「アンティファ」とは何か、早わかりQ&A （WSJ）
過去数カ月、米国の諸都市で抗議活動が行われているが、その中に「アンティファ」と名乗る人々がいる。デモ隊の一部は暴徒化している。オレゴン州ポートランドで8月29日にトランプ大統領支持派の1人が死亡した事件で、警察はアンティファ支持を自称する人物について調べている。「アンティファ」を以下にまとめた。
「アンティファ」とはなにか
アンティファは「アンティファシスト（反ファシスト）」の略称。グループや個人で活動する緩やかなネットワークで、2017年にバージニア州シャーロッツビルで行われた白人至上主義者の集会「ユナイト・ザ・ライト」の後、注目を集めた。
アンティファには中央指導的な組織構造がなく、正式なメンバー制度もない。その代わり、分散したネットワークがその場その場で人種差別反対活動を調整していることが、ピッツバーグ大学のマイケル・ケニー教授や超党派の調査研究グループ「ソウファンセンター」の過激主義研究者であるコリン・クラーク氏の報告で明らかにされている。
名誉毀損防止同盟（ADL）によれば、アンティファのイデオロギーは、「1920年代および30年代に人々が街頭でナチスともっと積極的に戦っていれば、ドイツでナチスが権力を握ることはなかったという考えに立脚している」。そして、「ほとんどのアンティファは無政府主義運動や極左から生まれているが、2016年の大統領選以降、もっと主流寄りの政治的背景を持つ人々も仲間に加わっている」のだという。
多くの人は、社会主義や無政府主義などの他の理由で参加している。研究者らは、アンティファに共感する人々は反政府、反エスタブリッシュメント思想を持っている場合が少なくないと指摘している。
アンティファの戦法とは
アンティファの活動家は、白人至上主義者グループのデモに積極的に抗議することで知られている。ADLによると、デモに抗議するほとんどのアンティファの傾向は非暴力的だが、極右グループとの衝突で何度か暴力に発展している。
この運動の活動の多くは、相手の身元や職業などの個人情報を暴露する「ドクシング」（晒し）といった戦法を用いており、このことは他のグループから広く批判されている。さらに、研究者によれば、アンティファに関わる一部の人々、特に無政府主義思想を持つ人々は身体的な暴力に訴えることもあるという。
これ以外にも、アンティファを自称する人々による行動は、偏狭な考えを持っているとみなした相手に怒声を浴びせることから、より過激な手段までさまざまだ。警察は2017年、カリフォルニア大学バークレー校で起きた、保守系メディア「ブライトバート・ニュース・ネットワーク」の当時の記者による講演中止を求めるデモで、火炎瓶を投げ、器物を損壊した行為とアンティファとの関連を認めた。これらの衝突は超党派の非難を呼んだ。
アンティファの活動家は、平和的抗議活動を擁護する立場を評価されることもあれば、扇動的な姿勢を批判されることもある。
いつ、どのように始まったのか
ケニー氏とクラーク氏のリポートによると、少なくともオレゴン州ポートランドで、スキンヘッドミュージックの音楽フェスティバルに呼応してあるグループが設立された2007年以降については、米国の反人種差別主義者はアンティファという名の下に組織されてきた。
リポートによると、アンティファの系譜は、反ファシストグループがドイツでアドルフ・ヒトラーのイデオロギーと闘い、欧州のその他の国でもファシストグループと闘っていた1930年代にまで遡る。最近数十年は、スキンヘッドを象徴とする欧米のネオナチムーブメントに対抗する反人種差別主義者やパンク音楽のファンを引きつけているという。
アンティファのメンバーとは
研究者らは、どれくらいのメンバーがアンティファで活動しているのかを把握するのは不可能だと指摘している。アンティファには統一した組織がないからだ。だが、ケニー氏とクラーク氏によると、2016年にトランプ氏が大統領に選ばれた後、アンティファの活動は増えたという。
「ブラック・ライブズ・マター（黒人の命は大切＝BLM）」運動のグループと関連はあるか
ADLの「センター・オン・エクストリーミズム」のバイスプレジデント、オーレン・セガール氏はインタビューで、「アンティファが全国のBLM系の抗議活動を組織、調整している証拠はない」とのADLの見解を明らかにした。
ただ同氏は、BLMは多くの反人種差別主義者や社会正義活動家を引きつけており、これらの人が「アンティファの活動にも参加する可能性はあり、主なつながりは反人種差別という共通項だ」と述べている。
https://jp.wsj.com/articles/SB10557005316144304846804586606211065002514
過去数カ月、米国の諸都市で抗議活動が行われているが、その中に「アンティファ」と名乗る人々がいる。デモ隊の一部は暴徒化している。オレゴン州ポートランドで8月29日にトランプ大統領支持派の1人が死亡した事件で、警察はアンティファ支持を自称する人物について調べている。「アンティファ」を以下にまとめた。
「アンティファ」とはなにか
アンティファは「アンティファシスト（反ファシスト）」の略称。グループや個人で活動する緩やかなネットワークで、2017年にバージニア州シャーロッツビルで行われた白人至上主義者の集会「ユナイト・ザ・ライト」の後、注目を集めた。
アンティファには中央指導的な組織構造がなく、正式なメンバー制度もない。その代わり、分散したネットワークがその場その場で人種差別反対活動を調整していることが、ピッツバーグ大学のマイケル・ケニー教授や超党派の調査研究グループ「ソウファンセンター」の過激主義研究者であるコリン・クラーク氏の報告で明らかにされている。
名誉毀損防止同盟（ADL）によれば、アンティファのイデオロギーは、「1920年代および30年代に人々が街頭でナチスともっと積極的に戦っていれば、ドイツでナチスが権力を握ることはなかったという考えに立脚している」。そして、「ほとんどのアンティファは無政府主義運動や極左から生まれているが、2016年の大統領選以降、もっと主流寄りの政治的背景を持つ人々も仲間に加わっている」のだという。
多くの人は、社会主義や無政府主義などの他の理由で参加している。研究者らは、アンティファに共感する人々は反政府、反エスタブリッシュメント思想を持っている場合が少なくないと指摘している。
アンティファの戦法とは
アンティファの活動家は、白人至上主義者グループのデモに積極的に抗議することで知られている。ADLによると、デモに抗議するほとんどのアンティファの傾向は非暴力的だが、極右グループとの衝突で何度か暴力に発展している。
この運動の活動の多くは、相手の身元や職業などの個人情報を暴露する「ドクシング」（晒し）といった戦法を用いており、このことは他のグループから広く批判されている。さらに、研究者によれば、アンティファに関わる一部の人々、特に無政府主義思想を持つ人々は身体的な暴力に訴えることもあるという。
これ以外にも、アンティファを自称する人々による行動は、偏狭な考えを持っているとみなした相手に怒声を浴びせることから、より過激な手段までさまざまだ。警察は2017年、カリフォルニア大学バークレー校で起きた、保守系メディア「ブライトバート・ニュース・ネットワーク」の当時の記者による講演中止を求めるデモで、火炎瓶を投げ、器物を損壊した行為とアンティファとの関連を認めた。これらの衝突は超党派の非難を呼んだ。
アンティファの活動家は、平和的抗議活動を擁護する立場を評価されることもあれば、扇動的な姿勢を批判されることもある。
いつ、どのように始まったのか
ケニー氏とクラーク氏のリポートによると、少なくともオレゴン州ポートランドで、スキンヘッドミュージックの音楽フェスティバルに呼応してあるグループが設立された2007年以降については、米国の反人種差別主義者はアンティファという名の下に組織されてきた。
リポートによると、アンティファの系譜は、反ファシストグループがドイツでアドルフ・ヒトラーのイデオロギーと闘い、欧州のその他の国でもファシストグループと闘っていた1930年代にまで遡る。最近数十年は、スキンヘッドを象徴とする欧米のネオナチムーブメントに対抗する反人種差別主義者やパンク音楽のファンを引きつけているという。
アンティファのメンバーとは
研究者らは、どれくらいのメンバーがアンティファで活動しているのかを把握するのは不可能だと指摘している。アンティファには統一した組織がないからだ。だが、ケニー氏とクラーク氏によると、2016年にトランプ氏が大統領に選ばれた後、アンティファの活動は増えたという。
「ブラック・ライブズ・マター（黒人の命は大切＝BLM）」運動のグループと関連はあるか
ADLの「センター・オン・エクストリーミズム」のバイスプレジデント、オーレン・セガール氏はインタビューで、「アンティファが全国のBLM系の抗議活動を組織、調整している証拠はない」とのADLの見解を明らかにした。
ただ同氏は、BLMは多くの反人種差別主義者や社会正義活動家を引きつけており、これらの人が「アンティファの活動にも参加する可能性はあり、主なつながりは反人種差別という共通項だ」と述べている。
https://jp.wsj.com/articles/SB10557005316144304846804586606211065002514
