県立施設「土屋文明記念文学館」で行われた文学講座に出席してきました。
演題「古典和歌と前衛短歌の旗手・塚本邦雄 写生でも主観でもなく」
演者は電気通信大学教授 島内景二氏でした。
氏は塚本邦雄の弟子で歌人、源氏研究者。
塚本はモダニズムと古典(特に新古今和歌集)を武器に、写生を追求してメインストリームだった「アララギ」に対抗します。
定家の新古今和歌集から虚構、主観に基づく新たな「リアリズム」、新しい価値観を創造したのです。
それが塚本の前衛短歌だったという事のようです。
浅学の身ですが、いくつか読んだ彼の短歌や小説(のような詩?)は確かに難解でした。
しかし、そこには物語があるのです。
自分が学生だった時、万葉は新古今和歌集などより上だ、と言う価値観を刷り込まれたような気がします。
その後ずいぶんして啄木や寺山修司の短歌に興味を覚え、特に寺山は虚構と思わずそのまま信じるととんでもないことになりそうなものでした。
こんな世界もあるのかと楽しくなりました。
そして塚本の世界もそうなのです。
虚構、前衛という手法を使ってはいますが、その本質は深く人間の内面を歌っています。
今日の講演はそんな自分の考えを改めて整理してもらったようで大変楽しめました。
その後市内の喫茶店で、友人の息子さんがリーダーを務めるクラリネット四重奏団の演奏を珈琲、ケーキ付きで聴くことができました。
ああ、いい一日だった。