ちくま文庫 折口信夫 東雅夫編『文豪怪談傑作選 折口信夫集 神の嫁』を読了しました。
感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。
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【目次】
死者の書(抄)
神の嫁
むささび
生き口を問う女
生き口を問う女(続稿)
とがきばかりの脚本
巻返大倭未来記
夏芝居
お岩と与茂七
涼み芝居と怪談
寄席の夕立
もののけ其他
お伽及びはなし(はなしは口偏に出)
雄略紀を循環して
盆踊りの話
鬼の話
河童の話
座敷小僧の話
信太妻の話
飢餓阿弥蘇生譚
小栗外伝(飢餓阿弥蘇生譚の二)
水中の与太者
水中の友
鏡花との一夕
平田国学の伝統(抄)
遠野物語
解説 幻視と妄執と 東雅夫
【あらすじ】
アンソロジーなので全部のあらすじを書くのも大変だし、小説だけでなく今でいうところのエッセイもあるので今回は省略。
【感想】
ざっくりと気になったものだけについて書くことにする。
エッセイのようなものは、正直いまいちつまらなかった。小説のほうはやはり『死者の書』(抄)がよい。ごく一部の抜粋だけど。
この作品はすでに読了していて、好きな作品のひとつ♡
『生き口を問う女』
読んでいてイライラした。作品自体は名作らしいのだが、全く共感もできず男の傲慢さに腹が立つ。
こういう類の作品はなんだろう…自分には合わないんだと思う。
『お伽及びはなし』(はなしは口偏に出)
この作品が一番おもしろかった。文豪怪談傑作選なのだからこうでないと。
武家の御伽衆は貴人の警護をするために宿直をするのだが、そのときに怖い化け物話などをして外から近寄る者を威嚇していた。「ここにはもっと、こんな恐い物に会った経験があるのだ、或は、もっと怖いものが居るぞ、と言う示威運動なのである。ここから怪談が発達して行った。百物語の起こったのも、この為である。」
なるほど~そうだったのか! ことの始まりというのはおもしろいな。
『鬼の話』
古来の鬼、神、精霊、祭りについて書かれている。日本の古代の信仰では、かみ(神)・おに(鬼)・たま(霊)・もの の四つが代表的なものだったようだ。
これも知らなかったので、おもしろいと思いながら読んだ。
『河童の話』
文字どおり河童の話。唯一、挿絵が入っている。一口に河童と言っても、多種多様な姿や名前、出没する場所があるというのがおもしろいな~と。
『座敷小僧の話』
今も東北地方にある旅館に出ると言われている、座敷わらしについて書かれている。
東北地方では「間引く」ということを「うすごろ」と言う土地もある。その間引かれた子供が雨の降る日などに、ぶるぶると震えながら縁側を歩くのを見ることがあり、これを「若葉の霊」というそうだ。
柳田國男がこの「若葉の霊」と「座敷わらし」を関連づけて書物を書いていたらしい。想像すると怖い光景だ…。
『信太妻の話』
今も残る『葛の葉伝説』について書かれている。かなりページがさかれており45p.もある。ちょっと最後のほうは飛ばし読みしたくなった。
「大祓の祝詞の国つ罪を見ても、祖先の中には、恥ずかしながら、色々な動物を性欲の対象に利用した事実のあったことが推察出来る。」とあり、さすがに怪談とは別の意味で心底ぞっとした。
『水中の与太者』
またも河童の話。総じて河童は腕が弱く、これは「草人形(くさひとがた)」を表していて、「水」は山・川・里とどこにでも存在するので、河童もどこにでも現れるのだという。
河童といえば川、という概念だったので目から鱗だった。
全体を通して、「妖怪」と「怨念」には因果関係はないと論じていた。よく言うところの「うらめしや~」ではないということだ。そういえば、京極夏彦の『豆腐小僧』でもしつこいくらいに言っていたな。
【余談】
実はもっと怪談の短編集なのかと期待して購入したのだけど、そうでもなかったのがちょっと残念。特に、芝居の話は大衆演劇の演目や歌舞伎を知らないとほとんどわからないし。いや、演劇は好きなんだけどジャンルがね、違いすぎるから。
ちくま文庫の『川端康成集 片腕』が欲しいのだけど、探してもないの~! 古本しかなくって。古本は図書館で借りるのはいいけど、手元には新品を置いておきたい。ないかな~どこかに。