もともと、僕には初もうでに出かけるという習慣はない。まあ折があれば浅草・浅草寺にふらりと出かけることがたまにあるくらいだ。
しかし、今年は正月から動いてみた。初美術館だ。前から一度覗いてみたいと思っていたけど機会を逃していた、東京駅に近い三菱一号館美術館。どんなところかと、興味があった。

<ミレー展>
物々しい名前の三菱一号館は、1894年(明治24年)にイギリス人のコンドルの設計で建てられた三菱銀行の本店だった建物を1968年に解体して、新たに2010年(平成22年)に再建された建物だ。
もとの設計図や解体時の実測図を使って、基本的には元のままの建物を復元したレンガ造りの美しい建物だ。
脇に話はそれるが、三菱にはもともと近しい感情がある。一番は、母の実家に近い高知・安芸の岩崎弥太郎の生家を見たことが影響しているだろう。幕府から、八重洲のとんでもない沼地をまとめて買い取った先見性が、こんな片田舎のぼろ家で育った岩崎にあったというのがびっくりだったからだ。その時は、今はない半血兄弟が車で案内してくれた。
さらには、コンサルの仕事をしていたときに、三菱銀行が最初のクライアントになってくれたのも、身びいきになっているかもしれない。
さらに話はそれていくが、三菱と三井の旧財閥を比べてみると、三菱はストラテジックに見えるが、商売は下手。逆に三井は、のらりくらりと商売がとてもうまい。三菱の「プレミアムアウトレット」と三井の「アウトレットパーク」を比べてみると、コンセプトは三菱の方が面白いが、商売はどうも三井の方が上手くいっているみたいだ。
本題に戻ると、三菱一号館美術館では、正月にバルビゾン派の展覧会をやっていた。
バルビゾン派といえば、日本では山梨県立美術館が買った「種まき」のミレーで知られるようになったのだと思う。パリという都会を抜け出して、郊外のバルビゾン村に移住して、自然を描き始めた集団をバルビゾン派と呼んでいる。ミレーの「落穂拾い」は、代表作で、これまた良く知られた絵でもある。
バルビソン村は、僕もパリからの日帰り旅行でフォンテーヌブローとまとめて訪れたことがある。のびやかなフランスの広大な平野の中の小さな村だった。ここに、ミレーのほか、コローやルソー、そしてトロワイヨンなどがパリから移住して、自然をモチーフに初めて絵を描いた村だ。
今回の展覧会は、これらの画家の絵を、アメリカ・ボストン美術館から貸出てもらっていた。
ち密なタッチと色遣いで描いている特徴を新たに発見したが、それ以外には、やはりバルビゾン派の絵でしかなかった。山梨県立美術館にある「種まき」の姉妹作が、ボストン美術館にも同じ名前で存在していた。この「種まき」を見ながら、二枚を見比べてみたいものだと思った。
僕にとって、一番印象的だったのは、トロワイヨンの「ポイントする猟犬」だった。時間を切り取ったような、ポインター犬の姿は美しかった。残念ながら、ショップで探したが、その絵はがきは無かった。
日本の美術館の悪い所で、写真撮影は禁止されていた。素人が、フラッシュもたかず、ライティングもしないで撮ったって、商売になるようなものは取れないのに日本では禁止されている。本国、フランスではどこでもOKなのに不思議。ブツブツ言っても始まらない。だから、絵の写真はない。
僕の興味を引いたのは、元々のパーツをそのまま使った建物、そのものだった。美しいし、凛としたたたずまいがある。楽しくなって、絵以外の館内の写真の何枚かとった。建物の外観も、それを取り巻く庭も、そしてなによりも、内部構造が美しかった。



<写真x3>
ショップで、おもしろいものを見つけた。それは絵の具とそっくりな、チューブに入ったマロンのペーストだ。パンにつけて食べてみると、栗の味が程よく甘い。これは収穫だった。お土産にと考えたが、送る人が見当たらないから、自分用だけを買ってきた。
帰りに、昼飯の蕎麦を食いに丸ビルに入ったら、目の前に東京駅が見えた。東京駅も、最近の改装でオリジナルの建物になったと評判になっている。で見てみると、僕には、前の東京駅の方がよほど良い。前の方がアムステルダム中央駅に似て、明るく軽い感じ。改装後は、色が暗く重い。ネギ坊主のようなドームもいただけない。まあ、好き嫌いだから、何とも言えない。


<アムステルダム中央駅と東京駅>
アムステルダム中央駅写真は下記の所有
Amsterdam Municipal Department for the Preservation and Restoration of Historic Buildings and Sites (bMA).
僕には、三菱一号館の方がよほど美しかった。きっと、基本設計がしっかりしていたからだろうと思う。

<三菱一号館入口>
こうして、初もうでは終った。楽しい時間だった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます