シリーズ最終の4週目「眠気と迷い」です。
窯焚きのパチパチという薪のはぜる音は心地いいものですが、これが約一週間焚き続けると疲れから眠くなってしまいます。
私の使う粘土は岡山・備前から持ってきているものなので、釉薬をかける事は無く、薪を燃やした時に出る煙が窯の中を流れて作品に積もっていきます。その積もった灰を溶かして景色が付きます。窯焚きの焚き方次第で良し悪しが決まる大切な作業です。
窯焚きは3人で昼夜を交代しながら焚いています。焚き始めてしばらくは薪の風呂釜を焚くような、のんびりした作業が続きますが、最終日には窯の前や横から薪を入れて、温度を決めていく一番重要な作業が待っています。それまでに積もった灰が固体から液体に溶ける瞬間を見極めるのに、あと5分焚くのか、もうレンガを詰めて火を止めるのか迷う時もあります。
「菊練り3年・ロクロ8年・窯焚き一生」なんて備前時代の師匠に聞かされていましたが、今になって「その通りだなあ」と窯焚きの難しさを実感しています。菊練りは粘土を練る作業、ロクロは粘土で形作る作業で、一生懸命していれば自然と身につくものですが、窯焚きは炎が相手で、毎回窯に入る作品も違えば薪の湿気具合も違うので、炎の流れも毎回変わってきます。炎と毎回真剣勝負ですが、反省する場所も毎回出てきます。
窯焚きが終わると窯出しまで4日くらい冷まします。その間が私にとっては一番落ち着かない日々です。あの時の迷いはどう作品に影響したのかと考えてしまいます。試験結果を待っているような感じでしょうか。