序盤はNFLがアメリカで人気NO.1になるまでの軌跡が描かれている。アメリカのプロスポーツというとまずメジャーリーグ・ベースボール(MLB)を思い浮かべる人が多いと思うが、実はNFLがダントツなんだよね。これは憶えていた方が良いよ。
そして中盤からNFLの運営システムが紹介されているのだが、ここで驚くのが、徹底したイコール・コンディションを実践しているところだ。簡単に言えば、ウェーバー制やサラリーキャップの導入がそれだが、それ以外でも、放映料やグッズ収入をリーグが管理して、それを各チームに均等に再分配するということもしている。もちろん、どこまでの収入をリーグが管理するかは厳密に決められている。
他にも選手の金銭トレードというものが存在しない。移籍する際には選手同士の交換、もしくは翌年のドラフト指名権と交換する。もちろんその両方というのも存在する。要はマネーゲームになり、資金力のあるチームの1人勝ちになるのを防いでいるわけだ。そうなるとドラフト指名権が鍵になってくるわけだが、最初はこの指名権がそれほど価値があるとは思わなかった。1巡指名権ならまだしも、結構な大物選手がドラフト2巡、または3巡指名権と交換でトレードということがよくあり、2巡指名権なんかで手放すなんてもったいないと思いながら見ていた。
しかし見ていく中で、この指名権というのがかなり価値あるものだと分かってくる。NFLにはいわゆる2軍というような下部組織が存在しない。プロ=一軍=NFLという図式だ。ドラフトで有望選手を取って、2軍でじっくり育てるというようなシステムがなく、基本的には即戦力を確保するという形になる。そのためNFLでは高校生をドラフトすることは出来ず、大学がNFLの下部組織のような役割を果たしている。ちなみにカレッジ・フットボール(大学のアメフト)の人気はすさまじく、毎年ゲームが出るほどだ。
話はそれたが、上記のような理由からドラフトでよりよい順位を確保するというのが、補強の上でかなり重要になってくる。大学で活躍した選手はある程度戦力として計算できるからだ。さらにここで良く出来ていると思うのが、ウェーバー制というヤツで、前年度の最下位チームから順に選手を指名できるという制度だ。
NFLは全32チームあり、それぞれが1巡指名権を持っているが、その中でも1番最初の指名権というものが存在し、これを全体1巡指名権という。当然この全体1巡指名権はかなりの価値を持つことになり、同じ1巡指名権でも32番目の指名権とは雲泥の差がある。
前年度の最下位チームは全体1巡指名権を保有していて、この指名権でカレッジの優秀選手を獲得するか、他チームから大物選手を獲得するかを選ぶことになる。このあたりは各チームの思惑とヘッドコーチの手腕が発揮されるところで、NFLの醍醐味の一つとなっている。
さらにこれにサラリーキャップといって、各チームの総年俸の上限が決められていて、高給取りの大物選手を多く抱えることが出来ないシステムがある。このNFLのサラリーキャップはMLBのような、金額を超えても超過分の罰金を払えば良いというようなものではなく、上限を絶対超えてはならないとなっている。MLB方式だと、結局は金のあるチームが有利になってしまうからだ。
※と、ここまで書いたが、2010年のNFLは選手会との労使協定が難航し、サラリーキャップ制は導入されていないとのこと。
と、そんな感じで徹底した戦力の均等化を実践しているため、NFLは毎年スリリングなリーグを展開している。自由競争が原則の民主主義の国で、社会主義的な、意外とも思われる運営をしているが、MLB、NBA、NHLを合わせた4大スポーツの中でも群を抜いて安定した収入を得ている。リーグの全チームが黒字という健全な経営をしているのはNFLだけなんだよね。これって驚異的だよ。
と、まぁ書きたいことは山ほどあるが、今回はこんなところにしておこう。日本だとプロスポーツというと野球とサッカーがまず思い浮かぶが、それほど潤っているという印象はない。野球なんかは企業がチームを抱えていて、赤字はその宣伝費くらいにしか考えていないんじゃないかと思うくらいだ。NFLでは各チームがそれぞれ1企業として独立していることを考えると、日本のプロ野球方式は古いんじゃないかと思う。Jリーグに関してはよく分からないから、何とも言えないけどね。
結局のところ何が言いたいかというと、NFLはキミが思っているよりはるかに面白いから、是非一度見てみてはどうだろうって話(・∀・)
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