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最近、喉が痛くて、ちょっと息が苦しい日が
続いて、5月の本とかやろうと
思いながら進まず……。
なので、以前書いて「また書きたいな」
と思っている話を載せてみます。
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檻と言う小説です。
すごく昔にブログにアップした話を、
編集して載せてみます。
ちょっと続きを書き加えています。
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躯さまが蔵馬にいたずらをする話。
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いつからだろうか。
何度目の訪問からだろう。
その瞳から、目を離せなくなった。
丸い深い碧の瞳。何を見つめているか、
知っていた。
知っていたけれど、手を伸ばしたくなった。
あまい花の蜜を知りたかった。
「失礼します」
いつも、百足に来る時には小さく頭を下げてお土産を
手にしてくる。
息を弾ませていることは必死に隠そうとしている…
何を期待して誰を探しているのか、表に出そうと
しないのに、漏れている。
笑ってしまう。
好きを隠そうとするほど、漏れている。
それは、蔵馬を見ている者には直ぐに伝わってしまう。
「この間の書物解読できました」
これがそのメモです、と言って、執務室の躯の机に、
それを置く。
躯は、それをゆっくり捲っていく。
パラ、と言う音だけがふたりの間の音だ。
蔵馬は、何も言わず、出された紅茶を飲んで
いた。カップを手にするたびまつ毛が揺れていた。
「ここ、どういう意味だ」
訊いた躯に答えるべく近づく蔵馬が、ゆっくり紙を
めくる。あ、これはと言う声にかかる息。
紙をめくる蔵馬を少し上から見つめる、躯。
長い黒髪が肩に落ちた。
そして気づく。
…白い指先。
女と同じように細い。
男とは思えないほどの…。
しなやかな指先が紙をめくるその動作から、目が
離せなかった。
俯いて大事なことを書き連ねる蔵馬の項から、ふわりと甘い香りがした…。
「お前…」
「…はい?」
丸い瞳を向ける蔵馬に、心臓を掴まれたような気がした…。
「いや。なんでも」
「これは、こうで…。解りにくかったですね、
すいません」
言う蔵馬に、気にするなと言うと、蔵馬は少し笑った。
その瞬間。気付いた。笑顔が、違う。
あいつに…あんなガキに見せる笑顔の色が違う。
そして、蔵馬の瞳が色を変える瞬間を、躯は捉えるように
なった。
躯を見る瞳が、時々苦しそうに歪められていること。
それは、飛影が一緒にいる時だけに見られる、濁った色。憎しみではない、蔵馬の中の複雑に
混ざりあった色。言葉に出来ないほど、暗く、深い色が。それを、蔵馬は一瞬で隠した。
飛影が話しかける瞬間には消えている色。
笑顔が違う。飛影にむける笑顔の、花の咲くときの
ような蔵馬は自分にむける蔵馬ではないことに
気付いた。
…飛影を越えて、躯を見た瞬間に出る色だと、分かった。躯を見るとき、警戒より軽く、嫌悪では
ない、孤独に近い色をしていた。
そして、その色は躯の胸に焼き付いて離れなかった…。
だから、今のこの瞬間がある。
「む…くろ?」
深い碧の瞳は、今は真っ直ぐに躯を捉えていた。
…魔界の奥深くの森。
妖狐のころの蔵馬さえも気付かなかった深い森に
呼び出された。誰にも支配されていなかった森。
細い身体で、柔らかな唇で、躯より一回り小さな
その人は現れた。
声色で分かる―――こいつは、自分を怖れていない。
怖れてはいない。それが、笑えるほど滑稽だった。
いつの間にか、警戒されていない、信用されている。
だから、少しからかうだけだった気持ちが変わっていった。
…躯自身が自覚するほど、はっきりと、沸き上がる気持ちがある。欲に近い。
…ホシイ。
真っ直ぐ見つめる蔵馬の瞳の色を見ると、
躯の眼が細められた。
びく、と蔵馬の肩が僅かに揺れた。
「…むくろ?」
…違う。
この人は違う。今のこのひとは違う。
いつも向けられる声と、違う物を感じる。
本能的に蔵馬は後ずさろうと…したが、出来なかった。
何故か動けなかった。
「どうした…?」
顔が見たいと言われて素直にここまで来たのはお前だ。
…選択したのは、お前自身だ。
…誰も悪くない。
ただ、気付かないことが罪なだけ。
背中を、冷たい汗が流れて、蔵馬は固まった。
躯の瞳が違う…冷たいものを讃えた、熱い瞳。
すい、と伸ばされた手が、現実味を帯びていない。
カツカツ…、数歩近づくだけで、身体が何かに
縛られたように感じて、カタカタ震えが激しくなる。
くい、と頤を取る躯の手が、氷のように冷たかった。
首筋を辿るむけるの手に、温もりがない、こんなひとだっただろうか。
知らない。シラナイ。
こんな人は知らない…。
「いつも俺を見るときなにを考えている」
「な、にも」…言うしかなかった。
飛影の全てを管理しているのは躯。
飛影の、日常を知るのは百足の者達。
それを百足にくるたび思い知らされた。
悲しいでなく、嫉妬かもしれない複雑な気持ち…。
いつからか、躯への視線に変わった。
へな、と蔵馬は座り込んだ。
「いつも、お前のことを可愛がっていたよ」
「…あなたは何を、いま」
「…だけどな。ただ可愛がるのも飽きた」
見上げる蔵馬が、可愛かった。
捻り上げたい欲に、流れないだけ感謝してほしい。
初めて触れた蔵馬の頬はとても暖かく、そして黒髪は
絹のようだった。
ふと、飛影の顔がよぎった。
あいつがいつも撫でている髪。
このきれいなやつを、あんな格下のやつが。
少し摘んでみてもいいじゃないかと。
可愛い、と思う。
首から指先までを震わせているこの、少女のような男が。
「なんの、ために」
「いいな。その表情」
ぞくぞくする。
…傷つけたい訳じゃない。
ただ、愛おしむ。
蔵馬と白いキャミソールは扇情的で、どこか幻想的だった。
白いキャミソールが、風に靡いて蔵馬の胸元が透けた。
手首につけられた細い紐は、扇情を呼び起こす。
「きれいだ」
キャミソールをたくしあげると、蔵馬はびくんとからだを後ろにずらした。
何が目的か、知りたくないと…知れば自分は摘み取られる、そんな気がして。
「くらま」
躯が小さく名を呼んだ。
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と言う話です。
大分昔のを大幅に変えてみました。
流れは同じです。
躯さまが蔵馬に手を出すの、何度も想像しています。
大好きなんですよね。
躯さまが顎を取る姿美しいですよね…
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