りゅういちの心象風景現像所

これでもきままな日記のつもり

「星」(*‘ω‘ *)?

2023-08-10 23:27:16 |  日 記 
「五つ星の美術館」なる本を手にした。2007年に日経が出した本なので、新しい、気鋭の美術館などは含まれない。いくつかの留保が前提ではあるのだけど、どういう視点で「星」をつけていくのか?その考え方を知るには、とりあえずのたたき台としてちょうどよい。ざっと読んでみた。

ランク付けを見てみると、その当時、「五つ星」を獲得した美術館は6館。
1 横浜美術館
2 愛知県美術館
3 東京都写真美術館
4 静岡県立美術館
5 神奈川県立美術館
6 東京都現代美術館

個人的によく行っていた美術館がいくつも入ってる(*‘ω‘ *)
馴染みの美術館の評価が高いのは、ちょっとうれしい(*^ω^*)
まぁ、データが古いがゆえに、僕に馴染みがあるというのは、ある意味、当然ではありますな(^o^;)
しかし、当時を思い返してみても、これら「五つ星」美術館に引けをとらない美術館が山ほど思い浮かぶ(*‘ω‘ *)
「五つ星」の基準の厳しさがうかがえるのだが、十数年前の評価なので、すでに現状はいろいろ変わっているだろう。
読書としては、そういう視点があることを知ったというところで満足するとして。

「美術館」の存続が危ぶまれ、生き残りをかけての努力の上に、さらなる工夫を重ねていた頃。公的資金が注入される多くの文化事業に対して、斜め上からの攻撃が加えられていた頃の話だ。実際に予算が剥ぎ取られ、別に付けかえる。ほとんど言いがかりのような要請で、例えばオーケストラなどが存続の危機に瀕していたりした。実際に立ち行かなくなってしまった文化事業もあっただろう。そうやって剥ぎ取った予算はどこへ付け替えられたのか?そういうことの詳細な追跡調査なり取材なり、それをまとめ上げたニュースなどにお目にかかることはない。今、そこに敵の姿がはっきりとあらわれているはずなのだが。特定の人材派遣会社などの名前が浮かび上がる。。。なんてことが、あちこちで現実にあるはずだ。
日経の本の企画自体に留保がいる、と思ったのには理由があって、そういう背景を「あたり前の条件」とする姿勢に違和感を超えた、なにかしら予定調和的意図を感じてしまうからなのだが。。。
その後、多くの美術館が新しく生まれている。それも驚くほどたくさん。
この事実を見るにつけ、「文化事業」をムダなこととして、切って、切って、切りまくってきた人たちのウソはあからさまである。

「五つ星」と「四つ星」を分ける要因はどこにあったのか?というと、決定的かつ固定的なものではないらしい。つまりは、その時の「企画」の成功がカギを握る。
あくまでも調査時の「最大瞬間風速」みたいな要素が避けがたくある。となれば、結局のところ、この「星」による評価にとっては、どこまでも売上が最大の関心事なのであって、売上に貢献する企画力(学芸力?)がどこまであるのか?ということになる。展覧会が大ヒットしていたその時に調査が重なれば、必然的に評価は高くなる。
企画次第で変動するわけなので、一様に「星」でもって評価することには、いささかムリがある気がしないでもない。少なくとも、短期的に「美術館」を測るのは難しい。それならば、「美術館」ではなく、「美術展」の評価で足りる。だいたい「星」に表しづらい文化事業は存在するし。

どんな企画を打つか、どういうことを見せようとするのか、予算だとかの現実を云々する以前に、もっと根本的な「学芸力」が求められる。
持っている「学芸力」をどう表すか?
つまるところ、「利益」をあげる「表現力」。これが「美術館」が備えるべき能力=学芸力であると(?)。

これが「あたり前」のように聞こえてしまうのは、ちょっとおかしい。
例えば、だが。
例えば、「正倉院」はその宝物を、公開するために保存してきたか?と問えば、否、である。
現代でこそ、「正倉院宝物展」は必ずお客を呼べるキラー・コンテンツだが、そもそも「公開」は「正倉院」にあっては副次的である。納められた数々の宝物を、可能な限り理想的且つ完璧な状態で保存し、時代を越えて伝えること。「見せること」は、そもそもの主眼ではない。

「正倉院」は「美術館」ではないが、「美術館」には「正倉院」的要請に応えるべき仕事もある。その部分は、観客動員数なり、売上高なりで、一様に判断されるべき「仕事」ではない。
この本には、そのことについての言及がなかった。
そのかわり、営業的企画力(これを学芸力としている)や地域貢献などが評価の大きな要点を占める。

「美術館」の仕事の大事な部分を破壊するためなのか?とさえ思える乱暴さ。これが日経の本であることには注意したい。
「星」によるランク付けが、「わかりやすさ」や「公的貢献」ではなく、どこか左翼的サボタージュに見えてしまうのには、理由がある。

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