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風をあつめて / エクレア雲

2004年07月13日 22時57分13秒 | about him
 先日は、午後から、「葛西臨海公園」 というところに行ってきた。

 葛飾区に住んでいたころは、環七を飛ばして、よく遊びに行っていたのだけれど。

 私の友人 (というか彼) が、行ったことがない、というので、連れて行ってあげることにしたのだ。 海が大好きな人なので、ほんの少しでも、潮風にあたってもらいたい、海の気分を味わってもらいたい、と思って。

 東京メトロ (この名称、慣れないなあ ... ) の東西線で、「葛西」 駅まで来て、そこからバスに乗った。 約十五分ほどで、到着。

 なまあたたかい海風に迎えられ、さっそくとばかりに、公園をまっぷたつに横切って、波打ち際まで向かった。 子どもたちが、はしゃぎながら、水遊びをしていた。 彼は、とてもうらやましがっていたが、水着を用意してこなかった。 タオルもない。 たしか遊泳禁止のはずなので、そこまで気が回らなかったのだ。

 仕方ないので、しばし砂浜で、子どもたちの歓声と波の音を聞きながら、潮風にあたった。 気温は相当高いはずだが、不快ではなく、むしろ、心地よかった。

 そのあと、しばらく公園内を散歩し、芝生のうえにビニール・シートを敷いて、寝転んだ。 夏の空に、吸い込まれそうになりながら、じっと、雲を見つめていた。

 そうしていると、どこからか、いきなりワンちゃんが飛び込んできて、彼のうえに乗っかり、顔じゅうぺろぺろぺろぺろやりはじめた。 半分寝ていた彼は、とつぜんの 「アタック」 に、びっくりしていた。

 飼い主の女の子が、「すみませーん」 と言ってあわててやって来た。 そして、じたばた暴れるワンちゃんを連れて、去っていった。

 こんなうれしいびっくりならば、大歓迎なので、ちょっぴり名残惜しい。

 二人で笑っていたら、そこへ、ヨチヨチ歩きの男の子がやって来て、たどたどしい手で、私のほっぺをさわった。

 私がうれしくて、その小さな手をとって、遊ぼうとしたら、お母さんがすぐに飛んできて、「こら、だめでしょう? おにいちゃんがいるんだから。 声かけるなら、ひとりのおねえちゃんにしろって、言ってるでしょ」 と言って、男の子をだっこして、去っていった。

 男の子が、こちらをじっと見ていたので、私たちは、手をふった。

 そのうち、今度は、五歳くらいの男の子が、張り裂けんばかりの声をあげて、泣きながら、私たちのほうへ突進してきた。 涙の粒が、あちこちに弾け飛んで、きらきらしていた。

 私たちは、その男の子を受け止め、どうどうとあやしてあげた。 どうやらだれかに叱られたらしく、口惜しくて泣いているようだったのだが、やがてお母さんがやって来て、「ごめんなさいね」 と言って、男の子を連れていった。

 どうも、その日、私たちは、「モテ日」 だったようだ。


 「いや、さっきの男の子、すごかったな」

 「うん。 全力で泣いてたよね」

 「子どもってのは、いいよな」

 「全身全霊で泣けるからね」


 石川 啄木の短歌で、


叱られて
わっと泣き出す子供心
その心にもなりてみたきかな


 というものがあるが、そんなこころは、もうとっくにどこかに置いてきてしまったことに気づき、私たちは、ふたたび空を見上げた。

 雲のうえに影ができて、まるで、エクレアのように見えた。

 もう夕方だった。

 夜、渋谷で用事があったので、そろそろ帰ろう、と、帰り支度をはじめた。

 彼が、まだ心残りがあったようなので、もう一度、散歩することにした。

 鳥類を放し飼いしている池があるようで(以前はなかったような気がする)、そちらのほうへ行ってみることにした。

 なんだか、「スワンプ地帯」 のように、池の周りは、草木がうっそうと茂っていて、じぶんがどこにいるのかを、わすれそうになった。 ねこもたくさんいた。 花もたくさん咲いていた。 みみずや毛虫もいた。 かにやバッタも。 通路脇には 「まむし注意」 の立て札が ... 。 ま、まむしって。 噛まれたら、たいへんだ。 うっかり変なところに足も踏み込めない。

 想像以上のワイルドさにちょっとびっくりした私が、「なんだか、生きものがたくさんいるね」 と言ったら、彼は、

 「そうだな。 でも、これが、ふつうなんだよな」 と言った。

 ああ。 そう言われてみると、そうかもしれない。 コンクリートに囲まれた都会が、人間のためだけに作られ、生きものたちを排除した、ふつうでない世界なのかも ... 。

 田舎育ちの、田舎者なのに、すっかり東京暮らしに慣れてしまって、わすれてしまっていた。

 彼は、東京にいても、まったく、子どものころのこころをわすれていないのだ。

 彼の服にアリなんかが ついていたりすると、私は、「アリがいるよ」 なんて言って、さっとはらってしまうけれど、彼は、「あ、そいつ、おれの友だちなのに ... 。 ジェニファー、どこ行った」 なんて冗談を言うくらい、生きものが好きな彼。 そして、そんな彼が好きなのだ。

 私たちは、幸福な気持ちで、東京の片隅の、海とスワンプの園に、別れを告げ、夜の都会へ落ちていった。



 BGM:
 Happy End ‘Kaze wo Atsumete’
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白いアイツ

2004年07月13日 22時00分00秒 | 覚書
 夏だ。 あつい。 とろけそう。

 夏生まれ、しし座の女としては、うれしい季節だが。

 生き物はたいてい好きなはずなのだけれど、どうしても、どうしても、苦手なものがいる。 夏といえば、おなじみの、ア・イ・ツ。 黒くて、てかてかして、カサカサ動く ... 。



 先日、友人と会ったときに、ちょっと不思議な話を聞いた。

 木造アパートに住んで、インディーズ・ライフを満喫している、男性の友人なのだが、ついさいきん、「白いゴキ○リ」 を見た、というのである。

 ええ? 白いアイツ? そんなばかな。 「やつら」 は黒か、赤茶に決まってる。

 その友人もそう思ったそうなのだが、どう見ても、アイツにしか見えなかったとのことだった。 おや、と思って、近寄ったら、流しの裏にさっと隠れてしまって、それっきり姿を消してしまったとか ... 。

 私が、別の知人にその話をしたら、その知人は、妙に納得して、それはすごい、と言いはじめた。

 いわく、「やつら」 は、生まれたばかりのときは、色素がなく、白いものだそうだ。

 そして、とても図太い神経を持っているように思えるけれど、ほんとうは、とても臆病で警戒心が強く、人間が 「やつら」 を忌み嫌っているように、「やつら」 も人間を嫌っているらしい。

 白い身体のときには、とくに用心して、なるべく人間の目にふれないところで行動しているとか。

 だから、白いアイツを見た私の友人は、貴重な存在だということなのだが ... 。

 今回は、あえて、Google 先生に頼らず、伝聞をそのままお伝えした。

 「白いアイツ」 の存在は、本当なのだろうか?!



 BGM:
 Michael Jackson ‘Black or White’
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