早朝、4時前。
隣の枕には、いるはずの夫の姿がなく、
また、自分の部屋で寝落ちしたのかと、油断していた。
彼から、LINEがないか、確認したいのと、
私が、彼にLINEを送りたいの一心で、
枕の下に忍ばせていたスマホを
こっそり取り出した。
以前、彼と約束した事がある。
早朝のLINEは危険だから、しないって。
頭の隅には、その約束があったのに、
私は、彼にLINEの文字を打っていた。
すると、夫の足音が、すぐそばに聞こえてきて、部屋に入ってくるまでのわずかな時間、
私は、スマホを枕の下にほり込んで、寝たふりをした。
夫は、ベッドに上がり込むと、私の身体に手をかけてきた。
始まるのか。そう思った。
少しづつ、目が覚めるふりをして、自然に振る舞った。
その間、私が考えていたことは、枕の下のスマホのこと。
どうか、神様!彼からLINEが来ませんように。
もしも、通知オフの設定をし忘れていたら?
それで、この時間にLINEの着信の音が鳴ったら?
不自然極まりない。
それだけで、私たちの関係は、終わりになる。
それどころか、私のこの居場所も、もう無くなる。
私は、心が震えて仕方がなかった。
彼は、とても注意深く、この関係を保ってくれているのに。
私は、それが寂しいと思ったり、つまらないと感じたり、
とても身勝手なことをしてきた。
でも、用心深いに越したことはないんだと、初めて実感できたの。
夫は、いつものように、自分だけ果てた。
私の身体が感じなくなっているのか?
精神的な影響が、あるからなのか?
夫の体の具合が、以前と違うからなのか…
もう昔のようなことはない。
夫は、すぐに目をつぶって寝たようだった。
私は、1秒でも早く、服を着直して、
素早くスマホを取り出すと、部屋から出た。
LINEの通知は、オフに設定されていたし、
彼からのLINEは、無かった。
私が打った途中までの文章が残っているのを見て、
自分のした事が、浅はかだと感じていた。
約束は、守らないといけない。
彼は、全てを想定済み。
もしかしたら、世間でいう不倫の経験者なのかもしれないとさえ、思えてくるのだった。