2.β( ベー)の物語
アンナの19年10ヶ月が終わった。 彼女の死は、僕にとっても、家族みんなにとっても大きなショックだった。 動物は死ぬものだと分かっていても 、やはり先に行ってしまうのを見送るのは辛いものだ。 結構、あとを引いた。 もう二度と犬は飼わないと言う約束が、家族の中で出来ていた。
<β:べー>
アンナが死んで半年くらい経った頃だろうか、下のチビ(長女)が、どこかの犬屋へシュナウザーを「見るだけ、見るだけ」といいながら、カミさんと見に行ったらしい。アンナ失くして、あたかも姉妹をなくしたように辛かったのだと思う。
最初は戸塚の近くの犬屋を見ていたようだけれど、なぜだか保土ヶ谷にある犬屋にシュナウザーを見つけたようだ。僕も声をかけられて「見るだけ、見るだけ」といいながら連れて行かれた。 そこにはダンボールに入った小さなシュナウザーがいた。 ちょっと触ってみようと撫でてみた。懐かしい温かい感触が手に伝わってきた。 しかし、見るだけということで来たのだからと、その日は家に帰った。
チビはそのシュナウザーを忘れることができないらしく、「私が責任を持つから、飼おうよ」とカミさんを口説いたようだ。 お父さんも行ってみようよと再度誘われた。 犬を飼うことに反対なのは、僕だけになっていた。オンちゃん(兄、長男)は、第一希望の大学受験に失敗して、もう後がなく受験勉強にどっぷりだった。
仕方がない、本当に君が責任を持つのだよとチビと約束して、再度その子犬を見に行った。その時はダンボールから出て、ガラスの個室に入っていた。 どのぐらいの日にちが経ったか忘れたが、その子は僕たちを覚えていたようで、僕たちをじっと潤んだ目で見ていた。 僕も心のどこかでシュナウザーが欲しいなと思っていたから、その潤んだ目には絆されてしまった。
結果として我が家に2頭目のシュナウザーが現れた。 下の子が責任を持って飼うということになって、では名前をつけろと話したら、当時、流行り始めていた”アニエス・ベー”から、β(べー)という名前をつけた。この子も女の子だった。 断耳しようと言ったけれど、可愛いからと耳は切らずにそのままになった。
<βタン>
僕は仕事で忙しかったから、週末に時々遊んであげるくらいのスタンスで、βと付き合い始めた。戸塚は、まだ宅地開発は始まったばかりで、僕の住宅地は山を階段状に削った平面だったが、その後の宅地開発は、大きな沢や谷を、近くの山を削った土で埋めるという、乱暴な造成を始めた。一番、近い大きな住宅地はXXヶ谷という名前だったものを、XXが丘と名付けて売り出したにしていた。 反対側に小高い丘があり、その斜面は丘を切り開いた大きな斜面の草原になっていた。
元々は山だったから海抜65mぐらいあった。その下端は海抜20mぐらいだったから、段差40m位の斜面は広くて、幅80mくらいの草ボーボーの原っぱだった。そんな広い斜面は、たちまち近所の犬たちの遊び場となった。 今で言う”ドッグラン”の はしりだったろう。 僕もβを連れて、その斜面の上に登って、下を眺めるのが好きだった。夕方は特に犬の数が増えて、いろんなところで犬社会ができていた。
<オールド・イングリッシュ・シープドッグ>
ベーの友達は、目が見えないくらい毛深い、お決まりの白黒の大きなオールド・イングリッシュ・シープドッグだった。 ベーはチビだったけれど、シュナウの血ははっきり流れていて、体の大きさに無関係にシープドッグを追っかけまわしていた。 草原の上から見ると大きな黒い塊をチビが追っかけているのがよく見えた。見ている僕も楽しかった。
その後、何年かして子供たちが社会人として独立したのを確認して、カミさんと合意していたように、僕たちは別れた。僕が一人で姉のマンションに移った。 家も土地も子供達も、そしてベーも戸塚に残した。
僕はもともと犬好きで、団地でお母さんが犬を指さして、子供に「危険だから近寄らだめだよ」と言っているのを見て、早く自分の家を建てて、子供たちのために、そして僕のために犬を飼おうと思っていた。それがアンナだった。
犬に会えなくなったのは寂しくて、 時々カミさんの家(元の僕の家)にベーを借りに車を走らせた。よく連れ出したのは、緑園都市と大池公園の間にある ”こども自然公園” の 原っぱだった。 べーは、もちろん喜んで僕に付き合ってくれた。
その後、下のチビは 社会人になり、好きな人ができて結婚することになった。僕も、チビの旦那になる人と会い、人柄を確認していいんじゃないかと言った。その後、チビは、べーと一緒に結婚して、新しい家に引っ越した。ベーを飼うときの約束、「責任を持って育てる」を果たしたわけだ。結果として、僕はざっと5年ぐらいベーと、つき合ったことになる。良い子だった。
P.S. ミニチュア・シュナウザーの特性
アメリカンケンネルクラブ(AKC)によると
米国では197犬種中 人気19位 (2020年)
ミニチュア・シュナウザー:ドイツ語で口髭を表す「シュナウツ」
ミニチュア・シュナウザーは、スタンダード・シュナウザーから生まれました
・フレンドリーで、頭が良く、従順
・ふさふさしたひげと眉毛は、ミニに魅力的な人間のような表情を与える
・硬い毛並みには、ソルト&ペッパー、黒&銀、黒の3つのカラーパターン
・元は農場の万能犬、ネズミ対策に作られた彼らはタフ。筋肉質で怖いもの知らず
・犬社会の社会性を、チビの間に身につける
・人と一緒にいるのが大好きで社交的。家族の活動に参加する。テレビを見る
・明るくフレンドリーで訓練可能
・アパート生活に適応するのに十分小さい体
・他の動物や子供たちとうまくやっていける
・ミニは頑丈な小さな男であり、活発なプレーを楽しんでいる
・家庭や家族向けの偉大な番犬
・健康的
・必要運動量:20〜40分/日の散歩
・エネルギーレベル:平均
・長寿の範囲:12-14歳。
・断耳/断尾:「反対」がヨーロッパを中心にあるが AKCでは標準
・定期的に手入れをする必要あり。頻繁なブラッシング、髪と爪のトリミング等
AKCの遊び好きランクでは3番目:
1.アイリッシュ・セッター 2.イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
3.ミニチュア・シュナウザー
AKCはミニチュア・シュナウザーの特性を短く言うと
「健康/長命/脱毛が少なく、外向的性格で、手ごろなサイズ。スポーティで美しい姿。理想的な家庭犬」とある。
ジャパンケンネルクラブ(JKC)登録数:
2010年:8,000 → 2020年:11,000
感想
合計3頭、40年ほど飼った経験から、自信をもって同意します。ただし、ちょっと頭が良すぎて、悪だくみだってできるようです。操られないように要注意!
目を合わせると、エンドルフィン(ホルモン)が出て、人間サイドにも幸福感を味わうという「手、技」も知っている。勝てませんね!
海外に旅に出て、シュナを見ると必ず、声をかけています。この子は、ミラノ・ナヴィリオのクロエちゃん。