白糸の瀧
家にいても暑いだけなので涼みがてら白糸の瀧へ行きました。ここは別天地でした。(カンリニン)
寄姫伝説
むかし、木山の宮園に兵部という若い武士がいた。
ある時、兵部は白糸の滝を訪れたが、あいにくの雷雨に見舞われ、小さなほこらに雨宿りをした。夕立が止んで日射しがもどったとき、滝の上からひとりの娘が、するすると水の上をすべるようにして降りてきた。娘は、たいそう美しく、兵部は一目で心を奪われてしまった。
娘の名は寄姫といい、やがて二人は結ばれる。寄姫はまめまめしく兵部につかえ、楽しい日々が続いた。そんなある日、寄姫は家事の合間に織物がしたいと言い出した。それから寄姫は、夕刻になると度々どこかへ出かけて行っては、重い器具を持ち帰ってくる。兵部はそんなことは召使に頼むようにすすめたが、寄姫はどうしても自分で出かけると云って利かなかった。
そのようにして日々が過ぎるうち、兵部は同僚の武士たちから妙な話を聞いた。村のはずれの堤のところで、大きな火の玉を見たという者が現れ、火の玉のなかには、器具を持った美しい女の姿があり、その後をつけると兵部の家の前で消えたという。他にも同じものを見たという者があるので、兵部は驚いて寄姫に問いただした。が、寄姫は知りませぬと答えるばかり。あやしく思った兵部がしばらく様子を見ていると、寄姫は丑の刻になるとすっと床を抜け出して行く。一度ならず、二度、三度と・・・。
そのことを問い詰めても、寄姫はうつむいて何も答えない。怒った兵部は、とうとう刀を抜いて寄姫の胸を一刺しにしてしまった。寄姫はたもとをひるがえし外へ逃げ出した。兵部が外へ出てみると血の痕が点々と山の方へとつづいている。それは滝の上流の山腹へと続き、洞窟の前で絶えていた。中をのぞくと、そこには血を流して横たわるおろちの姿があった。
兵部は、その因縁の恐ろしさに、いまさらながら驚き悲しんだ。