in the kingdom of kitsch you will be a monster !

　
　10/6 Shining@月見ル君想フ

　ステージが始まってすぐに、私がかつて知っていたShiningじゃないんだ、と思った。

　ギターレスのフリージャズ・グループだと思っていた4、5年前の彼らは、そんな枠に収まらないモンスターバンドになって私たちの前に現れた。少しずつ、その兆候はあったような気もするけど、ファーストのジャケで真っ直ぐにこっちを見据えていたヨルゲン（sax）は、ジャガを離れ、ジャズランドを離れ、自分のやりたいことに正直に突き進んできたんだろうなぁ、と目の当たりにして改めて思ったのだ。

　3枚目のアルバム『in the kingdom of kitsch you will be a monster』の、メタルバンドさながらのいかれっぷりをステージで発揮した彼らは（というか、ヨルゲンは）、それまで「きっとまた難しいに違いない」と思い込んでいた私を、一気に引き込んだ。本性を出したおかげで、rune grammofon　という今の彼らにぴたりと当てはまるレーベルからのリリースにこぎつけた、ということもあったんだろうけど、この作品がまた本当にかっこいいのだ。彼ら独特の悲しカッコいいフレーズを要所要所でビシッと決めつつ、きちんとジャズを踏襲しているところなんか、本当に素晴らしい仕上がり。彼がジャガ時代に手がけた楽曲も絶妙に織り込んだりしていたし。　


　で、今回のステージはというと、初めて彼らの音楽を目の当たりにした人は、絶対メタルロックバンドだと思ったのでは？目の前のヨルゲンは、サックスを吹きつつ、次の瞬間、エレキギターをかき鳴らし、かと思えば、最新作『grindstone』で見せたように、マイクにかぶりつきでシャウトしていた！なんて手数が多い（でもこれは他のノルウェーアーティストにも言えることだけど）んだ！と思いつつ、これじゃ、やっぱりジャガには留まらないよな…と思ったりもしつつ、とにかく、彼の一挙手一投足に注目。他のメンバーは、作品ごとにメンバーも体制もシフトチェンジし、もう結成当初のメンバーは彼以外には、ドラムのtorsteinしかいないけれど、みんながきちんとまわりを見て、合わせるということに集中していたように思う。暴走もするけれど、決めるところは決め、はみ出さない、男意気みたいなものをビシビシ感じた。

　シャウトしつつも、各々が楽器をかき鳴らしつつも、自分を見失わず、メンバーへの配慮を忘れない。決してチームであることを乱さないというところが、なんだかとても素敵だなぁと思った。その彼らが奏でる音楽の全てがヨルゲンによるものだったとしても、だ。絶妙な間合いや、思いもよらない展開に発展する面白さは、スタイルがシフトしたとしても、決して変わる事はない。結成当初よりも、解りやすくなってきた分、純粋に展開の面白さやグルーヴを感じられるようになったということか。

　結成当初の初々しさがなくなってきたところに、少し寂しさを感じていたところ、終演後のまるでベルゲンのKvarteretみたいなフロアで「話してこーい」と後押しされ、とりあえず、彼の前でアピール。手を差しだしてステージに上げてくれた。たどたどしい英単語でライブの感想を言うと、ものすごく喜んでくれたり。一見強面になってしまったけれど、この人懐っこさこそが、やっぱりノルアーティストの素敵なところなのだ