・メラノーマに対する免疫療法では特別な抗体分子(抗PD-1抗体・抗PD-L1抗体)を投与することで免疫力をブーストし、免疫の力で、がん細胞を殺せるようになる
・免疫療法は私たちの自然な免疫力を利用する治療法であり、古い抗がん剤にくらべて高い効果と安全性をもっている
・免疫療法は全ての患者に対して効くわけではない
・一定数の患者たちは、免疫療法をおこなっても免疫たちが、がん細胞を攻撃してくれなかった
・効果の差が患者個人の遺伝的な違いのせいではなく「腸内細菌の違い」にあると考えたから「糞便移植」を実験してみた
・免疫療法で効果があった患者から糞便を取り出し、効果がなかった患者の腸内に移植した
・糞便移植を受けた患者の40%で免疫療法が効くように変化
・最も効果があった患者では、がんの縮小が進んで検出できなくなっていた
・改善が起きた患者の血中には、新たな抗体が存在するとわかった
・新たな抗体は、移植された糞便に存在する細菌に対して、患者の体の免疫システムが働いて、作られたもの
・この結果は、特定の種類の腸内細菌のために作られた抗体が、がん細胞に対する攻撃に転用されていることを示す
・患者の体にとって「新参者」の腸内細菌が増えれば増えるほど、T細胞(がんを殺す細胞)の活性化が進み、免疫の足を引っ張る物質(インターロイキン‐8)が減少していることが示さた
・研究成果は免疫療法において、特定種類の細菌に対する抗体が、がん細胞の攻撃にも使えることが示された
・将来的には細菌や、細菌から抽出した有効成分を詰めたカプセルの経口摂取を計画している
抗がん剤の致命的な有害事象に、がん薬物療法の未来を疑い、毒性の強い治療に辟易とした頃に夢見た“毒性の無い治療薬を開発したい”という思いは今も色褪せない。がん薬物療法の魔法のBulletを求めて彷徨したい。
そして究極のがん薬物療法は「予防」である。がんの予防薬の開発は治療薬の開発よりも越えるべきハードルが遥かに高い。抗悪性腫瘍薬では、やむなく許容された有害事象も、化学発がん予防薬においては微塵も許されないだろう。化学発がん予防のヒントをつかむことができれば、これに勝ることはないだろう。精進したい。