ウクライナ戦争以後、一時持ち直した仮想通貨は、LUNA破綻の煽りを受けたり、欧米政府の金融引き締めによって、下落が続いていました。しかし、それにさらに拍車をかける、というか別次元の暴落をさせるような出来事が起きました。
それは、FTXという世界第2位の仮想通貨取引所の破綻です。
きっかけは、こうでした。世界第1位の取引所バイナンスのオーナー、チャンポン・ジャオが、FTXの関連会社、アラメダの資産の大部分が、FTXが製造した仮想通貨FTTであることをTwitterで暴露したのです。「だから自分は、FTTをすべて売却する」とTwitter上でつぶやきました。
例えばですが、ロッテの子会社のひとつが、その資産の大部分がロッテが製造した商品券だったらどうなるでしょうか? それをもとに何百億円という資産評価額が計上されていたとしたら。いかに、これが健全性に欠ける話かは、ご理解頂けると思います。
その結果、アラメダばかりか、その本社のFTXの信頼性も急落し、顧客による取り付け騒ぎが起きました。一斉に、そこに仮想通貨を預けていた人たちが、自分の仮想通貨や米ドルを引き出し始めたのです。しかし、FTXは既に顧客の資産の何割かを別のことに使い込んでいました。その結果、資産ショートを起こしてしまい、出金停止、操業停止、大パニックが起きました。
日本にも、FTXの子会社があり、同じく出金停止になり、一昨日には関東財務局による業務停止命令を受けました。昨日には、金融大臣も懸念を表明しました。また、一時期、日本の仮想通貨トレードの大部分を担っていたLiquidは今年初め、FTXに買収され、FTXJapanの管理下に入っていました。ですから、そこも今は操業停止になっています。
そして、今日11月12日現在、FTXの破綻に関連して130社が連鎖的に倒産しました。FTXは正式に連邦法による破産手続きに入りました。
★ 今後の可能性
少なくとも、明らかに疑いなく、今後、当分の間は下落が続くでしょう。日本円換算で少なくとも1BTC=100万円くらいまでは下落するでしょうか。わかりません。その後は、二つの可能性があります。
1、ビットコインに不利な可能性
1-1、USDTテザー
この煽りを受けて、ステーブルコインのUSDTが破綻する可能性があります。ステーブルコインとは、米ドルなど、法定通貨とペッグされた仮想通貨のことです。米ドルなどとの違いは、私企業が発行していることと、電子通貨として送受信が簡単で、取引所なり個人ウォレットなどに容易に送れるということです。そのうち、香港の企業テザー社の発行したコインがUSDTでした。
ところで、ビットコインとUSDTとの間に大きな相関があるのです。まず、2020年末のビットコインの急騰は、大部分がテザー社のUSDTによって買い支えられたものでした。さらに、2021年初頭に発覚したことですが、テザー社は発行したコインUSDTと米ドルとの交換はいつでも可能としていましたが、その担保の一部がビットコインだったのです。
要するに、テザー社はUSDTを量産し、それでビットコインを購入し、ビットコイン価格を釣り上げた。そして、そのビットコインをUSDTの交換原資の一部とした。そうとも受け取られかねない怪しい構図が、ビットコインとUSDTとの間にありました。
そればかりか、少なくとも2021年の半ばごろまでは、仮想通貨取引の50%以上が、テザー社のUSDTを使って行われていました。これは、節税という動機もあったようです。米国や多くの国では、仮想通貨間の取引には課税はされまでした。米ドルなど法定通貨に換えた時点で、利益とみなされ課税されました。よって、USDTを使う限り、頻繁なトレードでも課税はされない。そういうスキームがあるようです。
そういう構造のUSTDテザーなのですが、今まで、私が書きましたことを思い出してみて下さい。USDTの交換原資の何割かがビットコインなのです。よって、何かの拍子にビットコインが暴落したら、どうなるでしょうか。USDTがショートしてしまう可能性があります。実際に、今まで複数のステーブルコインが、そうした原因によって資産ショートを起こして破綻していました。今年ですと、LUNAやTeraも記憶に新しいです。ところで、もし仮想通貨界のステーブルコインの大御所たるUSDTテザーが暴落したらどうなるか。多くの仮想通貨は、それによって、買い支えられていたのですから。破綻が相次ぎ、暴落は底なしになる可能性があります。
1-2、エルサルバドル
このブログでも、おそらく紹介したと思うのですが、2020年にビットコインを法定通貨に制定した国がありました。エルサルバドルです。そして、膨大にビットコインを買い入れましたが、このところの暴落で6000万ドルもの莫大な含み損を出しています。米国の経済学者ヌリエル・ルービニによると、このようなエルサルバドルは既に破産状態にあるようです。
もし、ビットコインがきっかけで一国が破産するようなことになれば、ビットコインや仮想通貨に対する一層の信用不安が起きるでしょう。
1-3、マイクロストラテジー
2020年のビットコインの急成長期、大きく成長した企業がありました。コンピューターソフトの会社のマイクロストラテジー社です。そこのCEOが、新型コロナ大流行の結果、しばらく使い道のなくなった資産の多くを、将来のインフレに備えてビットコインの購入に充てる、と宣言したのです。そして、実行して、その後、ビットコインが急騰しましたから、会社は莫大な利益を計上しました。
そこまではよかったのですが、この会社は調子に乗って、金融機関から莫大な融資を受けては、それでビットコインを買うことを繰り返したのです。ビットコインが高値になっても、また繰り返し、今でも続けています。そして、この通りの暴落ですから、今は20億ドルもの含み損を出しています。日本円に換算すると2800億円もの含み損。どう思われますか? 企業のCEOマイケル・セイラーは、あたかもビットコインは神であるかのように宣言し、狂信的に売るつもりはないと発言しているのですが・・・。
(画像は、Twitterでのマイケル・セイラーのトップ絵)
会社の方針がどうであれ、この会社が破綻して債権者によってそのビットコインが強制的に売却された場合は、額が多いだけに確実にビットコインや他の仮想通貨の下落を招くでしょうし、仮想通貨界における精神的な打撃も計り知れないでしょう。
不安要素は他にもありますが、ぱっと見、特にこの三要素が新たな不安として浮かびます。
2、ビットコインに有利な可能性
次章の「私の損害」でも触れますが、今のところ、法定通貨がインフレを起こしている地域では、一定の需要があり、よって、ビットコインの高騰が続いてきました。また、法定通貨が破綻を起こすたびに、その国でやたらとビットコインが買われることも、2013年のキプロス危機以降、続いてきました。銀行は規制されても、ビットコインは高い流動性と使い勝手を持っていて、その換金や送金は規制を逃れやすかった為です。そして、ビットコインは、仮想通貨の中では価値の保存能力に長けていました。
それ自体は無価値なのですが、希少性、安定性、公正性があったためです。発行量が決まっていて、システム的に量が限られています。また、世界中の多くのパソコンがマイニングしているので、改ざんは不可能に近く、同じ理由で存在が安定しています。どこかの国や会社が消えれば、存在が消えるわけではありません。世界中のマイナーやノードのPCの中にバックアップがあるわけですから。そういうわけで、一旦価値が認められてしまうと、引く手あまたになる設計があったのです。
少なくとも、ハイパーインフレを起こしていて、全く信用を失っている破産国家の通貨よりは、信頼性の高い通貨とみなされる面があったのです。
ところで、今、現在、通貨がクラッシュしそうな国は、この全世界で山のようにあります。また、米ドルなどは、SWIFTやその国の規制当局の規制を受けますから、破産国家では、何かと送金や保管がしにくい面があります。
もし、欧米の金利引き上げについていけずに、通貨が破綻する国家が続出すれば、それがビットコインの需要を今までそうだったように、再び喚起し、ビットコイン復活のきっかけになる可能性も多少はあるでしょう。
★、ビットコインに有利な要素
ところで、ビットコインにはリスクがありますが、日本円にもリスクがあります。ですので、確かにビットコインはある段階で原資は抜いておくべきですが、かといって日本円のまま預金にして塩漬けしておくことが、正しい資産の保管方法だとは決して思いません。私は、日本円も生活に必要な分は預金として持ちますが、それ以外は、別のアセットに換えておくのが、より安全な資産防衛の方法だろうと思っています。
それに、今後、欧米との金利の引き上げ競争に敗れた複数の国で、激しいインフレが起きるかもしれません。そうした国で、送金や決済手段として、今までそうだったように、再びビットコインが重宝される可能性もあります。
過去は一つですし、現在も一つです。真理も一つです。しかし、一つではないものがあります。それは、未来です。未来は一つとは限らず、いくつかの未来があり、なるべく多くの未来に備えた方が安全です。来年は、この未来かもしれないが、あの未来かもしれない。もしかしたら、こうした原作者不明で普遍的で公共性の高いビットコインなどが重宝される未来もあるかもしれない。そうした一つの未来に備えて、元手を抜いた残りのビットコインは、評価額は減っていくでしょうが、売らずに残しておこうと思います。
それは、FTXという世界第2位の仮想通貨取引所の破綻です。
きっかけは、こうでした。世界第1位の取引所バイナンスのオーナー、チャンポン・ジャオが、FTXの関連会社、アラメダの資産の大部分が、FTXが製造した仮想通貨FTTであることをTwitterで暴露したのです。「だから自分は、FTTをすべて売却する」とTwitter上でつぶやきました。
As part of Binance’s exit from FTX equity last year, Binance received roughly $2.1 billion USD equivalent in cash (BUSD and FTT). Due to recent revelations that have came to light, we have decided to liquidate any remaining FTT on our books. 1/4
— CZ 🔶 Binance (@cz_binance) November 6, 2022
例えばですが、ロッテの子会社のひとつが、その資産の大部分がロッテが製造した商品券だったらどうなるでしょうか? それをもとに何百億円という資産評価額が計上されていたとしたら。いかに、これが健全性に欠ける話かは、ご理解頂けると思います。
その結果、アラメダばかりか、その本社のFTXの信頼性も急落し、顧客による取り付け騒ぎが起きました。一斉に、そこに仮想通貨を預けていた人たちが、自分の仮想通貨や米ドルを引き出し始めたのです。しかし、FTXは既に顧客の資産の何割かを別のことに使い込んでいました。その結果、資産ショートを起こしてしまい、出金停止、操業停止、大パニックが起きました。
日本にも、FTXの子会社があり、同じく出金停止になり、一昨日には関東財務局による業務停止命令を受けました。昨日には、金融大臣も懸念を表明しました。また、一時期、日本の仮想通貨トレードの大部分を担っていたLiquidは今年初め、FTXに買収され、FTXJapanの管理下に入っていました。ですから、そこも今は操業停止になっています。
そして、今日11月12日現在、FTXの破綻に関連して130社が連鎖的に倒産しました。FTXは正式に連邦法による破産手続きに入りました。
★ 今後の可能性
少なくとも、明らかに疑いなく、今後、当分の間は下落が続くでしょう。日本円換算で少なくとも1BTC=100万円くらいまでは下落するでしょうか。わかりません。その後は、二つの可能性があります。
1、ビットコインに不利な可能性
1-1、USDTテザー
この煽りを受けて、ステーブルコインのUSDTが破綻する可能性があります。ステーブルコインとは、米ドルなど、法定通貨とペッグされた仮想通貨のことです。米ドルなどとの違いは、私企業が発行していることと、電子通貨として送受信が簡単で、取引所なり個人ウォレットなどに容易に送れるということです。そのうち、香港の企業テザー社の発行したコインがUSDTでした。
ところで、ビットコインとUSDTとの間に大きな相関があるのです。まず、2020年末のビットコインの急騰は、大部分がテザー社のUSDTによって買い支えられたものでした。さらに、2021年初頭に発覚したことですが、テザー社は発行したコインUSDTと米ドルとの交換はいつでも可能としていましたが、その担保の一部がビットコインだったのです。
要するに、テザー社はUSDTを量産し、それでビットコインを購入し、ビットコイン価格を釣り上げた。そして、そのビットコインをUSDTの交換原資の一部とした。そうとも受け取られかねない怪しい構図が、ビットコインとUSDTとの間にありました。
そればかりか、少なくとも2021年の半ばごろまでは、仮想通貨取引の50%以上が、テザー社のUSDTを使って行われていました。これは、節税という動機もあったようです。米国や多くの国では、仮想通貨間の取引には課税はされまでした。米ドルなど法定通貨に換えた時点で、利益とみなされ課税されました。よって、USDTを使う限り、頻繁なトレードでも課税はされない。そういうスキームがあるようです。
そういう構造のUSTDテザーなのですが、今まで、私が書きましたことを思い出してみて下さい。USDTの交換原資の何割かがビットコインなのです。よって、何かの拍子にビットコインが暴落したら、どうなるでしょうか。USDTがショートしてしまう可能性があります。実際に、今まで複数のステーブルコインが、そうした原因によって資産ショートを起こして破綻していました。今年ですと、LUNAやTeraも記憶に新しいです。ところで、もし仮想通貨界のステーブルコインの大御所たるUSDTテザーが暴落したらどうなるか。多くの仮想通貨は、それによって、買い支えられていたのですから。破綻が相次ぎ、暴落は底なしになる可能性があります。
1-2、エルサルバドル
このブログでも、おそらく紹介したと思うのですが、2020年にビットコインを法定通貨に制定した国がありました。エルサルバドルです。そして、膨大にビットコインを買い入れましたが、このところの暴落で6000万ドルもの莫大な含み損を出しています。米国の経済学者ヌリエル・ルービニによると、このようなエルサルバドルは既に破産状態にあるようです。
El Salvador is bankrupt regardless of whether it had any Bitcoin in FTX. With BTC at these levels they are INSOLVENT. So that criminal Bukele should be in jail for the rest of his life regardless of. He has bankrupted his country in spite of the better advice or IMF & all others
— Nouriel Roubini (@Nouriel) November 10, 2022
もし、ビットコインがきっかけで一国が破産するようなことになれば、ビットコインや仮想通貨に対する一層の信用不安が起きるでしょう。
1-3、マイクロストラテジー
2020年のビットコインの急成長期、大きく成長した企業がありました。コンピューターソフトの会社のマイクロストラテジー社です。そこのCEOが、新型コロナ大流行の結果、しばらく使い道のなくなった資産の多くを、将来のインフレに備えてビットコインの購入に充てる、と宣言したのです。そして、実行して、その後、ビットコインが急騰しましたから、会社は莫大な利益を計上しました。
そこまではよかったのですが、この会社は調子に乗って、金融機関から莫大な融資を受けては、それでビットコインを買うことを繰り返したのです。ビットコインが高値になっても、また繰り返し、今でも続けています。そして、この通りの暴落ですから、今は20億ドルもの含み損を出しています。日本円に換算すると2800億円もの含み損。どう思われますか? 企業のCEOマイケル・セイラーは、あたかもビットコインは神であるかのように宣言し、狂信的に売るつもりはないと発言しているのですが・・・。
(画像は、Twitterでのマイケル・セイラーのトップ絵)
会社の方針がどうであれ、この会社が破綻して債権者によってそのビットコインが強制的に売却された場合は、額が多いだけに確実にビットコインや他の仮想通貨の下落を招くでしょうし、仮想通貨界における精神的な打撃も計り知れないでしょう。
不安要素は他にもありますが、ぱっと見、特にこの三要素が新たな不安として浮かびます。
2、ビットコインに有利な可能性
次章の「私の損害」でも触れますが、今のところ、法定通貨がインフレを起こしている地域では、一定の需要があり、よって、ビットコインの高騰が続いてきました。また、法定通貨が破綻を起こすたびに、その国でやたらとビットコインが買われることも、2013年のキプロス危機以降、続いてきました。銀行は規制されても、ビットコインは高い流動性と使い勝手を持っていて、その換金や送金は規制を逃れやすかった為です。そして、ビットコインは、仮想通貨の中では価値の保存能力に長けていました。
それ自体は無価値なのですが、希少性、安定性、公正性があったためです。発行量が決まっていて、システム的に量が限られています。また、世界中の多くのパソコンがマイニングしているので、改ざんは不可能に近く、同じ理由で存在が安定しています。どこかの国や会社が消えれば、存在が消えるわけではありません。世界中のマイナーやノードのPCの中にバックアップがあるわけですから。そういうわけで、一旦価値が認められてしまうと、引く手あまたになる設計があったのです。
少なくとも、ハイパーインフレを起こしていて、全く信用を失っている破産国家の通貨よりは、信頼性の高い通貨とみなされる面があったのです。
ところで、今、現在、通貨がクラッシュしそうな国は、この全世界で山のようにあります。また、米ドルなどは、SWIFTやその国の規制当局の規制を受けますから、破産国家では、何かと送金や保管がしにくい面があります。
もし、欧米の金利引き上げについていけずに、通貨が破綻する国家が続出すれば、それがビットコインの需要を今までそうだったように、再び喚起し、ビットコイン復活のきっかけになる可能性も多少はあるでしょう。
★、ビットコインに有利な要素
ところで、ビットコインにはリスクがありますが、日本円にもリスクがあります。ですので、確かにビットコインはある段階で原資は抜いておくべきですが、かといって日本円のまま預金にして塩漬けしておくことが、正しい資産の保管方法だとは決して思いません。私は、日本円も生活に必要な分は預金として持ちますが、それ以外は、別のアセットに換えておくのが、より安全な資産防衛の方法だろうと思っています。
それに、今後、欧米との金利の引き上げ競争に敗れた複数の国で、激しいインフレが起きるかもしれません。そうした国で、送金や決済手段として、今までそうだったように、再びビットコインが重宝される可能性もあります。
過去は一つですし、現在も一つです。真理も一つです。しかし、一つではないものがあります。それは、未来です。未来は一つとは限らず、いくつかの未来があり、なるべく多くの未来に備えた方が安全です。来年は、この未来かもしれないが、あの未来かもしれない。もしかしたら、こうした原作者不明で普遍的で公共性の高いビットコインなどが重宝される未来もあるかもしれない。そうした一つの未来に備えて、元手を抜いた残りのビットコインは、評価額は減っていくでしょうが、売らずに残しておこうと思います。