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伝染性単核(球)症という病気があります。
文字通り、伝染する病です。
伝染を媒介するのが唾液なのです。
唾液を媒体とするので、主にキスを介して感染、「キス病」とも呼ばれます。
主な症状は、発熱、喉の痛み、リンパ節の腫れ、倦怠感、食欲不振などです。症状は数週間から数ヶ月続きますが、ほとんどの場合は自然に回復します。
と言うか、自然回復を待つしか方法が無いのです。抗生物質は全く役に立ちません。時に毒になるくらいです。
原因となるのはEBウィルス(エプスタイン・バーウイルス )と呼ばれる病原体で、殆どの方が一生のいずれかの時期に感染するようです。
感染する時期によって病態が変わります。
年齢による発症率
- 乳幼児期:感染しても症状が出ないことがほとんど
- 学童期:軽度から中等度の症状が出る
- 思春期・青年期:典型的な症状が出やすい
- 成人期:重症化のリスクがある。
上記の様に、伝染性単核球症として典型的な症状が出るのは、10代から20代の若年層なのです。
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先日の患者さん、20歳女性、3日前からの発熱、咽頭痛、右耳介後方の腫れ、強い倦怠感を訴え来院。咽頭痛は3日前に出現してから悪化の一途で、受診日には食事もできなくなっていたとの事でした。
喉を見ると、こんな感じで、両側の扁桃が真っ赤に貼れてクリーム色の苔状のものが一部その上を覆っていました。
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高熱、扁桃の腫れ、白苔 まず溶連菌感染症を疑いました。それでストレップテストという溶連菌の検査をしたら、微かにラインが浮き出た(様に見えました)それで、溶連菌感染症と診断し、血液検査施行し、同時に有効な抗生物質の点滴を施行しました。
点滴しながら施行した抹消血液検査、白血球は予想通り12,600と上昇していたのですが、白血球の内容を見て愕然としました。増えているはずの好中球が増えておらず、単球が12.6%と増えています。あららららら、これは・・・・伝染性単核球症ではないの!!頸部を触診してみたら、リンパ腺がゴロゴロ腫大していました。
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こんな風にね。(写真は患者さんのものではありません)
伝染性単核球症の疑いが強いです。食べられないなど重症感があるので、そして医療関係の学生さんで実習期間中だという事ですから、入院しちゃった方が良い様に思うのですがと提案しました。母子ともにしばし考えておられましたが、考慮の末、入院に同意していただき、母の運転する車で病院まで移動し、入院されました。この病気、全身疾患で舐めてはいけません。実習の事はとりあえず棚上げしてゆっくり療養に専念していただくのが賢明です。
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入院を許可していただいたK病院のY医師。丁寧な対応ありがとうございました。ひと昔、ふた昔前は、当直の医師、態度でかいやつが多く、なるべく仕事したくないという態度が見え見えで、なかなか入院させてくれませんでした。最近は、昔よりも早期に退院させますから、退院後の在宅での医療の面倒を見てもらうために、開業医と仲良くしないといけなくなっているのです。もう一つ、日本全体が豊かになって、ヘンコな性格の人が若い人には少なくなったと私は感じています。若い医師。本当に人間的に素敵な方が多いです。年寄りは、私が私がという我儘村の村長さんみたいな方々が多いですねえ。(自戒を含めてトホホです)
若い方の扁桃炎、結構な確率で伝染性単核症が隠れています。この病気を溶連菌感染症と誤診してペニシリン系の抗生物質を処方してしまうと、必ずと言っていいほど手ひどい薬疹が出現します。
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私も過去にサワシリンを処方し、一度やらかしてしまいました。
無事に治癒してよかったですけれども・・・
まとめ、若者で、熱が高く、喉が痛くなって、だるくて、首や耳の周囲が腫れてきたりしたら、この病気を思い出してください。潜伏期間は長くて、4週から6週と言われています。
1か月から2か月前に誰か新たなパートナーとキスをしたかなんて聞きにくいですよねぇ!!結構医者泣かせの病気なのでございます。
【公式】小柳ゆき「あなたのキスを数えましょう~You were mine~」(MV) YUKI KOYANAGI /Anatano Kiss Wo Kazoemashou (1stシングル)