ちょっと、去年の沖縄旅行の写真を見ていて
飛蔵ネタを考えてみました。
武術会の最後の夜、こういう事があっても良いなと思ったのです。
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煌めく波に、蔵馬の黒髪が映っていた。
沈みかけの陽を見つめて、蔵馬はそっと肩を寄せた。
「おい」
「いいでしょ」
小さく、蔵馬の声がした。
さらさらと流れる砂に、二人は座っていた。海の香りが、二人を包んでいく。
生暖かい風に髪を靡かせて、蔵馬は少し力を抜いた。
そのまま、ずるずると飛影のほうへと…。
「どうした」
珍しく甘え気味の蔵馬に、飛影が問いかけた。
ん、と蔵馬の声がした。
ぎゅっと、蔵馬が飛影の袖を掴んでいた。何も言わず、ただ袖を掴んで、蔵馬は笑った。
曖昧に、蔵馬はそのまま膝へと身体をずらしていった。 嫌がる風でもなく、するがままにさせて、飛影は海に煌めいた陽を見た。
この島にも、こんな風に穏やかな陽が昇り沈んでいく。
武術会は終わり、今この浜には二人だけだった。
サアっと、波が音を立てていく。
「あなたの、ここが好き」
膝に頭を載せ、蔵馬は笑っていた。
すっと身体を流して、飛影の膝へと落としていく。
「そう言うのは、後でだ」
行くぞと、飛影はスッと立ち上がった。
えっ、と声がした。支えを無くした蔵馬は、はっと立ち上がった。
「もう…」
不満そうな、蔵馬の声だった。
「ほら」
バサッと音がした。
蔵馬の肩に掛かったもの、飛影の黒衣だった。
「大丈夫だよ」
「柔な奴が、何を言うか。掛けておけ」
突き放しておいて、蔵馬のことを気に掛けている。
もっと甘さに浸ってくれると思ったのにと、頬を膨らませて、蔵馬はむくれて、それでも飛影に
ついて歩いた。
分かっている。この黒衣の温もり…。
伸ばされた手を強く握る。
前に立つ飛影の、少し暖かい手が心地良い。
文句は言わせないと、飛影は聞いてないように前を向いた。
「ありが、と…」
そう言うしかなかった。
「…待って」
小さく言いながら、黒衣を掛け直した。
好きだと…その背を見て溢れ出そうだ。こんな風に、強く手を引く人だっただろか。初めてだ、
こんな手は。初めて、飛影の手が温かい。
「…好きだよ…」


こういう緩い甘さも良いなと思うんですよね。
飛影の、さりげない優しさが好きなんです。
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