教員の働き方改革の「進め方」 ポイントは納得感
(教育新聞記事より)
教員の長時間労働是正に向けて、タイムカード導入による勤務時間管理や学校閉庁日の設定、部活動の見直しなど、各自治体でさまざまな業務改善が始まっている。現場に働き方改革を円滑に浸透させるには、どのようなポイントがあるのか。各地に先駆けて取り組んでいる横浜市と埼玉県戸田市を取材した。両市の働き方改革の進め方に着目すると、「当事者の納得感をいかに得るか」の重要性が垣間見えてきた。(藤井孝良)
■サーベイフィードバックによる教員研修
「あなたの職場はお互いの仕事の状況を把握し合えていますか。話し合ってみてください」――。6月18日夕、横浜市教委の研修室で、管理職を含む同市立小・中学校の教員ら約40人が集まり、働き方の改善をテーマにしたワークショップ型研修会が行われた。
同市では、中原淳立教大学教授の研究室と共同で、サーベイフィードバックと呼ばれる組織開発手法に基づく研修プログラムづくりを進めている。サーベイフィードバックとは、組織の健全性に関する分析結果を回答者に提示し、それを基に対話によって問題を解決する手法。同市は昨年、教員の働き方と意識の関係についてアンケートを実施した。研修会に参加したのは調査対象校の教職員で、その結果を当事者に返しながら、働き方の問題に気付かせ、意識変革を起こすのが目的だった。
同調査によると、調査した直近3日間の教員の平均労働時間は1日あたり11時間42分、1日あたりの労働時間が12時間以上の教員は全体の42.0%に上った。教員の82.9%、校長の79.3%が時間外業務を減らしたいと思っていたが、時間外業務を減らすことに罪悪感やためらいを感じている割合は教員で36.6%、校長で28.5%。労働で減らせる時間が「0時間」と答えた割合は教員で32.2%、校長で27.3%を占めていた。
多くの教員が時間外労働を減らしたいものの、実際には減らせないジレンマを抱えている状況が浮き彫りとなった。
調査結果を基に話し合いを促すワークショップが開かれた
■働き方改革に踏み出す一歩
研修では、調査データが示された後、3~4人のグループごとに、普段の仕事の仕方や職場環境について話し合った。
分析を担当した町支(ちょうし)大祐立教大学助教と中原研究室の辻和洋氏がファシリテーターとなり、調査結果から明らかとなった事実を説明していく。
「『定時退勤できない雰囲気がある』という質問に『当てはまる』と答えた教員が多い学校では、『当てはまらない』と答えた学校と比べ、平均勤務時間が11分長い」「職場全体で教材の共有ができている学校は、できていない学校よりも平均勤務時間が17分短い」など、具体的な数字を前に参加者は熱心にメモを取ったり、うなずいたりしていた。
話し合いでも「資料をちゃんとファイリングしたり、共有フォルダに整理したりしておけば、いちいち探す時間も手間も省ける」「先生同士の間をつながないといけない。特に若い先生。『分からないことがあったら〇〇先生に聞いてみて』と働き掛けていかないと」など、学校の状況に基づいたリアルな問題とその解決策が語られた。
研修後半、町支助教らは時間外労働を減らす対策として、「仕組み・決めごと」と「文化」の2軸で考える必要があると説明。「定時退勤日や学校行事の精選など『仕組み・決めごと』は一つだけでも効果はあるが、複数の取り組みを組み合わせて重層的に行うと、より効果が高い」と強調した。
また、「文化」では、「校長が早く帰る人を評価する。副校長はこれまでの慣習ややり方を積極的に変更する。一番忙しいからこそ、あえて発信することで説得力がある。学年主任は教職員間の業務量は不可を把握し、意識的に声掛けをするなど、業務情報のハブになる。管理職とミドルの役割分担、協力体制が重要だ」と説明した。
それらを踏まえた上で提示された「あなた自身が働き方改革に向けて明日から踏み出せる一歩」という話し合いのテーマに対し、参加者からは「訳ありグループを支援する」「『ごめん、先に帰る』と言わない」「もっと声掛けや対話を活発にする」などの意見が次々に出され、参加者全員が紙に書いた「一歩」を掲げ、互いに眺め合いながら研修会は終了した。
中原教授は「仕組みや決めごとといった外科手術は必要だが、それだけでは駄目だ。漢方薬で体質改善するように職場の文化を変えていくことも必要。こうした施策は始まって1カ月ほどで不満がたまったり、実行されなくなったりして失敗するケースが多い。この1カ月の壁を乗り越えられるかが鍵だ」と参加者に助言した。
同教授は研修の意図について、「上からの働き方改革の押し付けでは、現場で熱心に頑張っている教員がしらけてしまい、かえって教育の質の低下を招く懸念がある。教員は現状の問題にうすうす気付いているが、意識まではできていない。鏡となるようなデータを示すことで、自分たちで変えていくきっかけにする。学校の働き方改革は、丁寧な議論が必要だ」と話した。
横浜市では、今後も共同研究を継続し、インタビューなどを通じて現場の実態を明らかにしていくとともに、教職員を対象とした研修プログラムの開発を行っていくとしている。この日の研修はその試行でもあった。
研修会では働き方を変える、さまざまな「一歩」が出た
■国の基準より緩い部活動方針
教員の働き方改革では、中学校の部活動の見直しも懸案だ。
埼玉県戸田市では、スポーツ庁の「部活動ガイドライン」の議論に先駆けて、昨年10月に市独自の部活動ガイドラインの策定に向けた検討委員会を立ち上げ、調査やパブリックコメントを実施した。7月には「戸田市部活動方針」を定め、夏休み明けの2学期から全ての市立中学校で適用する。
方針では平日1日以上、土日は1日以上を休養日、定期テスト前1週間や学校閉庁日は休養日とし、早朝練習(朝練)も禁止とした。平日の活動時間は1日2時間以内、土日の練習は4時間以内とする。土日の練習時間はガイドラインで3時間以内とされており、それよりも長い。さらに、校長が承認した年4回以内の大会については、開催日前2週間に限り、週当たり16時間を上限に休養日や練習時間の制限を外す特例を設けた。
このように、同市の部活動方針は国の基準を部分的に緩和している。方針策定に至るまでには、市内中学校の部活動の実態調査に基づき、検討委の中で長い時間をかけて合意形成を図ってきた経緯がある。
同市が昨年11月に実施した悉皆(しっかい)調査では、市立中学校の生徒や保護者、教員を対象に、部活動の実態を明らかにした。同市での部活動の実態として、平日では、生徒・教員共に半数以上が週5日間部活動に参加し、休日は生徒の半数以上、教員の4割以上が土日の両方で活動していた。平日の練習時間は、教員が1時間以上2時間未満、生徒が2時間以上3時間未満と答える割合が最も多く、休日は生徒、教員共に3時間以上4時間未満が最多だった。
部活動に対する悩みを抱えている生徒は全体の49%とほぼ半数を占めた。その理由は「疲れが取れない」が最も多く29%、次いで「学業との両立」が24%、「部活動の時間・日数が長い」が23%だった。78%が休養日を希望し、希望する日数は週1~2日を挙げる声が多かった。
教員対象の調査では、部活動に対する悩みを抱えている教員は全体の84%を占めた。その理由は「ワークライフバランス」が最も多く37%、次いで「校務と部活動の両立」が30%だった。教員が適正と考える休養日は、平日は週1日程度、休日は土日のいずれかを挙げる声が最も多かった。
国のガイドラインにない特例も定めている埼玉県戸田市部活動方針
■丁寧な議論が必要
生徒や教員にとって、現状の部活動が負担となっており、適正化を図る必要に迫られているのは明らかな状況だった。教員、校長、保護者、部活動指導員などからなる検討委では、このデータに基づいて同市の部活動の在り方について議論を重ね、その結果として、同市の部活動の実情に応じて、特例を設けた方針が定まった。市民に対して実施したパブリックコメントでも大半が賛同で、否定的な意見は出なかった。
同市教委で方針の策定作業を担当した職員の伊藤大和氏は「国より緩和した基準を作るには、しっかりとした理由付けが必要で、なぜその基準にしたのか内外に説明できなければならない。多くの自治体で部活動の方針について今後策定が進むと思うが、策定に向けて丁寧な議論を踏まえなければ、自治体独自の基準は打ち出しにくいのでないか」と指摘する。
そんな同市でも頭を悩ませている部活動の課題がある。その一つが部活動指導員の確保だ。現在、同市では19人の部活動指導員が配置されているが、そのほとんどがボランティアで、校長からの推薦によって市が委嘱している。
伊藤氏は「東京都心に近いベッドタウンであることが災いし、平日2時間程度の部活動に時間を割ける人材が限られている。将来的な民間スポーツクラブとの連携も視野に入れているが、費用面や指導者の質の確保など、まだこれからという状況だ」と話す。
◇ ◇ ◇
人を納得させるのに最も有効なのは、データを示すことに他ならない。両市では、現場の実態を客観的な数字で提示することで、改革の必要性を実感させ、丁寧に合意形成を図ろうとしている。
「国の方針」「上からの指示」という認識では、実効性のある改革につながらないばかりか、かえって当事者の不満や反発を招いてしまったり、「隠れ残業」や「隠れ部活」を助長してしまったりする可能性がある。
大半の自治体では、客観的なデータに基づいて施策を議論する文化が育っているとは言いにくいのが現状だ。学校を支える保護者や地域住民も、自身の経験を基にした「教育観」を語りがちで、身近な部活動改革を結論ありきで進めると、大きな反発が予想される。
教員の働き方改革は早急に着手しなければならない問題だが、教員、保護者、地域住民、児童生徒など当事者が納得し、自ら行動できる具体的施策にしなければ、実効性のあるものにはならない。
当事者に近い自治体だからこそ、国の方針に基づきつつも、現場の実態を踏まえた地に足のついた取り組みができる。今こそ、自治体の手腕が問われている。
(教育新聞記事より)
教員の長時間労働是正に向けて、タイムカード導入による勤務時間管理や学校閉庁日の設定、部活動の見直しなど、各自治体でさまざまな業務改善が始まっている。現場に働き方改革を円滑に浸透させるには、どのようなポイントがあるのか。各地に先駆けて取り組んでいる横浜市と埼玉県戸田市を取材した。両市の働き方改革の進め方に着目すると、「当事者の納得感をいかに得るか」の重要性が垣間見えてきた。(藤井孝良)
■サーベイフィードバックによる教員研修
「あなたの職場はお互いの仕事の状況を把握し合えていますか。話し合ってみてください」――。6月18日夕、横浜市教委の研修室で、管理職を含む同市立小・中学校の教員ら約40人が集まり、働き方の改善をテーマにしたワークショップ型研修会が行われた。
同市では、中原淳立教大学教授の研究室と共同で、サーベイフィードバックと呼ばれる組織開発手法に基づく研修プログラムづくりを進めている。サーベイフィードバックとは、組織の健全性に関する分析結果を回答者に提示し、それを基に対話によって問題を解決する手法。同市は昨年、教員の働き方と意識の関係についてアンケートを実施した。研修会に参加したのは調査対象校の教職員で、その結果を当事者に返しながら、働き方の問題に気付かせ、意識変革を起こすのが目的だった。
同調査によると、調査した直近3日間の教員の平均労働時間は1日あたり11時間42分、1日あたりの労働時間が12時間以上の教員は全体の42.0%に上った。教員の82.9%、校長の79.3%が時間外業務を減らしたいと思っていたが、時間外業務を減らすことに罪悪感やためらいを感じている割合は教員で36.6%、校長で28.5%。労働で減らせる時間が「0時間」と答えた割合は教員で32.2%、校長で27.3%を占めていた。
多くの教員が時間外労働を減らしたいものの、実際には減らせないジレンマを抱えている状況が浮き彫りとなった。
調査結果を基に話し合いを促すワークショップが開かれた
■働き方改革に踏み出す一歩
研修では、調査データが示された後、3~4人のグループごとに、普段の仕事の仕方や職場環境について話し合った。
分析を担当した町支(ちょうし)大祐立教大学助教と中原研究室の辻和洋氏がファシリテーターとなり、調査結果から明らかとなった事実を説明していく。
「『定時退勤できない雰囲気がある』という質問に『当てはまる』と答えた教員が多い学校では、『当てはまらない』と答えた学校と比べ、平均勤務時間が11分長い」「職場全体で教材の共有ができている学校は、できていない学校よりも平均勤務時間が17分短い」など、具体的な数字を前に参加者は熱心にメモを取ったり、うなずいたりしていた。
話し合いでも「資料をちゃんとファイリングしたり、共有フォルダに整理したりしておけば、いちいち探す時間も手間も省ける」「先生同士の間をつながないといけない。特に若い先生。『分からないことがあったら〇〇先生に聞いてみて』と働き掛けていかないと」など、学校の状況に基づいたリアルな問題とその解決策が語られた。
研修後半、町支助教らは時間外労働を減らす対策として、「仕組み・決めごと」と「文化」の2軸で考える必要があると説明。「定時退勤日や学校行事の精選など『仕組み・決めごと』は一つだけでも効果はあるが、複数の取り組みを組み合わせて重層的に行うと、より効果が高い」と強調した。
また、「文化」では、「校長が早く帰る人を評価する。副校長はこれまでの慣習ややり方を積極的に変更する。一番忙しいからこそ、あえて発信することで説得力がある。学年主任は教職員間の業務量は不可を把握し、意識的に声掛けをするなど、業務情報のハブになる。管理職とミドルの役割分担、協力体制が重要だ」と説明した。
それらを踏まえた上で提示された「あなた自身が働き方改革に向けて明日から踏み出せる一歩」という話し合いのテーマに対し、参加者からは「訳ありグループを支援する」「『ごめん、先に帰る』と言わない」「もっと声掛けや対話を活発にする」などの意見が次々に出され、参加者全員が紙に書いた「一歩」を掲げ、互いに眺め合いながら研修会は終了した。
中原教授は「仕組みや決めごとといった外科手術は必要だが、それだけでは駄目だ。漢方薬で体質改善するように職場の文化を変えていくことも必要。こうした施策は始まって1カ月ほどで不満がたまったり、実行されなくなったりして失敗するケースが多い。この1カ月の壁を乗り越えられるかが鍵だ」と参加者に助言した。
同教授は研修の意図について、「上からの働き方改革の押し付けでは、現場で熱心に頑張っている教員がしらけてしまい、かえって教育の質の低下を招く懸念がある。教員は現状の問題にうすうす気付いているが、意識まではできていない。鏡となるようなデータを示すことで、自分たちで変えていくきっかけにする。学校の働き方改革は、丁寧な議論が必要だ」と話した。
横浜市では、今後も共同研究を継続し、インタビューなどを通じて現場の実態を明らかにしていくとともに、教職員を対象とした研修プログラムの開発を行っていくとしている。この日の研修はその試行でもあった。
研修会では働き方を変える、さまざまな「一歩」が出た
■国の基準より緩い部活動方針
教員の働き方改革では、中学校の部活動の見直しも懸案だ。
埼玉県戸田市では、スポーツ庁の「部活動ガイドライン」の議論に先駆けて、昨年10月に市独自の部活動ガイドラインの策定に向けた検討委員会を立ち上げ、調査やパブリックコメントを実施した。7月には「戸田市部活動方針」を定め、夏休み明けの2学期から全ての市立中学校で適用する。
方針では平日1日以上、土日は1日以上を休養日、定期テスト前1週間や学校閉庁日は休養日とし、早朝練習(朝練)も禁止とした。平日の活動時間は1日2時間以内、土日の練習は4時間以内とする。土日の練習時間はガイドラインで3時間以内とされており、それよりも長い。さらに、校長が承認した年4回以内の大会については、開催日前2週間に限り、週当たり16時間を上限に休養日や練習時間の制限を外す特例を設けた。
このように、同市の部活動方針は国の基準を部分的に緩和している。方針策定に至るまでには、市内中学校の部活動の実態調査に基づき、検討委の中で長い時間をかけて合意形成を図ってきた経緯がある。
同市が昨年11月に実施した悉皆(しっかい)調査では、市立中学校の生徒や保護者、教員を対象に、部活動の実態を明らかにした。同市での部活動の実態として、平日では、生徒・教員共に半数以上が週5日間部活動に参加し、休日は生徒の半数以上、教員の4割以上が土日の両方で活動していた。平日の練習時間は、教員が1時間以上2時間未満、生徒が2時間以上3時間未満と答える割合が最も多く、休日は生徒、教員共に3時間以上4時間未満が最多だった。
部活動に対する悩みを抱えている生徒は全体の49%とほぼ半数を占めた。その理由は「疲れが取れない」が最も多く29%、次いで「学業との両立」が24%、「部活動の時間・日数が長い」が23%だった。78%が休養日を希望し、希望する日数は週1~2日を挙げる声が多かった。
教員対象の調査では、部活動に対する悩みを抱えている教員は全体の84%を占めた。その理由は「ワークライフバランス」が最も多く37%、次いで「校務と部活動の両立」が30%だった。教員が適正と考える休養日は、平日は週1日程度、休日は土日のいずれかを挙げる声が最も多かった。
国のガイドラインにない特例も定めている埼玉県戸田市部活動方針
■丁寧な議論が必要
生徒や教員にとって、現状の部活動が負担となっており、適正化を図る必要に迫られているのは明らかな状況だった。教員、校長、保護者、部活動指導員などからなる検討委では、このデータに基づいて同市の部活動の在り方について議論を重ね、その結果として、同市の部活動の実情に応じて、特例を設けた方針が定まった。市民に対して実施したパブリックコメントでも大半が賛同で、否定的な意見は出なかった。
同市教委で方針の策定作業を担当した職員の伊藤大和氏は「国より緩和した基準を作るには、しっかりとした理由付けが必要で、なぜその基準にしたのか内外に説明できなければならない。多くの自治体で部活動の方針について今後策定が進むと思うが、策定に向けて丁寧な議論を踏まえなければ、自治体独自の基準は打ち出しにくいのでないか」と指摘する。
そんな同市でも頭を悩ませている部活動の課題がある。その一つが部活動指導員の確保だ。現在、同市では19人の部活動指導員が配置されているが、そのほとんどがボランティアで、校長からの推薦によって市が委嘱している。
伊藤氏は「東京都心に近いベッドタウンであることが災いし、平日2時間程度の部活動に時間を割ける人材が限られている。将来的な民間スポーツクラブとの連携も視野に入れているが、費用面や指導者の質の確保など、まだこれからという状況だ」と話す。
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人を納得させるのに最も有効なのは、データを示すことに他ならない。両市では、現場の実態を客観的な数字で提示することで、改革の必要性を実感させ、丁寧に合意形成を図ろうとしている。
「国の方針」「上からの指示」という認識では、実効性のある改革につながらないばかりか、かえって当事者の不満や反発を招いてしまったり、「隠れ残業」や「隠れ部活」を助長してしまったりする可能性がある。
大半の自治体では、客観的なデータに基づいて施策を議論する文化が育っているとは言いにくいのが現状だ。学校を支える保護者や地域住民も、自身の経験を基にした「教育観」を語りがちで、身近な部活動改革を結論ありきで進めると、大きな反発が予想される。
教員の働き方改革は早急に着手しなければならない問題だが、教員、保護者、地域住民、児童生徒など当事者が納得し、自ら行動できる具体的施策にしなければ、実効性のあるものにはならない。
当事者に近い自治体だからこそ、国の方針に基づきつつも、現場の実態を踏まえた地に足のついた取り組みができる。今こそ、自治体の手腕が問われている。