仕事にならないから、中にはお
金を振り込む人もいる。そういうものが今急速に拡散してテレビ等でやっていま
したが、それも北朝鮮だったんですね。
久保田 150か国、30万台のコンピュータでそれが出たということは、相当
に規模でできるものらしい。お金を稼いでいるわけです。昔は麻薬の密売とか、
偽たばこなど分かりやすい犯罪だったのです。
西岡 アナログ的犯罪ですね。
久保田 今やデジタル的な犯罪をやっている。それをどこがやっているかを突き
止めたところ、偵察総局に180部隊というのがあるそうです。そこがやってい
るそうです。密輸だけでは足りないものを、この間彼らはずいぶん開発したよう
です。
また偵察総局に入った金は統治資金になるそうです。それが核・ミサイル開発
資金にもなる。しかしそれを止めるのはなかなか難しい状況だということです。
従って、これまでは国境である程度止められたんですが、今やサイバーの世界で
彼らは荒稼ぎをしているという状況があるように思います。
西岡 昔偽札を作っていた。ものすごく精巧だった。アメリカの印刷機はあまり
よくなくて、アメリカのドルよりもきちんとしていた。ある専門家は、「こんな
技術があるのならまともに働けば、国際的に競争力があるものを作れるのではな
いか」と言っていました。犯罪の分野で、世界中で30万台ものコンピュータを
ハッキングできるのなら、この技術をまともに使えばいいのにと思ってしまいま
す。国家が犯罪を、テロをやっているんです。今は国家がコンピュータを使って
泥棒をしている。
◆賭博ソフトをマフィアに高値で売る
宋允復 話を聞いていて、私も脱北者と接しているので思い出したことがありま
す。インターネット賭博も北朝鮮のものができがいいそうです。マフィアとかや
くざという人たちに北朝鮮の賭博のソフトを売っている。ソフトを何千万かで売
り、賭博をやるとそこからもあがりがあるそうです。
私の所にも売り込みにきましたから。USBメモリーにカジノのソフトが入っ
ているそうです。「日本のやくざに伝手はあるか。安くおろすから売ってくれな
いか」と(笑)。
そういう類で動いている人たちに話を聞くと、「日本の銀行からもお金を抜い
ている」と言っていました。バングラデシュの話がありましたが、日本の銀行か
らもお金を抜いている。ところが日本の銀行は信用に関わるから気づいても表に
出さないと言っています。
それから「出合い系サイト」というのがありますね。そういうところに数万人
の会員名簿があるわけです。そのデータを抜いてきて、「これ売り物にならない
か」と。
それをどこから取ったんだと聞くと、北朝鮮から中国に派遣されているIT技
術者はサイバー技術の訓練を受けていて、ソフトやアニメを作ることをしていま
すが、そういう人たちが指令を受けてやることもあるし、指令を受けてないのに、
片手間に、本国に知られないように小遣い稼ぎをしている。
色々なサイトに入っては名簿を取る。それを金に換える。そういう表に現れな
いことも相当やっているそうです。日本も多分やられていると思います。
◆統治資金経済と闇市経済
西岡 久保田さんは統治資金と言いましたが、宮廷経済というのも同じことです。
北朝鮮の経済は大きく分けると2つに分かれている。計画経済ですから政府がす
べて管理しているのですが、計画経済の方は完全に破綻していて、国営工場も計
画通り動いていない。計画経済を第一経済と言いますが、だいたい破綻していて、
2つ目に宮廷経済がある。第二経済と第三経済が宮廷経済とされます。
金正日時代から、計画経済とは別に金正日が直接外貨を集め、海外の銀行に隠
匿し、それで自分たちのぜいたくな暮らしや核・ミサイル開発や幹部たちへの贈
り物に使った。それがあるから独裁体制が維持されてきた。
財源は当初から日本の朝鮮総連の送金であり、その後久保田さんが指摘したよ
うに金大中・盧武鉉政権からも送金があった。それをターゲットにしたブッシュ
政権の金融制裁があった。マカオの銀行は実は39号室資金(統治資金)の出入
り口だった。
色々な銀行に隠し金があるのですが、あの銀行は当時コンピュータ化されてな
くて、手で帳簿をつけていた。だからドルの動きがリアルタイムで分からなかっ
た。その出入り口を押えられたので困った。
そして今回新しい財源としてサイバーがあるということでした。この後宋さん
にチャンマダン(闇市)経済のこと、トンジュ(金主)の実態についてお話して
いただきたいのですが、一般庶民の経済を第四経済と言いますが、私は闇市経済
と言っています。
一般庶民が自分たちが食べるために勝手に事実上の資本主義をやっているとい
うのが現状です。事実上の資本主義と39号室の統治資金、この二つに北朝鮮の
経済は分かれていて、平壌の町が明るかったりするのは、どちらかというと闇市
経済が盛んになっているからです。
しかし、問題は統治資金です。統治資金を枯渇させることができれば、彼らは
苦しくなる。国際社会の制裁はこれをターゲットにしていますが、北朝鮮はサイ
バー強盗をやっている。そして文在寅政権がまた支援をするのではないかという
指摘が今出ました。
話を進める前に、闇市経済について知っていることをお願いします。
◆配給で生きる人口は3割に
宋允復 体系的に整理しているわけではないですが、90年代から「苦難の行軍」
を経て、死ぬべき人は死んでいった。配給がいつか回復されるだろうと党を信じ
て、待っていた人たちがどんどん亡くなった。
西岡 「苦難の行軍」は1995年から98年までくらい。「労働新聞」に「苦
難の行軍」と何度も出た。それは金日成がゲリラをやっていた時のことを、「苦
難の行軍」と言ったが、新たな「苦難の行軍」の時代だと言っていました。その
時代に300万人程度の餓死者が出た。
宋允復 今生きている方々は、その「苦難の行軍」を生き延びた強い人たちで商
売をやっていた人たちです。国から割当てられた仕事をやるのが人民の清潔な社
会でしたが、商売という利己主義はやってはいけないとされていた。
80年代に、金日成が一時期、人民にちょっとした家内生産をやらせた。豆腐
を作って売るとか、パンを作って売るというような。ところが資本主義的な要素
が広まって情報も行き来するので、これは止めなければいけないとなった。その
時取り締まられ、特に女性が刑務所に送られて死んでいくことがありました。
しかし、90年代に商売で生き延びた人たちが今闇市を形成し、近年それが合
法化された。公営市場で場所代を取ってやらせた。そこで利権を握っていたのは
党の幹部、地域の警察や秘密警察で女性たちが多かった。
市場で不祥事がある。例えばビデオがメモリーの中に入れられて流通するとか。
あるいは禁制品の韓国製品。そういうのを取り締まるんですが、あまり真面目に
取り締まると、地域の実力者との関係が悪くなるので、手加減する。
その公営市場に場所代を払えない人は、周辺で闇市をやる。「バッタ市」と言
います。取り締まりがきたら、荷物をまとめて走って逃げる。
西岡 バッタのように飛んで逃げるということですね。
◆民間の金持ちが平壌を明るくしている
宋允復 その市場のおかげて人々が飢え死にしないで食べられるようになった。
韓国にそういうことの研究機関があるんですが、そこで分析すると、北朝鮮の人
口の中で、国家による配給で暮らしている人口の割合はだいたい3割くらいです。
その中には金を持っているトンジュもいる。国は資金も資材も足りないので、
金を持っている人たちにお金を出させて、例えば平壌で新しいマンションを建て
させる。建築が終わったら、ある程度の金をそういう人たちに渡す。そうすると
金を持っている人たちがマンションに入る。
そういう人たちは自前で発電機を用意して、自分たちで使っている。平壌の明
るさの中に、そういうものが入っている。
西岡 太陽光発電機が大変平壌で売れているそうですね。
宋允復 中国からかなり仕入れており、近年のアパート、マンションにはベラン
ダに太陽光パネルがある。但し寿命にかなりばらつきがある。
(2につづく)
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