M.シュナウザー・チェルト君のパパ、「てつんどの独り言」 

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ウンブリアのアッシジ

2018-10-07 | エッセイ


 僕がウンブリアに心惹かれたのは、隣の州、トスカーナのオルチャの美しい丘や、糸杉の風景といった人工的な景色に飽き始めていたからかもしれない。

 トスカーナのシエナから南へ、モンテプルチャーノ、モンタルチーノなどの葡萄畑の続く大地は自然の丘ではない。石灰質の土地を、人間が苦労して削り耕して牧草地や畑にしたのだ。春になると、その灰色がかった独特の粘土質のクレタを、大きなグレーダーを使って掘り返し、土地改良をしながら数年かけて、美しいなだらかな緑の丘にしていく。そこに計算された美しい糸杉を植えれば、トスカーナ的な美しさだ。



<ウンブリア州 Google>

 乾燥したトスカーナを離れて車がウンブリアに入ると、とたんに自然が立ち上がってくる。目に映るのはみずみずしい自然だ。穏やかな森、それに溶け込んだ小さな集落、緑がその丘を囲んでいる。ああ、ここには水があり、そのままの自然があると感じるのだ。イタリアの「緑の心臓」と呼ばれるわけが解る気がする。



<ウンブリアの眺め>*1

 ウンブリアは、イタリア唯一の海のない内陸国。州都はペルージア。ウンブリア州は乱暴に言うと一部を除いて公共交通の便がとても悪い。仕方なく、車での旅となる。

 ウンブリアに来たからには、ペルージアとアッシジは見逃せない。このふたつの町は、実は20㎞位しか離れていない隣りあわせの町だ。つまり、ペルージアの朝焼けは、アッシジの丘から始まり、アッシジの日没は、ペルージアの丘に沈む。この二の町は、お互いに見通せる町なのだ。

 アッシジは、死後、聖人に列せられたフランチェスコ(1181?~1226)の生まれた町で、その功績を称える大聖堂が13世紀に完成したことで、世界中のカソリック信徒の憧れの巡礼地として町となっている。彼は豊かな家に生まれたが、清貧を守ったことで知られ、「もう一人のキリスト」とさえ言われるほどキリストの教えに忠実に従ったと言われている。



<アッシジの全景>*2

 ホテルは、フランチェスコ大聖堂に近いウインザー・サボイヤに取った。行ってみて分かったことだが、アッシジへの巡礼者用のバスの大型駐車場が目の下にあり、眺めはいいが、人通りの絶えない場所にあった。しかし、窓からは、右手にはフランチェスコの大聖堂が見え、遠くにはペルージアのある丘が見える素晴らしい眺めではあった。



<バスの駐車場>

 ランチェスコ大聖堂は二階造りで、下段はロマネスク、上はゴシック様式で、どちらの壁面にも数多くのフレスコ画が描かれている。残念ながら、1997年に襲った大地震で、ここのフレスコ画も大変な損害を受け、今も修復が続いているようだった。



<サンフランチェスコ大聖堂>



<バラの窓が美しい>

 フランチェスコ大聖堂は、僕の想像以上に人工的に整ったものだったので、内心がっかりした。計算しつくされた大聖堂には、自然が感じられないのだ。しかし、アッシジの町そのものは、古くからの情緒を保っていて、楽しく、懐かしい雰囲気だった。サンフランチェスコ通りの店を見て歩いていたら、路地の角に小さなお土産屋を見つけた。もともと、あまり記念の土産という考えはないので、ぶらりと店を見たに過ぎない。が、僕の目をに赤いグラスが目に入った。まるで、日本酒の盃ぐらいの大きさで、美しい焼き物だった。かさ張るものでもなかったから、それを買った。店の人に聞いたら、エッグスタンドだといわれた。用途はどうでもいいやと、そのまま買ってきた。



<赤い猪口>

 アッシジで気に入ったのは、大聖堂ではなくて、:聖フランチェスコの弟子、サンタキアーラのためのピンクと白の大理石のサンタキアーラ教会だった。女性的なやしさの感じられる姿が美しい。さらに、そのテラスからのウンブリアの伸びやかな盆地の眺めが僕をやさしく解きほぐしてくれる。



<サンタキアーラ教会>*3

 馬鹿となんだかで、さらに高いところに上ってみた。それがロッカと呼ばれる、昔の城壁のある山の上だった。ここからの眺めは、間違いなく見る人の心を構える。



<ロッカから見下ろすアッシジ>

 帰りはアッシジからトラメジーノ湖の側を走り、ベットレからアウトストラーダA1(太陽の道路)でミラノまで帰ってきた。いい旅だった。




P.S. クレジット情報(借用した写真)
*1:ウンブリア By Oleg Creative Commons 2.0
*2:アッシジ By Roberto Ferrari Creative Commons 2.0
*3:サンタキアーラ By Luca Alese Creative Commons 4.0