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ゴリラの鼻○そ

2004年07月22日 23時29分33秒 | 呑食
 ちょっと、重い記事がつづいてしまったので ...

 気分転換(?)に、

 こんなのいかがでしょう ... ?

 黒豆百パーセントで、シュガーレスとのことなので、女性の美容と健康にもってこい?!



 ところで。 私は、ゴリラは、動物園でしか観たことがないのだけれど (当たり前??)、そのたくましい肢体とは裏腹に、とっても、繊細そうな、きれいな目をしている、と思うのだが ...

 「ゴリラみたいになりたい」 な ... 。



 BGM:
 James Taylor ‘Gorilla’
コメント (10)
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夏の香り / happy child

2004年07月22日 22時14分16秒 | 現実と虚構のあいだに
 「幸福な子、と書いて、幸子」



 そのころ、サチコは三軒茶屋の、おれは池尻の、木造アパートに住んでいた。

 サチコは、離婚するまで旦那といっしょにやっていたバンド活動をやめて、渋谷のライヴハウスでピアノの弾き語りをしていた。

 大阪から出てきて、髪の毛をブルーに染めたおれは、沿線のここそこのライヴハウスで、自作詩の朗読を行っていた。

 おれたちが、たまたまなにかの縁で、下北沢音楽祭というイベントに出演し、はじめて出会ったときに、おたがいにこころひかれたのは、なにも不思議じゃないことのように思えた。

 家が近かったせいもあって、かんたんすぎるくらい、あっけなく、お互いの家を行き来するようになった。

 おれたちの部屋には、風呂がなかった。 エアコンもなかった。 夏場はおたがいにつらかった。

 けれども、おれたちは、身を寄せ合って生きるほかはないかのように、じっとりと汗をかきながら、肌を重ねていた。

 おれたちの身体は、ぎすぎすに痩せすぎていて、抱き合うと、痛いくらい、きしみをあげた。

 ある日。

 おれが、あまりの暑さに堪えかねて、「エアコン、買っちまおうかな」 とつぶやいたとき、サチコは、ポケットから、小さなスプレイの瓶を出して、おれの鼻先に、シュッとやった。

 グレープフルーツの香りがひろがった。

 サチコは、「気付け香水ってわけじゃないけど。 ちょっとは涼しくなるでしょう」 と言った。

 たしかに、さわやかで、涼やかな香りが、ほんの気持ち暑さを忘れさせてくれるような気がした。

 オレンジでは、甘ったるい。 レモンでは、すっぱすぎる。 いろいろ試してみたけれど、グレープフルーツがいちばん、すっきりするのだという。

 ふたりで銭湯に行った帰り道、グレープフルーツのコロンをシュッとやってもらって、身もこころも洗われたような気持ちになって、ふっと、空を見上げたら、まん丸の月がそこにあった。

 おれは、サチコの手をとって、ぎゅっと握りしめた。 サチコがそれに呼応するかのように、おれの手をぎゅっと握りかえしてくれたとき、おれは、生まれてはじめて、幸福感のようなものに身を貫かれ、その手を、さらに握りかえしても足りないくらい、動揺をかくしきれなかった。



 けれど。 サチコは、もう、ここにはいない。

 旦那と より を戻したのだ。

 アルコール障害の旦那の暴力から逃れるために、死にそうになりながら、やっと別れることができた、と、言っていたのに ... 。

 おれには、女のこころが わからない。

 なぜ、じぶんを傷つけた男のところへ戻ってしまうのか。

 もう、後戻りできないくらい、傷つけられた女は、無意識に、みずからしあわせになろうとすることを拒むのだろうか。

 あるいは、人と幸福を分かち合うことに、不安や戸惑いを覚えるのだろうか。

 「幸子」 のくせに。 あいつ。 どうして ... ?

 たとえ、どんな理由があろうとも、力ずくででも、サチコを守りとおすことのできなかったじぶんの ふがいなさに、かなしいやら、くやしいやら。 涙があふれた。

 おれたちは、いったい、なんのために出会ったのだろう?

 ときに、運命というやつは、残酷なことをもしてくれるのか。

 見上げれば、あのときの同じ、グレープフルーツみたいな月があるのに。





 ビル風の吹き荒れる街中をさまよいながら、狂気的な暑さをしのぐために避難した、地下室の喫茶店では、タバコのけむりと空調の匂いが混ざった冷気が漂い、吐きそうなくらい、不快だった。

 ウィリアム・サマセット・モームの、岩波文庫版 『月と六ペンス』 を読むおれの となりの席では、女が、一心不乱に、携帯電話でなにか入力をしていた。

 氷で薄まった、グレープフルーツ・ジュースを飲みながら。



 BGM:
 Tom Waits ‘Grapefruit Moon’
コメント (6)
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