積ん読の部屋♪

本棚に積ん読な本を読了したらばの備忘録

黒岩重吾『影刀 壬申の乱ロマン』あらすじと感想

2010-10-28 11:02:28 | 紙の書籍
文春文庫 黒岩重吾『影刀 壬申の乱ロマン』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
霧の慟哭
養老山の龍
影刀
無声刀
別離
左大臣の疑惑
捕鳥部万の死
解説 郷原宏


【あらすじ】
百済人の子鋭飛は、長じて大海人皇子の密偵として、近江朝の間者の殺戮を続けるが、部下は殺戮に疑問を抱く。表題作以下、七篇収録。


【感想】
黒岩重吾作品には重厚な長編が多い中で、比較的、楽に読める短編集。とはいえ、黒岩重吾作品なので底に流れるものはずっしりと重く、哀しみと怒りに満ちている。
サブタイトルに『壬申の乱ロマン』とあるが、現代人が古代にもつロマンというような甘い幻想を見事に打ち砕いてくれる。
「霧の慟哭」、「影刀」、「無声刀」、「捕鳥部万の死」など、短編のタイトルをみてもわかるように、古代の王権制度の中で、非人間的な扱いを受けながらも生きていかねばならなかった者たち。文章から彼らに対する愛情を感じずにはいられない。

「無声刀」の最後の一文に心を打たれた。
>鋭飛は間者になって初めて涙を流した。鋭飛の掌の中で牟非の手は見る見る冷えたが、影飛は懸命に摩擦した。鋭飛の行動は冷静な間者らしくなかった。
 吉野宮にいた大海人皇子が、東国に向け宮を発ったのはその翌日だった。


【余談】
私は黒岩重吾の古代シリーズが好きで、いつの間にかこの本も含めて17冊も所蔵していた。このうちまだ4冊の長編が未読。
黒岩重吾の長編は重厚なので読むのも根性がいる。それでもやっぱり好きのだ♪