なんでも話せる場所なんて、存在すると思う?
あなたになら、なんでも話せるとか、
ここなら何を言っても大丈夫。とか、
そんなところってあるのかな?
私は、無いと思う。
それをするとね、
誰かが辛い思いをするかもしれないでしょう?
なぜ、そんなこともわからないの?
彼は、辛かったんだよ。
私は、とても、情けなくなった。
夕方、彼とのLINE。今日ずっと、話したかった人が、スマホの画面の向こう側に現れた。
彼は、答えた。
情けなくないよ。完璧なんて、無いんだからね。
じゃあさ、完璧じゃなくていい。
けど、相手を不快にさせるのはイヤ。
私は、自分のことばかり考えていたから。
そうだね。
でも、完璧でないんだから、多少はしょうがないよ。
だから、それを許してくれる人としか、長く続かない。
つまりは、バランスが大事なんだよ。
バランス…
私が彼に対する気持ちと、
あなたがが私に抱く感情。
もし、これから、不快に思ったら、ちゃんと伝えるよ。
信頼関係があるからこそ、出来ることだからね。
さあ、この話は、終わらせよう。
彼はそう言って、私を許してくれた。
その後すぐ、電話をかけてきてくれた。
天気の話、明日の予定、
今、仕事が大事な時だということ。
そんな、何気ない話が嬉しい。
しかも彼は、わざわざ、車を途中で止めて、イヤホンをはずした。
……初めて直接、彼の声を感じた。
ドキッとした。
スマホのすぐ向こう側から聞こえてくる声は、
吐息が生暖かく、私の鼓膜を優しく響かせる。
すぐ側に彼が居る。私の脳と身体が、そう錯覚する。
きっと、抱き合ったら、こんな感じなのかな。
ドキドキが止まらない。
声だけで、こんなに感じてしまう。
それは、相手にも伝わる。
いつか、重なり合うことを夢見てきた。
それは、許されない事。
だから二人は、いつも、
妄想だけで重なり合い、もつれ合う。
彼の声が、私の名前を呼ぶ。
俺の髭が、じゃりじゃりするのを感じたくない?
感じたい。
声を出して、感じたい。
この手で、この口で彼の全てを癒してあげたい。
二人の実際の距離をどうしたら超えられるの?
これは、きっと、ゲームなんだ。
どんなゲームなのか、自分に問う。
答えはすぐに出た。
彼を心地よくするゲーム。
そう思うようにしたら、
私の中の彼のウエイトが、
少しは軽くなるのではないかと、ふと思った。