M.シュナウザー・チェルト君のパパ、「てつんどの独り言」 

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香港と言えば潮州…

2014-05-11 | エッセイ

 香港と聞くと、カンズメ教育の6週間を思い出す。楽しかったし、苦しかった時間だ。香港のベストシーズンと言われている12月の4週間と、日本の梅雨よりもっとダイナミックな大雨の4月の2週間。

 今は中華人民共和国の支配下になってしまったが、1990年代の初めまではイギリスの植民地だった香港。イギリスの文化(ヨーロッパの文化を一緒に連れてきた)と、中国文化をないまぜにした多国籍の街だったと思う。

 その頃は九龍城のスラムも健在で、まさに細い汚いビルが身を寄せ合って、狭い地域に密集して立つ、その怪しげな姿をカイタック空港から香港に向かうバスの窓から見たのを思い出す。見ただけで、すえたような、汗臭いような空気を鼻は感じた。カオルーン(九龍サイド)は、その頃から中国色が強くて、香港島へ渡るスターフェリーくらいからイギリスの雰囲気が現れると言った感じだった。

 カンズメになっていたのは、香港島の中環(セントラル)にあるJWマリオット。



 写真① マリオットのロビー

 マネジメント・コンサルタントの適格性検定コースで、世界中の有名な現役コンサルタントがサブジェクト毎に、入れ替わり立ち代わりでやって来て、コンサルに必要なありとあらゆる分野の専門的な教育を行っていた。このコースを通過できれば、コンサルタントになるみちがひらく。

 問題の発見方法、マネジメントの対話の方法、問題の本質を見定める仮説の立て方、その仮説の証明方法などなど、最後にはプレゼンテーション・ペーパーの書き方等に至るまで、厳しく、目いっぱいにスケジュールが組まれていた。グループ活動もあって、他の複数のグループたちと競って、練習課題をこなしたりする。当然、真夜中まで勉強しなくてはならなかった。

 朝、昼、晩の食事はすべてホテルのレストラン。さらに午前10時と午後3時には、イギリス式のティータイムがある。ここでも、ケーキや果物が飲み物と一緒にサーブされる。生きるためには、ホテルの外に出る必要が全くないのだ。

 参ったのは、英語の本読み。講義はすべて英語。会話はディスカッションでも問題は無いのだけれど、課題として出された宿題の本読みには手古摺った。1ページを理解しながら読むと、僕には5分はかかる。150頁のペンギンブックでも、12時間かかってしまう。英語がネイティブの奴らにはかなわない。しかし、その本を読んでいないと、宿題ができないのだ。こんなに勉強したのは、生涯でこの時だったかもしれない。

 自由時間は、週末だけ。だから、自由な空気を吸えるのはこの時だけだった。

 一番、中国っぽいカオルーンに出かけるのもこんな時。

 その頃、羨ましかったコルムの腕時計を探して、サムサッュアイの街をウロウロしたのを覚えている。しかし、高い。

 では二番目に興味があったポルシェ・デザインの時計を見てみようと、店に入った。素晴らしいデザインの時計を眺めていたら、店の人が声をかけてきて、安くするよと言う。買おうと思ってキャッシュを出したら、店の人がぽかんとしている。よく見ると僕が思った値段にゼロが一つ多くついていた。ゴメンと言って、店を逃げ出した。慌てた。

 食べ物も、外で食べるとおいしい気がする。マリオットの食事がまずいわけはないのだけれど、やはり厭きてくるのだ。

 ホテルからすぐのところに大きなモール、ワン・パシフィック・プレースがあって、そこでは日本食も、その材料も、僕の好きなイタリアンも、何でも揃っていた。イタリアンの店では、陽気なイタリア人の女性ウエイトレスと話すのを楽しみに通った。

 もっと下町っぽいものを食べたいときは、地下鉄でコーズウエイベイまで出かけて、屋台のビーフンの麺をすする。汚いところだけれど、安くて、美味いのだ。



 写真② コーズウエイベイ

 しつこい広東料理がほとんどの香港で、発見したのが潮州料理だった。



 写真③ 潮州料理


 他の中華に比べて地味だけれど、日本人の僕にはぴったりだった。ほかの料理のように、油濃さとか、辛さとか、グロテスクさだとかはない。味は塩味。もともとフカヒレはここの料理だったようだけれど、今は広東料理として有名になってしまったようだ。

 乾かした海産物からとった味の深い、すっきりとした味付けで気に入った。薄味の炒め物が基本だ。麺類も米粉で作った麺でさっぱりしている。潮州炒麺は僕の大好物になった。しかも高くはない。

 日本に帰ってきて、横浜の中華街や、神戸の南京町で訊いてみたけれど、日本では潮州料理は出していないようだ。日本では、まだ出会ったことがない。野菜のスープ、小海老の茹でたて、炒麺、深い塩味の炒め物などを見つけたいと思っている。潮州料理を出す店、知っている人がいたら教えてください。

 お願いします。




<借用した写真のクレジット>

① “マリオット香港”HPから
② flickrから、Pawel Loj さんの“Hong Kong”です。
③ flickrから、Yussufさんの “Teochew”です

②と③のライセンスは、Creative Commonsの2.0です
Creative Commons License
This work is licensed under a Creative Commons Attribution 2.0 Generic License.


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